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広島カープと沖縄の新たな可能性 ビジネスと地域振興の視点から紐解くキャンプ地・沖縄②

2019 3/15 15:00藤本倫史
野球ボール,ⒸSPAIA
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広島東洋カープキャンプの発展

前回は、阪神と中日のキャンプ地について述べた。今回は広島東洋カープの沖縄市キャンプについて述べる。

広島のキャンプと言えば、宮崎県の日南市を思い浮かべる人が多いだろう。日南キャンプは1963年から行っており、長い歴史を誇る。日南市は1966年頃に市議会で、巨人の誘致を検討した。巨人も温暖な気候や新設された球場施設に目をつけていたが、地元の有志がカープには恩があると反対し、約50年以上キャンプが続いている。

沖縄キャンプも歴史があり、1982年から行っている。沖縄市の人口は約15万人で県第2の都市で、キャンプの中心となっているのは沖縄市野球場。現在は2013年に地元に本店を置くコザ信用金庫が命名権を取得し、5年契約(年額650万円)で、「コザしんきんスタジアム」になっている。

このスタジアムは私がスポーツマネジメントに入って取材していた2010年頃は老朽化が進んでいたが、2012年から2年間全面改装(総工費約32億円)を行い、とても快適なスタジアムとなった。さらに、昨年には屋内練習場、今年は6000万円をかけて、ブルペンも新設された。選手はもちろんだが、急増するカープファンにとっても快適なスタジアムとなり、観戦しやすくなっている。

沖縄市多目的アリーナの新たな可能性

ここまでは、人気球団の阪神と同じような事例だが、私は沖縄市の方が、スポーツビジネスと地域振興の可能性をより感じた。その可能性は、沖縄市はBリーグの琉球ゴールデンキングスの本拠地があり、前々回にも書いたが1万人収容の多目的アリーナを建設する予定になっている。

琉球ゴールデンキングスはBリーグでも人気実力ともにトップクラスである。Bリーグの平均観客動員数が約1500人だが、キングスは3000人を超えている。コザしんきんスタジアムの横にある本拠地・沖縄市体育館はいつも満員御礼状態であり、沖縄独特の応援スタイルとアメリカの文化も上手くミックスさせ、独特のプロスポーツ文化と興業を根付かせている。

その勢いのあるゴールデンキングスを重要な地域資源と捉えて、現在、工事は進んでいる。2020年完成予定で、総工費は約170億円と見込んでいる。沖縄市の整備計画資料を見ると、このアリーナがスポーツを「する」場所ではなく、しっかりと稼ぐことを意識している。ゴールデンキングスの使用日数は60日、あと300日をコンサートや展示会にも使用し、稼働率を上げていくことを想定している。

そして、以前、私が連載しているシリーズにも書いたが、アメリカのリーバイススタジアムのようにICTを活用したアリーナを目指している。スマホを片手に試合情報だけでなく、アリーナを核とした飲食、宿泊、文化活動などとも連携させ、街全体の経済効果を高める。まさに、人とまちをつなげる器を意識している。

プロスポーツとスポーツツーリズムの連携はこれからのキーワード

このような動きに野球も上手く連携し、盛り上げていく必要があるのではないか。琉球ゴールデンキングスももちろん人気コンテンツであり、地元でも愛されている。ただ、広島東洋カープはより全国的な人気を持っている。

現に、カープのファンは多くいるが、グッズや飲食の出店は他球団より少なく、目立っていなかった。単にキャンプの練習や試合に訪れるだけでなく、周辺のお店や観光スポットにもより多くのファンが立ち寄って、お金を落とし、地域の良さをSNSで発信するように促す工夫はいくらでもできるのではないか。

ただ、地域も動いている。地域団体やNPOには若手の人材が入り、地元の経営者とともに中心市街地をどうするべきか考えており、最近はリノベーションをして、若者が出店する機会も増えている。私が取材した日も地域の団体がファンの方に、消費行動や観光行動について紙媒体ではなく、QRコードを利用したアンケートで、データ収集をしていた。

このような動きには、私も注目していきたいし、よりスポーツビジネスと地域振興を推進するスポーツツーリズムの動きをこれから読者にも注目してもらいたい。