「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

中村晃はスラッガー、平田良介は安打製造機へ…昨季スタイルを変えて飛躍した打者

2019 2/13 15:00青木スラッガー
SP_1902_G071
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

打者のタイプを表す指標「IsoP」

一口に「好打者」といっても、様々なタイプがある。ソフトバンク・柳田悠岐やヤクルト・山田哲人のように、長打力と打率を安定して両立させることができる選手は少ない。ほとんどの選手は生まれ持った素質により、パワーと確実性のどちらを武器にするのか見定めてプロの世界で戦っていくものだ。ただ、中にはキャリアの途中で方向転換を図る選手もいる。

スラッガー型か、安打製造機型か。打者のタイプを表すセイバーメトリクスの指標として「IsoP」というものがある。長打率から打率を引いた単純な数字で、安打がすべて単打であればIsoPは「0」。長打をよく打つ打者ほどIsoPは高くなっていき、「.150程度で平均的」「.200で優秀」「.250でトップクラス」というのがIsoPによる長打力評価の目安になる。


《関連記事》大谷の「IsoP」はメジャートップクラス。日本時代よりも「進化」する長打力

打者の総合的な優劣ではなく、あくまでプレーを構成する要素の一つを評価するための指標だ。この指標をもとにして、2018年シーズンに打撃スタイルの変化があった打者を見ていきたい。これまでのキャリアと大きく外れたIsoPを記録した打者を何名かピックアップする。

丸、中村晃らが長距離砲として覚醒

2018年,プロ野球打者成績

ⒸSPAIA

昨季、打撃スタイルに最も劇的な変化があったのは、広島で2年連続MVPを獲得しこのオフ巨人にFA移籍した丸佳浩だ。昨季の丸はキャリアハイの39本塁打、長打率.627をマーク。2013年には29盗塁で盗塁王を獲得するなど俊足も武器とし、これまで本塁打は20本前後で中距離打者の成績を残してきたが、昨季はプロ11年目にして長打力を飛躍的に向上させた。IsoPは西武・山川穂高、ソフトバンク・柳田悠岐を上回る.322で、前年から.125も上昇している。

丸ほどではないが、ソフトバンクの中村晃もスラッガー型へ打撃スタイルを変化させた。昨季は14本塁打を放ち、プロ11年目で初めて2桁本塁打に到達。これまでの最高は2016年の7本塁打だった。昨季のIsoPは.142で、前年から.062上昇している。一方で三振も過去最多の68個を記録した。意図的に強振で長打を増やそうとした形跡も見られ、これまで粘り強いアベレージヒッターとして何年も実績を残してきたことを考えると、中村にとってかなり思い切った転身だったことだろう。

宮﨑敏郎(DeNA)、上林誠知(ソフトバンク)、外崎修汰(西武)は2017年のブレイクから2年目で長打力を向上させた。宮﨑が28本塁打を放つなど、それぞれ本塁打を前年から倍近く増やし、IsoPも宮﨑は.058、上林は.045、外崎は.053上昇。俊足の上林、外崎はトリプルスリーを狙えるような選手になってきた。

平田、中村奨は確実性を取って成績向上

2018年,プロ野球打者成績

ⒸSPAIA

一方で上記の選手たちとは反対に、長打を捨てて確実性を取る形で成績を向上させた選手もいる。

顕著な例が中日の平田良介だ。これまで2桁本塁打は6度達成している平田だが、昨季は9本塁打にとどまり、IsoPも.128で前年から.023ダウン。しかし、初の規定3割となる打率.329のハイアベレージを残したことで、OPSはキャリアハイの.866を記録。打撃スタイルを変えて飛躍の1年になった。

ロッテの中村奨吾も似た形で昨季は成績を向上させている。IsoPは.109で前年から.048ダウンしたが、打率・出塁率が向上し、OPS.767は前年とほとんど変わらない数字になった。塁に出れば39盗塁と持ち味の俊足を活かしている。

2017年シーズンから2018年シーズンにかけて、打撃スタイルに大きな変化が見られた選手はこのくらいだが、最後に西武の秋山翔吾についても触れておきたい。秋山は2015年にシーズン216安打のプロ野球記録を樹立し、球史に残る安打製造機として大ブレイクした。2年後の2017年には25本塁打を放ち、IsoPは前年から.088上昇。昨季もそれに近い成績を残し、現在はスラッガータイプが定着しつつある。

昨季、打者として新たな一面を見せた選手たちはそれが一過性のものなのか、それとも秋山のように活躍を継続させるのか。今季はどのような打撃スタイルで結果を残すのか注目していきたい。