田臥勇太、八村塁に次ぐ快挙、年俸1億円超
米プロバスケットボールNBAで3シーズン目を迎えた26歳の渡辺雄太が課題と指摘されてきた得点力を飛躍的にアップし、夢への階段を駆け上った。18歳で渡米を決断して8年。今季から加入したラプターズが4月19日、渡辺と日本選手3人目となる本契約を結んだと発表し、ついに大きな目標までたどり着いた。
今季は下部チームに所属しながら一定期間NBAでプレーできる「ツーウエー契約」を結んでいたが、初めて常時NBAで出場が可能な本契約にレベルアップした。
日本選手がNBAのチームと本契約を結ぶのは、2004年にサンズと契約した田臥勇太、ウィザーズの八村塁に続く快挙だ。ラプターズは渡辺の年俸や契約年数など契約の詳細は明らかにしていないが、年俸も今季のツーウエー契約では約45万ドル(4800万円)と定められていたが、本契約ではNBAで3年目となる渡辺の最低年俸はおよそ162万ドル(約1億7500万円)と大幅アップが保証されている。
渡辺は自身のツイッターに「努力し続けたかいがありました。さらに上を目指してもっともっと頑張ります。今後も応援よろしくお願いします」と喜びをつづった。
身長206センチ、スラムダンク作者も祝福
身長206センチ、体重98キロ。香川・尽誠学園高時代は全国高校選抜優勝大会で2011年から2年連続準優勝。卒業後の2014年9月に米ジョージワシントン大に進学し、全米大学体育協会(NCAA)1部で1年目から活躍した。
スピードあふれるドリブルやシュート力を武器に複数のポジションをこなせる器用さが持ち味で、献身的なディフェンス力も高く、2018年にNBAグリズリーズとツーウエー契約を締結。しかし2季目で目立った活躍はできず、今季開幕前はNBAチームからのオファーもなかった。
それでも保証のない限定契約(エキシビット10)で参加したラプターズのキャンプで監督の目に留まり、今季からツーウエー契約でラプターズに加入。伝説的なバスケットボール漫画「SLAM DUNK」(スラムダンク)で知られる漫画家の井上雄彦氏も自身のツイッターで「おめでとう」と祝福した。
チームの地元紙、カナダのトロント・スター(電子版)は「ラプターズの現在と未来にとって正しい選択」と見出しをつけた記事を掲載している。
攻撃面評価、1試合平均4得点、最多21得点も
チャンスをつかめた最大の理由は献身的な守備だけでなく、攻撃面での活躍だろう。故障者続出のチーム事情もあって、好機が訪れたのは3月末。3点シュートとゴール下での得点という課題を克服し、4月16日のマジック戦では自己最多の21点をマークするなど攻撃面でもチームに貢献した。
今季は40試合(4月23日時点)で1試合平均13.4分プレー、4.0得点、フィールドゴール成功率45.0%、3点シュート成功率は39.7%、3.3リバウンドをマーク。攻撃パターンが格段に増え、機動力を生かした守備や献身的なプレーでも着実に評価を高めていった。
NBAは各チーム15人と本契約の狭き門
NBAの各チームは最大15人の選手と本契約を結ぶことができるが、極めて狭き門といえる。これに加えて若手選手を対象にしたツーウエー契約を各チーム最大2人まで結ぶことが可能だ。
ツーウエー契約を結んだ選手は主に下部リーグのチームでプレーしながら、メンバーの不調やけがなどがあれば、新たなメンバーを招集する必要が生じた時に昇格して一定期間、NBAでプレーできる仕組みになっている。
東京五輪でも八村塁と二枚看板で日本の顔に
4月6日のレーカーズ戦では、目の前のディフェンダーを「ユーロステップ」でかわして両手ダンクをお見舞いする世界一級品の技を披露。その日の「NBAトップ10プレー」の7位に選ばれ、大々的に紹介されるなど米国内での評価も進境著しい。
東京五輪でも八村塁との二枚看板で2人のNBAプレーヤーは「日本代表の顔」になる存在だ。NBAと選手会の協約により、ツーウエー契約を結べるのは3季まで。チームはプレーオフ進出争いがヤマ場を迎える中、地道な努力でラストチャンスをつかんだ渡辺の才能がここに来て今まさに開花しようとしている。
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