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阪神15年ぶり優勝に欠かせない「打てる捕手」梅野隆太郎

2020 1/11 06:00楊枝秀基
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2019年はキャリアハイ

虎党が胸を張って語ることができる「打てる捕手」が目の前で誕生、成長している。梅野隆太郎は2019年、2年連続でセ・リーグの捕手部門でゴールデングラブ賞を受賞。捕手のシーズン補殺日本記録となる123補殺という勲章も手に入れた。打撃部門でも115安打、打率.266、9本塁打、59打点はいずれもキャリアハイの成績だった。

2019年はプロ6年目のシーズンだった。入団1年目の2014年から1軍出場の機会を勝ち取り、92試合で7本塁打という成績を残した。虎党の誰もが「打てる捕手」の芽吹きを感じ取った。だが、そこからは伸び悩んだ。2015年から2017年の3シーズンで合計6本塁打。入団1年目の本塁打数を3シーズンで超えられなかった。

梅野本人も模索していた。1年目はアマ時代の打撃スタイルをそのまま貫く形でプロの投手に挑戦。福岡大時代、通算79試合、284打数96安打、打率.338、28本塁打し、大学日本代表でも4番を務めた打棒を信じプロの世界に挑んだ。だが、7本塁打はしたものの打率は2割を切り.197。78個の三振を喫した。2年目以降は確実性を重視した打撃を意識したが2割台前半を突破することもできず、長打力も失われてしまった。

不振乗り越え、打撃スタイル確立

そこで梅野は腹を括った。2018年は正捕手のポジションを奪取。ここで捕手目線で打者を観察する機会が増えたことで、打撃にも引き出しが増えた。投手不利のカウントから、好打者はいい意味で割り切った打撃を仕掛けてくる。捕手・梅野として各球団の打者のボールの待ち方を知るうちに、自分の打撃スタイルも見え始めたのだ。

このシーズン、梅野は8月に23試合、打率.338、4本塁打、10打点を記録。打者有利なカウントでは1年目の打撃スタイルに近い、ポイントを前に置いたスイングをすることで結果が出ることに気づいた。

2018年は132試合、打率.259、100安打、8本塁打、47打点と全てにおいてほぼ自己最高の数字を記録。1995年の関川浩一以来23年ぶりの生え抜き捕手の規定打席到達となった。捕手としても初のゴールデングラブ賞を受賞。憧れでもある城島が阪神時代の2010年に獲得して以来、チームから同賞の受賞者が生まれた。

そして2019年、梅野は2018年のキャリアハイを超えて1年を全う。それでももちろん、本人が納得している訳ではない。むしろここがスタートラインだと考えている。2017年オフ、次シーズンから選手会長になることが決まった時、「まずは、周囲から信頼される存在になって正捕手を目指したい。それを3年以上続けてやっと本当の正捕手だと思うんです」と答えた。今の梅野はその場所まで来ている。

球界復帰の城島が憧れ

くしくも、2020年シーズンはソフトバンクの会長付特別アドバイザーとして、アマ時代の憧れ、城島健司が球界に帰ってくる。これまでオフには助言をもらうなど慕ってきた先輩だ。この城島のNPBでの通算打率は.296。これまでの時代を築いてきた打てる捕手の中ではトップの数字だ。元ヤクルト・古田敦也氏で.294、2019年限りで巨人を引退した阿部慎之助二軍監督は.284。それぞれに高すぎるカベではあるが、目標として口にしてもいいレベルに梅野も登ってきたと言っていいはずだ。

2020年はプロ7年目、29歳を迎えるシーズンとなる。昨年は西武・森友哉が首位打者を獲得し、広島・會澤翼がリーグトップの得点圏打率を記録するなど「打てる捕手」が脚光を浴びた。最下位から3位、2020年に阪神が目指すものは2005年以来のリーグ優勝しかないだろう。そのための重要なワンピースが梅野であることは明らか。さらなる「打てる捕手」としての覚醒があれば、悲願の実現も不可能ではないはずだ。

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