圧勝を裏付ける「異様なデータ」
2025年のセ・リーグは、まさに「虎の一年」だった。阪神タイガースが85勝を挙げ、2位DeNAに13.0ゲームもの大差をつけて独走優勝。その圧倒的な強さの秘密は、ホームラン数や打率といった華々しい数字だけではない。いや、むしろその逆だ。
力の源泉は、打者の「真の選球眼」を示すセイバーメトリクス指標「IsoD(出塁率-打率)」 にこそあった。
セイバーメトリクス好きなら、今季のIsoDトップ10を見て、誰もが息をのんだはずだ。1位・大山悠輔、2位・森下翔太、4位・近本光司、5位・佐藤輝明、10位・中野拓夢。トップ10に虎の主力たちがずらりと顔を並べているのだ。
2025年の阪神打線がいかに異質だったかを見てみよう。
IsoDランキングに名を連ねた5人は、そのまま阪神の根幹を成す打順(1番近本、2番中野、3番森下、4番大山、5番佐藤)とほぼ一致する。つまり、阪神は1番から5番まで、リーグトップクラスの「選球眼」を持つ打者を並べていたのだ。
相手投手からすれば、悪夢以外の何物でもない。安打だけでなく、四球や死球で出塁できる打者が延々と続く。これが、阪神打線が「アウトを献上しない」、相手に絶えずプレッシャーを与え続けた最大の理由である。
その頂点に君臨したのが、4番・大山悠輔だ。 彼が叩き出したIsoD「.098」は、2位の森下(.075)を大きく引き離す、リーグで唯一の「.090」超え。まさに孤高の数字だ。
この「.098」という数値が持つ意味は重い。今季の大山の打率は.264。決して好調とは言えなかった。だが、彼は焦ってボール球に手を出すことなく、自身のゾーンを厳格に守り抜いた。相手バッテリーの厳しい攻め、あるいは「勝負回避」を、冷静に見極め続けた。
「打てない」状況下で、「出塁」という4番の仕事を果たし続けた「忍耐力」。NPB全体でもトップの四球率(BB%)12.6% が、その威圧感を証明している。














