「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

柳田悠岐、中村晃ら故障者続出のソフトバンク それでも勝てる理由とは

2019 5/2 07:00浜田哲男
,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

今季も投打で故障者が続出中

今季もソフトバンクは故障者が続出している。好調な滑り出しを見せていた柳田悠岐は、4月7日の走塁中に左膝裏を肉離れして離脱。今季もクリーンナップ候補として期待されていたグラシアルは4月5日に左脇腹を痛めてリハビリ中だ。

穴を埋めるべく期待されていたユーティリティプレーヤーの福田秀平も14日に左脇腹を痛めて離脱。長谷川勇也は右足痛のため18日に出場登録を抹消。中村晃は、自律神経失調症で復帰のメドが立っていない。さらには、上林誠知も17日に右手甲に受けた死球の影響で24日にはスターティングメンバーを外れた。

投手陣も怪我人が多い。ミランダは左膝痛で復帰時期が未定。バンデンハークはキャンプから腰痛を抱えておりリハビリ中で、石川柊太も右肘痛で復帰は7~8月とされている。また、今季からの復帰が期待されていた一作年の優勝の立役者、岩嵜翔とサファテは昨年手術した影響もあり無期限で調整中。野手・投手ともに、これでもかと言わんばかりに怪我人だらけだ。

今季に限ったことではない。2018年もシーズン序盤に当時加入したばかりのグラシアルが左手の指を骨折。主軸として期待されていた内川聖一は右膝痛、今宮健太は右肘関節炎で離脱。先発投手陣でもローテーションの柱として期待されていた和田毅、東浜巨らが肩の違和感で離脱していた。

それでも、ソフトバンクは強い。故障者続出を嘆くファンが「今年はもうダメだ」「Aクラスに入れれば御の字」といった声を挙げる中、最後にはリーグ優勝、日本一を成し遂げる。 なぜ、ソフトバンクは勝てるのだろうか。

故障者が出ると新陳代謝が高まる編成の妙

柳田、松田、中村、上林、今宮、甲斐など、ソフトバンクには絶対的なレギュラーが多い。そのことが安定した強さの理由でもあるが、必然的に年々レギュラーは高齢化していく。

しかし、レギュラー陣に故障者が出ると、若手をはじめとした他の選手が出場機会を得ることになる。一昨年、絶対的なセットアッパーだった岩嵜の代わりを務めた加治屋蓮は、昨年72試合に登板するなどブレイク。守護神サファテの代役となった森唯斗は37セーブを挙げてセーブ王に輝いた。

また、千賀滉大や東浜巨の離脱中には途中加入のミランダや育成出身の大竹耕太郎、高橋礼らが台頭。高橋は今季既にリーグトップの4勝を挙げるなどブレイクの兆しを見せている。

4月21日の西武戦では16安打16得点と大勝したが、同試合ではプロ入り2年目の周東佑京がプロ初安打となる3ランを放ち、3年目の三森大貴は猛打賞と躍動。内野手登録の周東は、故障者続出で外野手が足りないチーム事情から左翼で先発するなど奮闘した。また、育成出身の釜元豪も継続的に出場機会を与えられ、プロ入り初本塁打を放つなど外野のレギュラー争いに名乗りを挙げている。

また、投手陣ではドラフト1位ルーキーの甲斐野央が台頭。新人史上初となる開幕からの11試合連続無失点を達成するなど、絶対的なセットアッパーとしての歩みを進めている。昨季セットアッパーとして台頭した加治屋が今季は防御率6.00と精彩を欠く中、見事にその穴を埋めている。

レギュラー陣の離脱をきっかけに、ここぞとばかりに新たな戦力が次々に台頭。若手が経験を積むことが選手層の厚みにつながっているのだ。王貞治球団会長が「織り込み済み」と言うほどソフトバンクの故障者続出は毎年恒例となっているが、その度に試練を乗り越えて勝ち星を重ねてきた。故障者続出は決して良いことではないが、そのことが選手層の厚みにつながっているのは確かだ。

昨オフには、寺原隼人や城所龍磨など8選手に戦力外を通告するという大なたを振るった。中長期的なビジョンで常勝軍団であり続けるための決断だった。今季も、ソフトバンクが優勝候補の筆頭であることに疑いの余地はない。