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ロッテ・井上晴哉は初芝以来「2年連続20本塁打」の壁を破れるか

2018 12/4 11:00青木スラッガー
井上晴哉,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

久々に現れたロッテの和製大砲

ロッテの若き主砲・井上晴哉が270%増の年俸大幅アップを勝ち取った。1350万円から3650万円アップで5000万円の大台に到達。本人は驚いたようだが、金額に値するだけの貢献は十分にあったといえるだろう。

5年目の今シーズンは133試合に出場し、打率.292・24本塁打・99打点。昨シーズンまでの通算4本塁打から大きな飛躍を遂げる1年となった。

久々に現れたロッテの和製大砲である。日本人打者のシーズン30本塁打以上は、1986年の落合博満(50本)が最後。千葉移転後、日本人打者の30本塁打超えは未だ現れていない。井上は千葉ロッテマリーンズとしての球団の歴史を作っていくことができるだろうか。

しかし、30本塁打に到達する前の段階として、近年のロッテ打者には「2年連続20本塁打」が大きな壁となっている。

日本人の連続20本塁打以上は2000年初芝が最後

ロッテで最後に20本塁打以上を複数年継続した選手は、2001~02年のメイで、生え抜きとしては1998~2000年の初芝清までさかのぼる。全選手・生え抜き選手どちらの条件でも、ロッテの「2年連続20本塁打」達成から遠ざかる期間は、12球団で最も長い(2005年創設の楽天は生え抜き打者の20本塁打未達成)。

メイ以降で20本塁打以上を達成した選手を見ると、日本人打者は昨シーズンまでに井口資仁、サブロー、大松尚逸、福浦和也、堀幸一の5名だ。

ロッテ,シーズン20本塁打以上の打者(2003年以降)

ⒸSPAIA

井口はダイエー時代に20本塁打以上を4度、最高で30本塁打もマークしたが、メジャー挑戦を経てロッテ加入後の20本塁打以上は5年目の1回のみ。どちらかというと打点を稼げる中距離タイプの打者になった。

サブロー、現役の福浦、もとより堀は中距離ヒッターに分類される打者だろう。20本塁打以上を放った年は、キャリアの中で特別長打力を発揮できたシーズンだったという印象だ。

今シーズンの井上のように、レギュラー定着と同時に20本塁打以上をマークしたのは大松尚逸だ。プロ4年目で24本塁打を放ち、主軸打者に定着、5年目も19本塁打を放った。しかし、6年目に16本塁打とやや成績を落とし、7年目以降は2桁本塁打に届かなくなった。出場機会は激減していき、遂に2016年で戦力外となった。

来季はスタジアム改修で本塁打が増える?

セイバーメトリクスの指標で長打率から打率を引き、より純粋な長打力を表す「ISO」というものがある。打者としての優劣ではなくタイプを判断するのに役立つ指標で、「長打率-打率」で算出される。概ね「.200」以上ならスラッガータイプ、「.250」ならその中でもトップクラスの評価だ。

2008年に24本塁打を放った大松のISOが「.237」。井口らほかの日本人打者が20本塁打以上をマークしたどのシーズンよりも高いスコアだ。本当の意味で外国人大砲に負けない長距離砲だったといえる。

しかし、大松のISOは2009年で「.176」、2010年で「.143」と推移。3年間で本塁打数以上に長打力が下降線をたどっており、ロッテでブレイクしたシーズンが成績のピークとなってしまった。20本塁打以上を打って一定の長打力を発揮した打者も、長距離砲としてのキャリアは歩まず。唯一最初から長距離砲として台頭してきた大松も、その打棒を長く維持することができなかった。

来季に期待がかかる井上の今シーズンのISOは「.214」。2年前に同じ本塁打数を放ったデスパイネを上回るスコアとなった。デスパイネはソフトバンク移籍後、「打者不利球場」を脱出して35本塁打まで本数を伸ばしている。

ZOZOマリンスタジアムは“長距離砲にとっての鬼門”だ。広いフィールドと強風が本塁打の出にくい環境を生み出している。しかし、この不利な状況も、来シーズンからは改善される見込み。改修工事によって、外野フェンスが最大4メートル前にせり出し、高さも低くなるのだ。

現段階では、グラウンドサイズがどれだけ変わるのか正確にはわかっていない。だが、少なくとも本塁打が出やすくなることは間違いないだろう。よって、デスパイネのような本塁打増が起こる可能性もある。タイミングも味方に、井上には長距離砲として2年続けての活躍を期待したい。