2017公式戦初采配だった両監督
今年が初の開催となるアジアプロ野球チャンピオンシップ2017。その初戦である韓国戦が11月16日に行われた。稲葉篤紀監督にとって初の公式戦となる。一方、韓国代表を率いるのは宣銅烈監督だ。2017年7月に就任した宣監督にとってもこの大会が初の公式戦となる。宣監督は現役時代に1996年から1999年までの4年間を中日ドラゴンズで通算98セーブを挙げており、日本でもなじみ深い人物でもある。
2020年の東京オリンピック、2021年のワールド・ベースボール・クラシックに向けて新体制で臨んだ両チームが、どのような試合を見せてくれるかにも注目が集まった。
前日のインタビューで両監督が予告したとおり、日本・薮田和樹選手(広島)、韓国・チャン・ヒンショク選手の両先発で始まった試合開始。
新任監督対決は日本代表・稲葉監督に軍配
先制したのは日本代表。2回裏に近藤健介選手(日本ハム)の内野安打、韓国代表の悪送球が絡み1点を奪う。しかし、直後の3回表に韓国代表はキム・ハソン選手が同点本塁打を放つと、安打と四球を絡め合計4点を奪い1-4となり日本代表は3点のビハインド。
日本代表は5回裏に近藤健選手が安打で出塁すると4番山川穂高選手(西武)が2点本塁打を放ち3-4と1点差に迫る。その後は、両チームともに中継ぎ陣が踏ん張り9回表まで得点はそのまま。
9回裏日本代表は安打と四球で1死満塁のチャンスを作ると、京田陽太選手(中日)が四球を選び同点に追いつき試合は延長戦へ。
無死一、二塁から始まるタイブレーク制が用いられている今大会。10回表に韓国代表は3点を奪い7-4と3点のリードを奪う。
3点ビハインドとなった10回裏の攻撃で山川選手は倒れたものの、上林選手が起死回生の3点本塁打。2死後に西川龍馬選手(広島)が安打で出塁後に盗塁を決め最後は田村龍弘選手がサヨナラ打を放ち8-7と逆転勝利。稲葉監督は初陣を8-7のルーズベルトゲームで勝利した。
参照:【日本代表】稲葉JAPANのキーマンは上林選手!
随所に見せた機動力野球
試合の中身を振り返ると稲葉監督は事前に話していたとおり、機動力を使った攻撃が目立った。
2回裏に上林誠知選手(ソフトバンク)がチーム初安打で出塁すると初球に盗塁を試みる。アウトになったものの、塁に出たら走るという動きを最所から見せた。
先制点を奪った3回裏も同様だ。2死無走者の場面で源田壮亮選手(西武)が四球で出塁すると、近藤健選手の4球目に盗塁を敢行する。近藤健選手が叩きつけた打球は一、二塁間へ。二塁のパク・ミンウ選手は一塁にベースカバーが入っていないのを確認すると三塁へ送球。その送球を三塁のチョン・ヒョン選手が捕球できず、こぼれている隙に源田選手が本塁を陥れた。走者が動いたからこそ得点に繋がったと言えるだろう。
また、5回裏1死一塁の場面では甲斐拓也選手(ソフトバンク)がスタートを切り桑原将志選手(DeNA)がヒッティング。遊撃手のキム・ハソン選手の好守備で内野安打にはならなかったが、走者を進めることには成功している。この場面も走者がスタートを切っていなければ、併殺となっていた可能性も高い。
さらには10回裏に7-7と同点に追いついた後、2死一塁の場面では西川龍馬選手(広島)が、韓国代表バッテリーの警戒をかいくぐり盗塁成功。田村龍弘選手(ロッテ)のサヨナラ打を生んだ。
存在感を見せたクリーンアップ
クリーンアップを任された近藤健選手、山川選手、上林選手。それぞれが持ち味を発揮し勝利に貢献した。
3番に入ったヒットメーカーの近藤健選手は先制内野安打を含む3安打猛打賞。規定打席には到達して言いものの、打率4割超えの実力を見せた。
4番を任された山川選手は3点ビハインドの6回裏に近藤健選手を一塁に置き、逆方向へ1点差に迫る本塁打。期待された一発を放ち主砲としての働きを見せる。また、一塁守備でも魅せてくれた。8回表無死一、二塁の場面でアン・イクフン選手のバントへ猛然とチャージし三塁で封殺。追加点を与えたくない場面で非常に大きいプレーとなった。盛り上げ役としてもチームをまとめるなど攻守だけでなく、ベンチ内でも存在感を発揮している。
5番に入った上林選手も光るプレーを魅せた。前回の記事【日本代表】稲葉JAPANのキーマンは上林選手!でも紹介したように、キーマンとしての活躍が期待されていた。その期待通り、延長10回裏に同点となる3点本塁打を放ち一振りで試合を振り出しに戻している。また、その前の守備では強肩で韓国の走者を先に進めない抑止力を見せた。
制球が定まらなかった投手陣
機動力、長打力をみせたと攻撃陣だが一方で投手陣には不安が残った。
先発の薮田選手は3回まで無安打投球を見せるも、毎回先頭に四球を出す苦しい投球が続く。先制点をもらった直後の4回は、初球を被弾するとその後も安打を浴び、いいところを見せることができなかった。
2番手の近藤大亮選手(オリックス)は2つの四球からピンチを招き失点。悪い流れを断ち切ることができず不本意な投球となってしまう。
7回から登板した4番手の石崎剛選手は8回も続投。しかし、先頭のチョン・ヒョン選手にストレートの四球。その後も安打を許すなどピンチを招いてしまう。失点には結びつかなかったものの、回跨ぎには不安が残った。
タイブレークとなった10回表に登板した又吉克樹選手(中日)。1死を取ったものの連打、四球と不安定な投球で3失点と回の途中での降板となってしまう。
その中で好投を見せたのが山崎康晃選手(DeNA)だ。1点ビハインドの9回表にとマウンドに登ると三者凡退に抑え、9回裏の同点劇を呼び込む快投を見せてくれた。
このようにまだまだ課題はあるものの、機動力と長打力双方が合わさり8得点を奪った日本代表。選手、監督ともにこの大会を通じて成長することを期待したい。