東浜巨がスライドで大役となるか
ソフトバンクは春季キャンプ中に故障者が続出した。エースである千賀滉大、サブマリンの高橋礼とふたりの柱がそろって離脱。工藤公康監督は、開幕一軍メンバーはもちろん、開幕投手も決めあぐねるような事態となっている。
そんな中、発表された開幕投手は東浜巨だった。昨シーズンは故障もあり、2勝2敗、防御率6.37と不本意な成績に終わっているが、2017年には16勝をマークし、最多勝のタイトルも獲得している。開幕投手の経験はないものの、実績面は申し分ない。
しかし、開幕戦が延期となったことで千賀や高橋が復調すれば、開幕投手が変更となる可能性もある。今年、最初のマウンドに誰が登るかは、新型コロナウイルスの影響次第となりそうだ。
最多先発は6回の山内新一
ソフトバンク(前身球団含む)の開幕投手を振り返ってみると、ひとりの投手に偏って起用されていないことがわかる。最多先発は山内新一の6回。これは2005年に新規参入した楽天(岩隈久志)と同じ回数である。その他のパ・リーグ球団における最多先発投手はいずれも8回以上となっている。
とはいえ、絶対的な投手がいなかったわけではない。新人の年から3年連続で開幕投手を務めたサブマリンの杉浦忠や移籍してきた江本孟紀、その後も工藤公康や斉藤和巳。近年でも和田毅や杉内俊哉、そして攝津正とリーグを代表する投手は多く存在した。しかし、不思議と同時代に複数のエース格投手が在籍したこともあり、開幕投手が分散したのである。
6回が開幕投手の最多先発回数ということもあり、開幕戦での最多勝利数も必然的に少なくなる。これまでの開幕戦における最多勝は3勝。杉浦忠、山内新一、斉藤和巳、攝津正、和田毅と5人がタイで並んでいる。
なかでも和田は抜群の安定感を誇っていた。4回の開幕投手で3勝0敗、勝ち負けのついていない1試合(2011年)も延長12回引き分けと、チームは負けていない。和田自身も9回2失点と試合をしっかりとつくった上での降板だった。
また、和田は2009年のオリックスとの開幕戦で完封勝利を挙げているが、この試合で記録した14奪三振は、開幕戦における奪三振の最多タイ記録となっている。ちなみに1位タイは平松政次(大洋/1979年)である。
外国人投手はスタンカのみ
近年は外国人投手が開幕投手を務めるケースが珍しくなくなってきた。昨年はランディ・メッセンジャー(阪神)、2018年はデービッド・ブキャナン(ヤクルト)、ブライアン・ロドリゲス(日本ハム)と3人が開幕戦のマウンドに登っている。
しかし、ソフトバンクの開幕投手を振り返ってみると、外国人投手が先発のマウンドに上ったケースは少ない。1961年から1963年まで3年連続で大役を務めたジョー・スタンカまで遡らなければならないのだ。
これは2005年からリーグに加わった楽天をのぞいて、最長のブランクとなる。裏を返すと、それだけ日本人のエース格が充実していたということでもある。球団の歴史上、日本人投手のエース格が複数いたことが、外国人投手の開幕投手が少なかった要因ともいえそうだ。
今年、やってきたマット・ムーアはオープン戦の内容を見る限り、期待できそうな雰囲気はある。千賀や高橋が出遅れていることもあり、ムーアが1年間軸となり結果を残し、さらに来年も残留となれば、58年ぶりの開幕投手となるかもしれない。
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