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奪三振能力が高いヤクルト・風張 「勝利の方程式」入りへの課題

2018 9/24 07:00勝田聡
ヤクルト主な中継ぎ投手陣の成績比較,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

起用法は様々、ブルペンでは常に準備

昨シーズンの96敗から一転して、2位争いを繰り広げているヤクルト。躍進の要因は青木宣親の復帰、山田哲人の復調がまず挙げられる。

一方の投手陣は、終盤を任せることのできる石山泰稚、近藤一樹の安定が大きな要因といえるだろう。特に石山はセ・パ交流戦で10試合に登板し、防御率0.00、7セーブと圧倒的な成績で日本生命賞を受賞。チームの最高勝率の立役者となった。

このように投打に軸となる選手ができたことでチームは蘇ったのである。

ヤクルトの中継ぎ陣を見ると、石山、近藤以外にも好成績を残している選手がいる。現時点では登録を抹消されているが風張蓮もそのひとりだ。4年目の今シーズンは開幕直後の4月3日に一軍登録されると、中継ぎとしてフル稼働していた。

勝ちパターンに入っていない風張の役割は様々だ。先発投手が崩れそうになると、序盤からブルペンで肩を作り出番を待つ。ビハインドの展開のなか、試合終盤にマウンドへ登ることもある。そのため、比較的出番が決まっている石山、近藤とは明らかに肩を作る機会は多い。

起用法が定まっていない中継ぎ投手の宿命ではあるが、試合展開によっては3回もブルペンに入り出番がないこともある。そのような過酷な状況のなか、すでにキャリアハイとなる47試合に登板しているのだ。

石山、近藤を凌ぎチームトップのK%

その風張の成績を見ると防御率は5.07とけっして褒められた数字ではない。しかし、他の指標でチーム内でもトップクラスの値を示しているものがある。

ヤクルト主な中継ぎ投手陣の成績比較,ⒸSPAIA

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まず、投球回数30回以上の投手を対象にK%(打席数に対し三振を奪う割合)を見ると、風張は24.9%とチーム内で最も高い値となっている。クローザーの石山(22.1%)やセットアッパーの近藤(23.6%)をも上回っているのだ。また、BB%(打席数に対し四球を与える割合)に関しても9.4%を記録し、石山の5.7%には及ばないが、近藤の9.3%と遜色ない数値である。

K%が高く、BB%が近藤とほぼ同じながら結果が出ていないのは、HR/9(1試合あたりの被本塁打数)が圧倒的に高いからだ。風張のHR/9は1.99となっており、石山の0.69、近藤の0.91と比べて2倍以上の数値となっている。まずは被本塁打の数を減らすことが、好成績を残すための条件となりそうだ。

今後の課題は安定した成績を残せるか

また、風張は石山、近藤、中尾の主力の中継ぎ陣と比べ、大量点を喫してしまう試合の割合が高い。登板試合数と自責点の関係を表にすると、風張は3点以上失うケースが10.6%と他の投手に比べて圧倒的に高い数値となっている。

もちろん、年間を通じて1点も失わないというのは不可能だ。点を失った際に、どれだけ被害を小さくできるかが重要となってくる。石山を見ると10試合で自責点を記録しているが、7試合は1点に食い止めている。3点以上の自責点がついたのはわずか1試合だけだ。

近藤、中尾を見ても大崩れすることは少ない。だが、風張は47試合の10.6%にあたる5試合で3点以上を奪われているのである。さらに、この5試合のうち4試合で本塁打を浴びており、これが大量失点につながった原因といえる。

中継ぎ4投手の登板数と1試合あたり自責点の関係,ⒸSPAIA

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三振を多く奪うことができ、四球数は近藤と遜色ない風張にセットアッパーのポテンシャルは大いにある。今シーズン、先発投手ではあるが、原樹理が劇的にHR/9を改善させエース級の成績を残しはじめた。 (参考記事)

風張も同様にHR/9を改善させることができれば、次代のセットアッパー、クローザーとなる可能性はありそうだ。今後の成長を楽しみにしたい。

※数字は2018年9月20日終了時点