長打率とは
野球の試合を見ていると、しばしば耳にするのが「長打率」。高い方がなんとなく良さそう…というイメージはあるものの、具体的に何を指すのか知っている人は意外と少ないのではないのだろうか。長打力を表す指標IsoPと共に解説していく。
長打率は1打数あたりの塁打数の平均値を表している。この数値を参考にすれば、「一度の打数でどれだけ遠くの塁まで進むことができるのか」という能力を見ることができる。長打率が高い選手がバッターボックスに立ったときには、「得点に貢献してくれる可能性が高いのでは?」と期待も膨らむ。
長打率を求めるための数式は、「塁打数÷打数」。塁打数は安打では全て1本と数える単打、二塁打、三塁打、本塁打を「単打1本=1、二塁打1本=2、三塁打1本=3、本塁打1本=4」として計算し直した合計値。「単打×1、本塁打×2」という成績を残した場合、塁打数は「9」。これを、打数で割れば長打率が割り出せる。
長打率は打率や出塁率と異なり、百分率ではない。出塁数の期待値なので、当然1.00を超えるケースも存在する。
2019年長打率ランキング
2019年のプロ野球で長打率が高い選手ベスト5は次の通り。
【セ・リーグ長打率ランキング】
1位 坂本勇人(巨人) .575
2位 鈴木誠也(広島) .565
3位 山田哲人(ヤクルト) .560
4位 ソト(DeNA) .5542
5位 バレンティン(ヤクルト) .5536
【パ・リーグ長打率ランキング】
1位 森友哉(西武) .547
2位 吉田正尚(オリックス) .543
3位 山川穂高(西武) .5400
4位 ブラッシュ(楽天) .5399
5位 中村剛也(西武) .528
IsoPとは
長打率と同じように使われやすいのが、IsoP。しかし長打率とは別に、わざわざIsoPという指標が開発されたことには、もちろん理由がある。
長打率を計算する際には「塁打数÷打数」という数式が使われるため、長打率には単打も含まれる。そのため、打率さえ高ければ、単打ばかりの選手であっても長打率は高くなってしまう。長打は二塁打以上を指すため、純粋に長打を打つ能力だけを見ようとした場合、長打率では正確に評価することが難しかった。
そこで単打を取り除き、より純粋に長打を打つ能力を評価するために開発されたのがIsoPだ。IsoPを求めるための計算式は「長打率-打率」。簡単な計算ながら単打の評価を0にすることができる。
ちなみにIsoPとは、Isolated Power(直訳:独立した力)の略で、メジャーリーグで使用されるセイバーメトリクスに基づいている。日本でも近年取り入れられるようになってきており、長打率とは違った視点で、それぞれの選手の個性を見極めるために使われている。
2019年IsoPランキング
2019年のプロ野球でIsoPが高い選手ベスト5は次の通り。
【セ・リーグIsoPランキング】
1位 山田哲人(ヤクルト) .288
2位 ソト(DeNA) .285
3位 バレンティン(ヤクルト) .273
4位 坂本勇人(巨人) .263
5位 村上宗隆(ヤクルト) .250
【パ・リーグIsoPランキング】
1位 山川穂高(西武) .284
2位 ブラッシュ(楽天) .279
3位 デスパイネ(ソフトバンク).261
4位 浅村栄斗(楽天) .244
5位 中村剛也(西武) .242
長打率10位の村上宗隆もIsoPでは5位浮上
長打率もIsoPも数値が高い選手は長打が多い傾向にあるが、ランキングを見比べてみるとその順番や顔ぶれは変わってくる。村上宗隆(ヤクルト)は長打率は.481でセ・リーグ10位だが、IsoPは.250で5位。それだけ遠くへ飛ばす能力が高いということだ。
長打率とIsoP、それぞれが何を示す数値なのか理解することで、選手ごとにどんな特長があるのかより具体的に把握できるようになるはずだ。