2年連続全試合出場
昨季、2年連続となる全試合出場を達成した阪神の糸原健斗。入団3年目にして矢野燿大監督から主将に抜擢されると、シーズンを通してコンスタントに活躍し、阪神のリーグ3位、クライマックスシリーズ(CS)進出に貢献した。
大きな怪我なく試合に出続けられるプレーヤーはチームとして貴重だが、昨季の打率.267、2本塁打、45打点、6盗塁という数字が示すように何かに秀でているわけではない。しかし、セイバーメトリクスの指標をみると、糸原にはリーグトップクラスの数値をマークしている項目がある。
三振の少なさと選球眼の良さ
糸原の打撃で特筆すべき点は、三振の少なさと選球眼の良さだ。セイバーメトリクスの指標PA/K(打席数÷三振数)がリーグ2位の8.17。この数値は、高いほど三振しにくいことを示すため、しぶとい打者であるとわかる。また、選球眼の良さを示す指標BB/K(四球数÷三振数)はリーグ4位。この数値が高いほど三振が少なく四球が多いことを示す。
また、これらの数値と密接に関連するのが出塁率だが、昨季の糸原の出塁率は.353。2018年には.390をマークしており、通算でも.371と高い。チャンスメーカーとして考えた時には申し分なく、今年のオープン戦で、指揮官は糸原の1番での起用を試しているが、出塁率に期待してのことではないだろうか。
指揮官は近本光司を2番に据える方針を示しており、糸原のほか、北條史也や木浪聖也らを含めてトップバッターを模索中だが、糸原の1番がハマれば面白い。前述した出塁率の高さはもちろんだが、粘りながら球数、あらゆる球種を放らせることができるため、例え凡退したとしても、その日の投手の調子や球威、球筋などを他の打者に伝達できる。対戦投手のデータはある程度熟知していても、その日でなければ分からないこともある。そうした鮮度の高い情報を他の打者に伝えられるのは、チームにとって大きなメリットだ。
外角への対応が向上すれば3割が近づく
苦手なコースが少ないのも糸原の長所だ。ゾーン別データをみると、外角高めの打率こそ.122と低いが(外角中程が.217、外角低めが.254)、それ以外では3割以上をマークしているコースが多い。内角については、高め.333、中程.326とうまくさばいており、外角の球をうまくさばけるようになれば必然的に3割も近づいてくるだろう。
糸原は左打ちだが、グラウンドを5分割した打球方向データをみると、左翼が最も多く25%、次が左中間の21%と、逆方向への打球が多いことも特長。常に逆らわないバッティングを心がけているのだろう。
長打率は.336と低く課題といえば課題ではあるが、糸原はしぶとくコツコツ当てていく打撃で3割を狙っていく方が適性に合っている。また、シーズンを通して調子の波が少なく3割を打てる選手がいれば、チームとしても心強いだろう。
1番に固定してみる価値はある
器用な打者であるがゆえに、どこの打順でも柔軟にこなす良さはあるが、以上のような能力を踏まえると、1番に糸原を固定してみて打線が機能するか見定めていくのもひとつ。仮に糸原がリードオフマンで出塁率4割前後をキープできれば、当然得点能力は向上するだろう。2番の近本とのコンビがどう生きるのかも見ものだ。
新外国人の4番候補ジャスティン・ボーアらの活躍も期待されるが、糸原が昨季同様全試合に出場し、結果を残すかどうかは阪神の浮沈に大きく関わるはずだ。
2020年プロ野球・阪神タイガース記事まとめ