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阪神のキーマン高山俊は福留、糸井、近本を押しのけてレギュラーを奪えるか

2020 2/3 06:00楊枝秀基
阪神・高山俊ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

2016年新人王もルーキーイヤーが最高成績

入団時から、いわゆるフレッシュさはなかった。ルーキーらしからぬ落ち着いたたたずまい。そんな男も本領を発揮できぬまま5年目のシーズンを迎える。阪神・高山俊(26)だ。東京六大学野球最多の通算131安打を放ち、2015年のドラフト1位でプロ入り。1年目には見事、新人王に輝いた。だが、1年目の成績を未だ超えたことはない。その悩める才能が今季こそはと、目の色を変えている。

昨年12月に行われた契約更改交渉では、はっきりと2020年にかける思いを口にした。前年比で400万円アップの推定3600万円でサインし、取材陣から意気込みを問われると「僕の中で『まだできる』という気持ちもある。来年は(福留)孝介さんや糸井さんや近本を押しのけて『高山に勝てなかった』って言われるくらいに。ちょっと大口をたたきましたけど、そのくらい自分にプレッシャーをかけてやりたい」と意気込んだ。

実は高山の年俸アップは新人王に輝いた2016年オフ以来だった。1年目は134試合に出場し打率.275、136安打、8本塁打、65打点。安打数は当時の球団新人記録だった。誰もが将来の活躍を確信する成績。順調に成長するものかと思われたが、2年目以降は成績が下降線を辿った。3年目の2018年には出場試合数が100試合を大きく割り込み45試合の出場。打率も.172と低迷し、どん底状態だった。

近本に追いやられた2019年

そして、2019年開幕には入団以来3年続いてきた開幕スタメンから外れた。新人の近本が持ち味を発揮する中、自身は2軍生活を強いられる時期もあった。

だが、高山は腐らなかった。しっかり爪を研いでいた。5月29日の巨人戦(甲子園)では代打サヨナラ満塁本塁打を放つなど存在感を誇示。これで前年から続いていた甲子園での対巨人の連敗を9で止めてみせた。故障離脱のあった福留、糸井の穴を埋める活躍も目立ち、2019年は終わってみれば105試合、打率.269、5本塁打、29打点。本当の意味でのブレークを匂わせた。

安打1本の重みも実感した。入団以来、3年連続で開幕戦で安打を記録していたが、昨季は3月29日の開幕ヤクルト戦(京セラ)から3試合連続で代打出場も無安打。「状態が悪くない中で2軍に落ちて。苦しかった」と産みの苦しみも経験した。チーム28試合目、高山が再昇格した4月30日の広島戦(甲子園)、代打でシーズン初安打。「一番うれしかった」と一打を噛み締めた。

課題は左腕対策、藤川球児がキーマンに指名

上昇への兆しは本人も感じている。ただ、それが簡単ではないことも自覚している。昨季のスタメン出場は62試合。相手先発が左腕のときは10試合のみ。7月9日の巨人戦(甲子園)9回に田口から内野安打を打ってから、9月18日のヤクルト戦(甲子園)7回にハフから中前打を放つまで、左腕に24打席連続無安打だったというデータもある。

昨季の対右腕は打率.296(213打数63安打、4本塁打、19打点)だったが、対左腕は.172(58打数10安打、1本塁打、10打点)。プロ通算では対右.271、対左は.210と課題ははっきりしており、克服へ向けオフも入念に準備してきた。

チームリーダーからの心強いエールも励みとなっている。あと7セーブ挙げれば日米通算250セーブで名球会入りとなる藤川球児から、将来の阪神を背負う若手にも指名された。実力に加え、野球に対する真摯な姿勢、プロ意識ともに先輩から認められており「このチームは高山が良くなれば強くなる」と断言する。この評価を高山本人も感謝しており、結果で恩返しするつもりだ。

「具体的な目標を立てるというよりは誰が見てもよくやったというか、そういう1年にしたい」

福留、糸井、近本に加え、左翼も守れるマルテなどライバルは多い。そんな中で高山が言う通り福留、糸井を活躍させないほどのパフォーマンスを見せれば、阪神は間違いなく強くなるだろう。2年目を迎える矢野阪神がV争いを演じるための一つのカギとして、高山というピースの存在は大きい。

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