手応えをつかんでシーズンを終えた
ルーキーイヤーとなった昨季は10試合に先発登板し、3勝(5敗)、防御率4.31の成績で終わったロッテの小島和哉。開幕ローテーション入りを果たすも、プロ入り初登板となった西武戦で2回8失点を喫するなど、早々にプロの洗礼を浴びた。
2軍では14試合に登板し、4勝(2敗)、防御率1.85と安定感抜群の数字をマーク。投球回(78回)を上回る三振(81個)を奪うなど復調。再び1軍のマウンドに戻るもなかなか白星に恵まれなかったが、8月14日の日本ハム戦で6回1失点の好投を見せ、待望のプロ入り初勝利を挙げた。以降、5試合に先発登板して数字こそ2勝(2敗)だったものの、毎試合5~7イニングを投げ、3失点以内に抑える安定した投球を披露した。
シーズン序盤はつまずいたものの、8月~9月は先発ローテーションの一角を担ったとも言える小島。終盤にある程度の手応えをつかんでシーズンを終えたことは、来季へとつながるはずだ。
キレ味抜群のチェンジアップとクロスファイア
力感のないスムーズな投球フォームから繰り出す糸を引くような直球は、平均球速が138.7kmであることを感じさせない。ゆったりとしたフォームから放たれるキレ味のある直球に、打者がタイミングをとれずに苦慮しているシーンはシーズン後半によく目にした。そして、その直球を意識して早めにタイミングをとろうとすれば、得意のチェンジアップ(被打率.209)が決まる。
小島の球種はチェンジアップ、カットボール、カーブ、スライダーがあるが、チェンジアップの空振率は、約21%と他の球種と比べて群を抜いている(他の球種の空振率は約6~7%)。特に右打者の膝元に直球を投げ、内角を意識させた後のチェンジアップは効果的だった。
また、自信を持って投げている右打者へのクロスファイアは、惚れ惚れするほどのキレ味。ゾーン別のデータをみると、右打者の内角低めの奪三振数は12個と、ゾーン別で最も多くの三振を奪っており、被打率も.150と優れた数字をマークしている。左打者に対しては外角中心の配球。特に外角低めへの直球の制球力は抜群で、対左打者から最も多くの三振(7個)を奪っているのはこのコースだ。
ツーシームをものにできるかが鍵
課題は対左打者の被打率だ。対右打者のそれが.224であるのに対し、左打者には.322と打ち込まれている。ゾーン別の投球割合をみると、左打者の内角低めは1.4%、内角は1.8%、内角高めは6%と内角をほとんど攻めることができておらず、左打者が嫌がるような投球ができていない。右打者の投球割合をみると、内角低めに25.7%、内角に13.2%、内角高めに11.5%と内角を十分に意識させていることが分かり、そのことが被打率の低さにもつながっていると考えられる。
このオフにはツーシームを試投していたが、左打者の内角に食い込むツーシームを自分のものにできれば、投球の幅が格段に広がるはずだ。右打者にはクロスファイアを見せた後のチェンジアップ。左打者には内角をツーシームでえぐった後の外角低めの直球または変化球でタイミングを外すなど、打ち取るパターンを確立できれば勝てる投手になれる。
2019年シーズンは、楽天の銀次や日本ハムの近藤健介ら左の好打者に簡単に打たれるケースも散見されたが、内角を意識させる投球ができるようになれば抑える確率も向上するはずだ。
左のエースとして期待
昨季のロッテの先発ローテーション、石川歩、涌井秀章、ボルシンガー、種市篤暉、二木康太、岩下大輝らは、基本的に全員が右腕だった。やはり先発の左腕は貴重な存在で、小島を含めた土肥星也や中村稔弥ら左腕が、各カードの3連戦に1人入っていくことができれば理想的。
シーズン後半戦で見せた安定感のある投球は、先発投手としての資質を感じさせてくれるものだった。小島が左のエースとして君臨した時、ロッテは強くなる。小島にはロッテの柱としてだけではなく、日本球界を代表するような左腕を目指してほしい。
2020年プロ野球・千葉ロッテマリーンズ記事まとめ