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雄平、川端慎吾は若手にとっての「壁」となれるか

2019 11/19 11:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズの雄平選手_2019年春季キャンプⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

若手を跳ね返す「壁」という存在

2019年シーズン最下位に沈んだヤクルトは、ドラフト会議で目玉の1人であった奥川恭伸(星稜高)の交渉権を獲得した。

また、楽天を自由契約となった嶋基宏の入団もすでに発表されている。その他にはFA宣言をした美馬学(楽天)と福田秀平(ソフトバンク)の争奪戦にも参加。

美馬からは断りの連絡があったことが報じられているものの、福田との交渉は継続中となっており、いつになく積極的な姿勢を見せている。

チーム力をアップさせるには補強が大事なのは言うまでもない。しかし、それだけで勝てるほどプロ野球の世界は甘くない。新戦力と現有戦力、若手とレギュラーなど、それぞれが競い合い、底上げを行っていくことが大事だ。

このオフに楽天の石井一久GMが、国内FA権を行使した鈴木大地(ロッテ)との交渉で話したとされるコメントが興味深かった。勝負強さやプレー、行動力についての評価の後、

「鈴木選手には、若い選手が奪いにくるものを跳ね返して高い壁になって欲しい」

と発信したのである。

チームは嶋の退団を見てもわかるとおり、若返りを進めている。しかし、若い選手に無条件でポジションを渡すのではなく、それを跳ね返す高い壁としての役割を鈴木へ期待しているのである。

壁としての役割はチームにとっても重要だ。若い選手を育てようにも、レギュラー陣が貧弱であれば、競争がなくポジションを与えることとなり、結果的にチームの力としては不足してしまうからである。

ヤクルトではどのような野手が壁となっているのか。また、なるべきなのか。

外野の壁は打率.270、2桁本塁打の雄平か

まずは外野から見ていこう。ウラディミール・バレンティンの去就は不透明だが、青木宣親、雄平、一塁と併用の坂口智隆と主力はすでに35歳オーバー。全試合でフル出場を求めるのは酷だろう。そのポジションを塩見泰隆や中山翔太、山崎晃大朗、そして濱田太貴といった選手たちが虎視眈々と狙っている。

そんな彼らの壁となるのは雄平だろうか。35歳だった2019年シーズンは131試合に出場したが、スタメンを外れた時期もある。その間に山崎や中山らが右翼の守備についたが、ポジションを奪えなかった。

雄平は守備面では衰えが見られるものの、2014年のレギュラー定着以降で打率.270を下回った年がないのは心強い。初球から積極的に振っていくスタイルにより低打率とイメージされがちだが、決してそうではない。

また、ここ2年連続で2桁本塁打を記録したように長打力もある。若手選手に打率.270、10本塁打をいきなり求めるのは酷かもしれないけれども、これが「壁」だ。

2015年の首位打者・川端慎吾の復活に期待

一方の内野。一塁そして三塁の壁の役割として、川端慎吾が本来であれば適任だ。2015年シーズンに首位打者を獲得し、翌年も打率3割をマーク。しかし、それ以降は故障や死球の影響で思うような成績を残せていない。2019年シーズンは37試合の出場で打率.164と大きく苦しんだ。

1987年10月生まれの川端は2020年シーズンを32歳で迎える。まだまだ中堅の年齢であり、老け込むには少し早い。このまま落ち込むのではなく、一塁なり三塁でポジションを奪い、若手選手たちを跳ね返す「壁」になってほしい。二塁は山田哲人、遊撃は新外国人選手のアルシデス・エスコバーが既定路線。よほどの不振やアクシデントがない限り、そのまま開幕するだろう。

捕手陣では新たに加わる嶋がその役割に適任だ。現在は中村悠平が正捕手として起用され、松本直樹や古賀優大が2番手、3番手として競い合っている。中村はともかく松本や古賀は嶋を超えなければ、正捕手の道が見えてこない。経験面はすぐに追いつき追い越すのは難しいが、最低限、プレーで嶋を超えることが絶対条件となる。

村上のように一気に全員を抜き去っていくスターは稀だ。雄平や川端、そして移籍してきた嶋が若い選手たちの壁となり、競い合えれば、チーム力の底上げになることは間違いない。

2020年シーズン、各ポジションで中堅以上の選手たちが「壁」としてそびえ立ち、若手たちを跳ね返す。それを乗り越え、ポジションを奪い取る選手がどれだけ生まれるだろうか。その数が多ければ多いほど、チーム力は上がっているはずだ。

※数字は2019年シーズン終了時点