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阪神優勝のカギ「2番・近本」が最も活きる打順は?

阪神・近本光司選手ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

得点力アップへ矢野監督の構想は

昨季の阪神は最終盤に6連勝し、滑り込みで3位に食い込んだ。だが、クライマックスシリーズではセ・リーグ覇者の巨人を相手に1勝しかできず、彼我の差を見せつけられる結果に終わった。

就任2年目を迎える阪神・矢野燿大監督は、今季の目標に日本一を掲げる。しかしそれを果たすには、リーグ唯一の3ケタとなる102失策を喫した守備力の向上に、投手陣では2ケタ勝利が西勇輝ひとりに終わった先発陣と、主力だったピアース・ジョンソン、ラファエル・ドリスが抜けた救援陣の再整備など、手を付けるべきポイントは多い。

中でも、昨季リーグ最低の538に終わった得点力の向上は、喫緊の課題である。そこを改善すべく矢野監督は、昨季主に1番打者を務め、ルーキーながら盗塁王のタイトルを獲得した近本光司を、2番に据えることを今季の構想に置いている。

近本を2番に置く意図はこうだ。1番打者が出塁すれば一、二塁間が広く空き、左打者の近本にとってはヒットゾーンが広がる。そこでヒットを放てば、無死一、三塁にチャンスが拡大する可能性がある。

一方で1番打者が出塁した場面で、2番・近本が打って出て凡打になったとしても、左打者で足が速い近本ならダブルプレーの可能性が低い。このケースでは、一死一塁で近本が走者として残れば、次に盗塁を仕掛けて得点圏に進める作戦も選択できる。

2番に近本を置いた場合に最適な1番打者は?

近本の攻撃面での特性を、最大限に活かす。それを目的に2番に置くのであれば、1番を務める打者が重要になる。ならば今季の阪神打線で、だれが1番打者に適任なのか。

昨季、最も先発1番で起用されたのは近本だったが、それに次ぐ24試合で1番を打った木浪聖也は候補のひとり。ほか、1番での出場がいずれも5試合に満たなかったが、上本博紀、糸原健斗、糸井嘉男、北條史也もいる。さらに昨季1番での先発出場はないが、1年目の2016年には主に1番を任され、シーズン136安打を放って新人王を獲得した髙山俊の名も挙がる。



出塁率重視なら1番は糸井か糸原

2番・近本を生かすためのラインナップで、1番打者に最も求めたいのは出塁率。それを最重要視すると、糸井の実績が頭ひとつ抜けている。

出塁率は、レギュラー選手で.350を越えれば充分で、.400以上は高いと評価されるが、糸井のそれは2018年が.420。昨季はケガの影響で103試合出場に止まったが、それでも.403の数字を残している。

38歳の年齢と、阪神移籍後は故障がちなのは気になるところだが、体調が万全であれば筆頭候補。通算163本塁打と長打力もあり、かつての真弓明信のように、一発もある核弾頭になり得る。

それに次ぐのは糸原。社会人出身でプロ2年目の2018年に、出塁率.390を記録した。しかし昨季は.353と数字を落とし、四球数も2018年にリーグ4位だった86から60と減少。四球数を打席数で割った四球率は2018年が.135だが、2019年は.105とこちらも低下している。

プロ通算3シーズンで最高打率は2018年の.286と、3割を越える高打率を残すタイプの打者ではないだけに、四球を絡めた出塁率の向上がカギだ。

100試合以上出場した直近の年の出塁率




出塁率低い木浪…髙山の復活も

木浪は昨季、夏場に13試合連続安打を放ち、シーズン序盤に近本が記録した球団新人記録に並んだ。しかし出塁率に着目すると、レギュラー選手としては.302とやや物足りないうえに、四球率も.046と低い数字に止まる。1番を打つのであれば、四球を選んで出塁率を向上させる意識が必要かもしれない。

昨季はルーキーだったとはいえ、大学から社会人を経てプロ入りした選手。1年目から完成度の高さに定評があったゆえ、プロ2年目の今季はさらなる進化が期待されるところだ。

上本、北條については、好調時には相手は手がつけられない打棒を発揮するが、ケガに見舞われがちでそれが長続きせず、安定した成績を残せていないことが不安材料。 髙山は1年目の2016年に主に1番を任され、シーズン136安打を放って新人王を獲得した。しかし以降はそれを超える活躍ができず、昨季にようやく復調の兆しを見せた。彼らはこれからのオープン戦で、いかに結果を残してアピールするかで判断されるだろう。



2番・近本の足を活かすには3番打者も重要

ここまで1番打者の選定について記したが、近本を2番に据える場合、実は3番打者をだれにするかも、今季の阪神打線の大きなポイントになる。

前述したようなケースで2番・近本がダブルプレーを免れて、一塁に生き残った場面が訪れたとする。次に近本が二盗を試みる場合、3番は打席内で近本の盗塁を助ける対応をとれることが理想だ。

2003年優勝時の3番・金本知憲が、まさにそうだった。金本は2番の赤星憲広が出塁すると、走るまであえて打ちにいかなかった。赤星が二塁に達すれば、今度は三塁に進めるため右方向への打撃を意識的に行っていた。

今季は4番に新外国人のジャスティン・ボーアを据えることが既定路線なので、3番候補の名をあげると糸井、福留孝介、大山悠輔、ジェフリー・マルテ、そして新外国人のジェリー・サンズあたりか。

外国人選手に待球を求めるのは、難しいかもしれない。糸井は自由に打たせるほうが結果を残せるタイプであろうし、キャリアが浅い大山に我慢の打撃を求めるのは酷だ。

金本のイメージに近いのは福留だが…

この5人の候補のなかで2003年の金本のイメージに近いのは、やはり経験が豊富で、状況に応じてチームバッティングができる福留だろう。とくに上位打線は、固定できることが理想。2003年の阪神は全140試合中138試合で2番・赤星、3番・金本を貫き、優勝を果たした要因のひとつには、この並びを変えなかったこともある。しかし福留は、今年で43歳。年齢的にフル稼働を求めるのは難しく、懸念材料は残る。 

それに糸井、近本、福留、ボーアとなると、1番から4番までが全員、左打者になってしまう。昨季のリーグ防御率1位から3位タイまでの4人中、大野雄大(中日)、クリス・ジョンソン(広島)、今永昇太(DeNA)の3人が左投手だ。それほど、セ・リーグは好左腕が多い。それだけに、上位の打順のどこかで右打者を挟みたいところ。

となれば、3番に右打者の大山を入れるか。あるいは、左偏重には目をつむるのか。これからオープン戦を経て、矢野監督がシーズンでどのように2020年の猛虎打線を組むのか、注目したい。

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