キャプテンとしてチームを引っ張る鈴木大地
2017年シーズン、チーム状況が苦しい中で奮闘を続ける千葉ロッテマリーンズの鈴木大地選手。自身初の2桁本塁打を記録したり、今季からコンバートされたセカンドでは堅守を見せたりと、選手としての役割はしっかりとはたしている。だがキャプテンとしては、このチーム状況には大きな責任を感じているだろう。
この鈴木大地という選手は、野球人として本当に素晴らしい。優れたキャプテンシーを持ち、常に周りを見渡し、誰よりも声を出し、チーム全体の雰囲気を盛り上げてくれる。ピッチャーが苦しいときに真っ先に声をかけに行くのも彼だ。
思い返せば、東洋大学時代も3年生から副主将に就任している。このチームでは主将も副主将も4年生から選出されるのが慣例なのだが、下級生ながらチームに対して、野球に対しての姿勢が評価され、初の3年生副主将となったそうだ。
ロッテでも入団3年目という異例の早さでキャプテンに就任しているが、もはやそれに異論を唱える選手やファンは誰もいない、納得の人選となっている。
もちろんグラウンド内でも存在感は抜群だ。常に全力疾走を心がけ、練習から一切手を抜かない。多少の痛みがあっても常に試合に出続ける。レギュラーに定着した2013年以降、欠場したのはたったの1試合だけだ。2015年5月に不振で先発を外されたが、それ以外では5年間で1試合も休んでいないのだ。
プロ野球選手としては抜きんでたものを持っているわけではない?
そんな鈴木大地選手の「プレーヤーとしての特徴」を見てみると、特に突出したものを持っているわけではない。足が速いわけでもなく、肩も平均的だ。バッティングでも、小技はいろいろとできるし、長打力もあるが、目を見張るようなパワーがあるというわけではない。優れたキャプテンシーを持っていても、プロ野球選手としてはほとんどの能力が平均的だ。
だがそれでも不動のレギュラーとして活躍できるのは、一体なぜだろうか。
それは、自分にできることを「堅実」にやっているからだろう。
基礎の部分を徹底的に練習し、それを試合でも実践している。実際に鈴木大地選手の守備を見てみると、基本に忠実という印象を受ける。打球はしっかりと捕り、正確な送球でアウトを取る。
派手なプレーはほとんどなく、守備範囲もそれほど広いというわけではないが、範囲内の打球ではほとんどミスをしないのが、鈴木大地選手の凄さだ。2013年・2014年にはショートの守備率でパリーグトップに輝いている。
2017年からはセカンドへとコンバートされたが、こちらのポジションでもやはり守備率トップだ。
幼いころから繰り返してきた基本動作の積み重ね
実をいうと、鈴木大地選手は「当て捕り」が苦手だという。当て捕りというのは、打球をしっかりとつかむのではなく、手のひらの部分に当てて捕球する技術だ。ややグローブを引きながらボールの勢いを殺し、素早く右手に持ち替えて送球。グローブでしっかりと握らない分、1塁に送るまでのスピードを早くすることができる。縮められる時間はコンマ何秒であるが、プロの世界ではその差が非常に大きいのだ。
しかしその一方で、ボールが手につかずお手玉してしまったり、ボールを上手く握れずに送球エラーに繋がってしまうケースも非常に多く、常にミスが付きまとう技だ。
堅実さを重視している鈴木大地選手は、この当て捕りをほとんどしない。無理に当て捕りで捕球するのではなく、しっかりとグローブを使って捕球し、正しく握り、正確に送球をするという基礎動作をしっかりと行っている。幼い頃から繰り返してきたこの動作であるが、それをプロ入り後も貫いているのだ。
当て捕りほど早くはできないが、それでも1つ1つの動きを素早く行うことで、コンマ何秒を縮めてきた。実際にゴロアウトの数は、他のショートに比べて劣ってはいない。
セカンドへコンバートされても、守備率を維持できているのも、この基本動作がしっかり堅実にできているからだろう。
ショートからセカンドへのコンバートはプロでも意外に戸惑うことが多いといわれているが、しっかり捕ってしっかり投げるという基本的な動作を長年重ねてきたからだ。派手な部分は一切ないが、基礎動作を極めることで、一流の選手たちと渡り合ってきた。
打撃でも堅実さが売り!だが最近は長打力が増してきた
打撃に関してはミート力がありバントなどの小技も上手く、パワーに関しては並というのが以前までの評価であった。打撃でもできることをしっかり堅実にやっているという印象で、入団2年目から毎年ホームランを放っている。これまでの最高は2015年、2016年に記録した6本だったが、2017年に千葉マリンスタジアムで初の2桁ホームランを達成したため、その価値はかなり大きい。
2014年シーズン終了後のオフから筋力トレーニングに励んでおり、その効果が出ているようだ。それまでは本格的にウエイトトレーニングを行ったことはなかったそうだが、福浦和也選手から勧められ取り入れたという。
すると2014年シーズンは3本だったホームランが、2015年には6本に増加。筋力がついた体をうまく使えていなかったのか、春先に全く打率が上がらない時期もあったが、交流戦に4割近い打率を残し、なんとか復調した。
そして翌2016年には春先に本塁打が次々に飛び出し、半月もたたないうちに3本塁打を記録した。その後はホームランこそストップしたものの、最終的には6本と前年同様の数字に。だが2塁打を初の30本にのせ、打率も.285を記録するなど、堅実さを残したまま、全体的なパワーアップを遂げた。
堅実さを残しながらも年々パワーアップ
2017年は開幕から打撃が好調で、4月だけで3本塁打を記録、28日の西武戦では4番にも座った(もっとも他の選手たちが軒並み不振という事情もあったが)。5月にも3本塁打を記録し、早くも自己記録である6本に到達する。
さらに6月9日のヤクルト戦で、自己新となる7号ホームランを達成。1点を先制した後の、見事なスリーランホームランであった。6月18日の巨人戦ではもう1本ホームランを放ち、交流戦2本目、シーズン通算でも8本目のホームラン。
7月には打率1割台の大不振であったが、それでも1本放ちこれで9本目。そして8月4日の楽天戦、第1打席で先生となるツーランを放ち、これで10号に到達となった。
そしてこれ以降、7月分の不振を取り替えすように打ちまくり、2割5分台だった打率も2割7分台まで上昇し、8月の月間打率は.322をマークした。角中選手の復帰やペーニャ選手の加入によって打線は上を向いており、前半戦は4.73だったチーム防御率も、後半戦だけをみれば3点台だ。
どん底の状態は、もう抜け出した。このどん底を経験したことを糧にし、来年はチームを浮上させることが出来るだろうか。キャプテンにかかる期待は大きい。
《関連データ》千葉ロッテマリーンズ 野手データ
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