指導者経験ない藤川監督が就任1年目に優勝
優勝マジックを1としていた阪神が7日、甲子園で行われた広島戦に2-0で勝利し、2年ぶり7度目のリーグ優勝を果たした。
阪神は2回、高寺望夢の犠飛で先制。先発の才木浩人が5回、先頭の石原貴規に危険球を投じて退場となるハプニングもあったが、緊急登板の湯浅京己が後続を抑え、難を逃れた。
6回には近本光司の犠飛で1点を追加。その後もリリーフ陣が広島打線を封じ込んで完封リレーの快勝だった。
9月7日の優勝決定は、1990年9月8日に優勝した巨人の記録を塗り替え、2リーグ制となった1950年以降で最も早い。
甲子園の夜空に5度舞った藤川球児監督は、就任1年目で見事な采配。コーチなど指導者経験のない新人監督が優勝したのは、1リーグ時代や戦後間もない混乱期を除く1951年以降で落合博満(中日)、栗山英樹(日本ハム)、工藤公康(ソフトバンク)に次いで4人目の快挙となった。
2年前より“余裕を持って”頂点
36本塁打、89打点で二冠王へまっしぐらの佐藤輝明、12勝、防御率1.62で投手二冠の才木浩人ら投打の主軸がガッチリかみ合っての優勝。スタメンパターンは12球団最少の74通り、クリーンアップはわずか8通りと高い実力を持った主力メンバーをほぼ固定して戦った。
6日終了時点で、先制した試合はリーグ断トツの57勝。勝率もDeNAに次ぐ.731と高い。この日もそうだったが、5回終了時にリードしていれば、いずれもリーグトップの52勝、勝率.852を記録しており、「先行逃げ切り」という絶対的な勝ちパターンを確立したことが大きい。
また、1点差以内の試合もリーグトップの勝率5割と高いが、22勝はリーグ3位タイと飛び抜けて多いわけではない。その一方で、2点差以上の試合はリーグ断トツの55勝、勝率.705となっており、リードを保った危なげない展開の試合が多かったことが分かる。
岡田彰布監督が率いた2023年も先制した試合は勝率.785、5回終了時にリードしていれば勝率.896と今季以上に高かった。基本的には2年前とチームカラーは変わっておらず、藤川監督が“岡田遺産”をうまく継承したと言える。
ただ、2年前は1点差以内の試合が勝率.628と高かったのに対し、2点差以上の試合は勝率.611と今季より低い。2023年は接戦をものにして頂点に立ったが、今季はもっと余裕を持って優勝したのだ。

救援防御率1.95のリリーフ陣
それだけを見ると、佐藤輝明に代表される打線の爆発の恩恵かと思われるかもしれないが、決してそうではない。2023年はチーム総得点が555だったが、今季は125試合終了時点で435得点。143試合に換算すれば498得点で、今季の方が得点は少ないのだ。
危なげない試合展開を支えた大きな要因はリリーフ陣にある。今季は先発防御率2.23に対し、救援防御率1.95。先発陣の数字も優秀なのだが、リリーフ陣が凄すぎて先発陣がかすんでしまうほどだ。
2年前は先発防御率2.79、救援防御率2.39だったから、今季がいかに凄いか分かるだろう。その象徴がこの日で48試合連続無失点となった石井大智だが、及川雅貴、桐敷拓馬、岩崎優らの献身的な働きは高く評価されるべきだ。
失策数も減って盤石の“横綱相撲”
もうひとつの要因が失策の減少。今季は125試合で52失策とリーグで2番目に少ない。
2018年から89失策、102失策、85失策、86失策、86失策と2022年まで5年連続12球団最多失策を記録し、2023年、2024年も85失策で2年連続ワースト2位だったチームの長年の課題が今季は劇的に改善された。
守備面で上積みが大きいのは佐藤輝明。2023年は20失策、2024年は23失策を記録していたが、今季はこの日の1個を加えてもわずか5失策。長打力にばかりスポットライトが当たるが、実は守備面でも“貢献”しているのだ。一時期、サードからライトに回ったこともあるとはいえ、守備の安定が打撃成績の向上につながった面はあるだろう。
今季の阪神は岡田監督が整備した土台をベースに、藤川監督なりのエッセンスを加えて盤石の態勢を築いたと言える。そして、森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔のドラフト1位3人衆で形成するクリーンアップが象徴するように、長年の補強戦略の延長線上に今があることは言うまでもない。
今季の戦いぶりを見る限り、“黄金時代”は当分続くだろう。球史に残る最速Vはその幕開けかもしれない。
※成績は2025年9月6日終了時点
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