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矢野阪神の2年目を占う遊撃争い「ポスト鳥谷」は誰だ?

2019 12/4 06:00楊枝秀基
「ポスト鳥谷」を争う北條史也(左)と木浪聖也ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

実績から筆頭候補は北條史也

来季の阪神を語るにあたり絶対外せない話題は「ポスト鳥谷」だろう。数年来ずっと解決できなかった課題だが、2020年こそは何とかしなけばいけない。何しろ鳥谷本人が居ないのだ。

プロ年数、過去の成績から考えて「ポスト鳥谷」すなわち遊撃のレギュラー筆頭候補は北條史也(25)だろう。4年目の2016年には122試合に出場(そのうち二塁で33試合、三塁で64試合、遊撃で41試合)。シーズン終盤には三塁・鳥谷、遊撃・北條という形が固定された。

とはいえ、期待されながら遊撃のレギュラーを掴み切れなかった事実も残る。打撃不振やケガなどで波に乗れず。意外性はあるものの好不調の波も大きく、ファンの期待に応えられていない現状だ。今季は82試合の出場で打率.247、5本塁打、20打点、2盗塁。遊撃では46試合に出場し守備率.933、11失策と安定しているとはいえない成績だった。プロ通算では遊撃として4シーズン、214試合に出場し守備率.967の成績を残している。

2019年の最多出場は木浪聖也

次に名前が挙がるのは直近の成績からいえば木浪聖也(25)ということになる。今季、阪神の遊撃には計6選手がついたが、木浪が98試合(以下、北條46試合、植田海19試合、鳥谷敬14試合、糸原健斗10試合、ソラーテ3試合)で最多。遊撃の守備率ではリーグ5位の.966、同リーグ最多の15失策と不安定であったが、アマ時代は二、三塁の経験の方が多かった事実からすれば伸びしろがあると言える。

打撃面では開幕直後こそ打撃不振に苦しんだがシーズン中盤に7試合連続、終盤に13試合連続安打を記録。トータルでは打率.262、4本塁打32打点と新人としては印象に残る成績を残した。

両者ともに正遊撃手としては心許ない印象も残るが、現状では最有力であることは確かだろう。藤本内野守備走塁コーチは北條、木浪が同い年であることに触れ「切磋琢磨するうちに相乗効果でグッと伸びる時期というのがある。お互いに意識してレベルアップしてくれればチームも一気に強くなる可能性がある」と期待を口にしている。

休まずに遊撃手として試合に出続けて通算守備率.984、ゴールデングラブ4度の鳥谷と比べるのは酷だ。それでも、目の肥えた虎党を納得させるためには相当なレベルアップが必要なことは言うまでもない。

俊足の植田海も候補

北條、木浪の存在に割って入ってきそうなのは植田海(23)か。2018年に104試合に出場。同年、遊撃として74試合で守備率.965の数字を残している。このシーズンの特筆すべきは19盗塁。武器である足を存分にアピールした。

打撃が非力だという評価もあるが、今季は6月12日のソフトバンク戦(ヤフオク)でプロ初本塁打もマーク。あるOBから「守備だけならショートは植田が一番じゃないの」との声も聞こえるが、それだけではないこともアピールしてみせた。2019年はトータルで81試合に出場。打率.242、1本塁打、12盗塁。遊撃守備では19試合で無失策と無難にこなし、正遊撃手候補の一人と考えても不自然ではない。

将来性豊かな小幡竜平

さらに、今季は高卒ルーキーとしてウエスタンでチーム2位となる99試合に出場した小幡竜平(19)の存在も面白い。鳥谷のスタイルを見習って故障なくプレーすることを意識し続け、ファームながら離脱することなくシーズンを過ごした。遊撃で93試合、守備率.952、22失策は安定しているとはいえないが、無限の可能性は魅力だ。

ポスト鳥谷2019年成績ⒸSPAIA

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85年には平田(現二軍監督)、03年は藤本(現内野守備走塁コーチ)、05年には鳥谷と優勝時には名遊撃手が甲子園で躍動した。その役割を将来担うのは誰になるのか。2年目の矢野阪神にとっての重要懸案に興味は尽きない。