離脱者の役割をカバーする層の厚さ
今季もパ・リーグ優勝候補の筆頭と言えるソフトバンク。投打ともに毎年のように怪我人が続出しているにもかかわらず、常に新しい選手が出てきて離脱者の役割をカバー。圧倒的な層の厚さを見せつけている。特に顕著なのが、セットアッパーではないだろうか。
岩嵜翔は2017年72試合に登板し、40ホールド、防御率1.99をマーク。2位の西武に13.5ゲーム差をつけるぶっちぎりの優勝に貢献した。だが、近年は故障続きであり、ここ2シーズンで計4試合の登板にとどまっている。
2018年には、加治屋蓮が離脱した岩嵜の役割をカバー。72試合に登板し、31ホールドを挙げるなどクローザーの森唯斗にバトンを渡す役割を担った。しかし、昨季は30試合の登板で、防御率6.00と精彩を欠いた。その代わりに出てきたのが、同年ルーキーだった甲斐野央だ。
甲斐野は65試合に登板して26ホールドをマーク。150km台後半の直球と140km台の高速フォークを武器に、シーズンをはじめ、クライマックスシリーズ(CS)や日本シリーズ、さらにはプレミア12でも好投。一躍日本を代表するセットアッパーの1人として認知されるまでになった。ところが今季、右肘靱帯損傷のため、開幕は絶望的となってしまった。
登板過多のリリーバーの運用が課題
よく言えば、離脱者をカバーするほど層が厚いと解釈できる一方で、岩嵜にしろ、加治屋、甲斐野にしろ、わずか1年の活躍で離脱した現状がある。岩嵜と加治屋が72試合、甲斐野が65試合と登板試合数が多く、肩・肘にかなりの負担がかかっていたことは明白だ。
ソフトバンクは、勝ち試合でも負け試合でも同じ投手を起用し続ける傾向がある。今後同じ轍を踏まないためにも、登板試合数の調整は必要だろう。ソフトバンクの充実したリリーバー陣を考えれば、それは十分に可能なはずだ。
今季、甲斐野の復帰の目処は立たない状況だが、岩嵜が復調傾向にある。2月29日に行われた阪神とのオープン戦では、1回を投げて1奪三振、無失点の好投を見せ、直球は最速152kmをマーク。全盛期を彷彿とさせる球威が戻ってきた。
ドラフト3位ルーキーの津森宥紀も、ここまでオープン戦3試合に登板し無失点とアピール中。変則のサイドハンドから繰り出すキレのある球は、シーズンでの活躍を十分に予感させるものだ。他にも、育成の尾形崇斗が3月1日の阪神とのオープン戦で2回無失点に抑える好投を見せており、支配下登録し1軍で使ってみるのも面白そうだ。
また、キューバ代表として五輪予選に参加する予定のリバン・モイネロも、開幕が延期されたことで開幕戦からベンチ入りできる可能性が出てきた。甲斐野が離脱しても、リリーバー層の厚さは相変わらず健在である。だからこそ、登板過多にならないような運用が求められる。
例えば、誰がどこで(7回・8回)行くとは決めずに、打者との相性を踏まえた起用を常に重視していくのもありだし、ベンチにいると使いたくなるのであれば、休養も踏まえて一度抹消するなどの方法もあるだろう。かつて横浜で指揮を執った権藤博氏が取り入れた、リリーフをローテーション制でまわすというやり方もある。
実力のあるセットアッパーに依存し過ぎない、臨機応変なリリーフ運用を確立したいところだ。
バリエーション豊富なリリーフ陣
今季、右サイドハンドの津森がセットアッパーの一角を担うようであれば、昨季よりも起用のバリエーションが広がる。そこに若手の泉圭輔や尾形らが突き上げるような活躍を見せれば、リリーフはさらに盤石なものとなるだろう。バリエーションの豊富さに加えて、150km以上をコンスタントに出せる投手が揃っていることも強みだ。
甲斐野不在で開幕を迎えるのは痛いが、岩嵜のコンディションが良ければその穴を埋める活躍を期待できる。昨季45試合に登板し17ホールドを挙げた、154km右腕の髙橋がさらなるブレイクを果たす可能性もある。
いずれにせよ、ソフトバンクのリリーフ陣が今季も強力なのは確かで、3年ぶりのリーグ優勝、4年連続日本一への鍵を握っていることは間違いない。
2020年プロ野球・福岡ソフトバンクホークス記事まとめ