熾烈な順位争いを繰り広げた阪神と中日
長いペナントレースを制するためには「天敵を作らないこと」が大事な要素のひとつになる。大きく負け越す相手が1チームでもいるとトータルで貯金を積み重ねることは難しく、また相手の貯金を増やすことを助けてしまい「優勝」の二文字は遠のいていく。
その意味では昨季苦手とした相手との対戦は序盤戦の見どころになるだろう。早い段階で「天敵」の意識を払拭し、良い流れを生み出していきたいところだ。
そこで、苦手チームとの対戦データから天敵攻略の鍵を探っていきたい。今回は昨季、終盤の猛烈な追い上げで3位に入り、オープン戦では12球団中3位、セ・リーグの中では首位と勢いに乗る阪神を取り上げる。
昨季の阪神が負け越した同リーグの相手は巨人と中日。DeNAとヤクルトに対しては勝率が6割を超えたが、巨人と中日には苦しめられた。
巨人には10勝15敗の勝率.400、中日には10勝14敗1分の勝率.417。対巨人の勝率の方がわずかに低かったが、最終盤までCS進出を懸けて熾烈な順位争いを繰り広げた、戦力の拮抗する中日を攻略すべきターゲットに定めたい。
投手では藤川が中日打線を苦手に
投手では昨季加入の西勇輝が4試合で3勝をマーク。昨季9勝を挙げローテーションの柱へと飛躍した青柳晃洋は、中日相手に勝ち星こそ2勝と伸びなかったものの、6試合で防御率2.13と抑えている。
リリーフでは岩崎優と能見篤史が自責ゼロで、島本浩也と守屋功輝も防御率0点台。退団となってしまったがジョンソンとドリスは防御率1点台。シーズン全体で見ても盤石だった阪神のリリーフ陣だが、特に中日戦では抜群の安定感を誇っていた。
ただ、そのリリーフ陣の中で唯一、藤川球児が苦戦。昨季は防御率1.77と抜群のシーズン成績を残した藤川だが、中日戦では防御率5.23。10.1投球回で17三振を奪った一方、シーズン全体の被打率.153に対して中日戦の被打率は.244と、どういうわけか中日打線には相性が悪かった。再び掴んだ守護神の座を守り通すためには中日への苦手克服が必要になってくるだろう。
打者では糸原、福留が苦戦
打者では糸井嘉男が気を吐いた。昨季の中日戦では打率.344をマークし、出塁率は驚異の.431。シーズン全体で打率.314を残し、年齢的に大ベテランの域に入ってきた中でもまだまだ主軸を張る力を持っていることを証明したが、こうした数字を見てもやはり糸井は頼もしい。それだけに、8月の離脱はチームにとって痛かった。今季は離脱なくシーズンを通して働いてほしいところだ。
そのほかの主力打者たちはというと、中日戦で目立った数字を残した選手はおらず、打線全体の奮起が求められる。特に、糸原健斗は打率.171と大ブレーキ。出塁率も.292と、持ち味である粘り強さを発揮できなかった。また、福留孝介も打率.175と古巣相手に苦しんだ。2人の苦手克服が攻撃面では鍵となりそうだ。
2020年プロ野球・阪神タイガース記事まとめ