右腕の「変化」に迫る
※文章、表中の数字はすべて2017年シーズン終了時点
今季は5位に沈んだ日本ハム。苦しいシーズンとなったが、鍵谷陽平の成長は明るい材料のひとつだろう。5年目の今季は、チーム最多の60試合に登板し防御率2.53を記録するなど、その働きぶりが光った。今回は、そんな右腕の「変化」に迫る。
※奪空振り率=奪空振り÷投球数
※リーグ平均は救援投手を対象
まずは配球に着目したい。基本的にはストレートが中心の投手で、スライダーとフォークを含めた3球種が、投球割合の9割以上を毎年占めてきた。その中で今季の変化は、追い込む前からフォークを積極的に使っていることだ。
一般的にフォークは、空振りを奪うことを目的に決め球として用いられるボールで、追い込む前に26%という投球割合を残す投手は珍しい。ただ、その奪空振り率はいずれのシーズンもリーグ平均を下回っており、一般的な目的を考えると優れたボールとはいえない。
では、なぜ割合を増やしたのか。その答えにつながりそうなデータが、追い込む前後別ストライクゾーンへのフォーク投球割合だ。これまた一般論になるが、フォークは低めのボールゾーンに投げ込むことがベターとされている。
実際、昨季までの鍵谷もボール球が多く、今季も追い込んだ後は大半をボールゾーンに投じた。ただ、追い込む前はストライクゾーンへの投球が明らかに増えており、これは意図して投げ込んでいるものだと思われる。
配球に変化を加えた今季、追い込む前のストライクゾーンへのフォークは、27打数3安打で被打率.111を記録。トータルも同.222と、リーグトップクラスの数字を残した。
昨季までは、カウントを取りに行った直球を痛打されることも少なくなかった鍵谷。その中でフォークが、速いカウントからストライクゾーンに集めるという、セオリーとは異なる方法で、活(い)きるボールに生まれ変わった。
あらためてチームの話をすると、シーズン途中に谷元が中日へ移籍し、オフには増井とマーティンが退団。今季、同点またはリード時に数多くのマウンドを託された実力者を、3人も欠くことが決まっている。
鍵谷は契約更改の席でそのことに触れ、「僕が一番やらないといけない」と決意を新たにした。その言葉通り、来季もブルペンの屋台骨を支える働きが期待される。
企画、監修:データスタジアム、執筆者:泉 熙
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