日米通算165勝、アマチュア含めて輝かしい実績残す
ソフトバンクの和田毅投手(43)が5日、現役引退を発表した。スポーツ紙などで来季の現役続行が報じられた矢先の引退発表に、SNS上では驚きの声が続出。43歳まで投げ続けた松坂世代の「ラストサムライ」がついにユニフォームを脱ぐ。
島根県出身の和田は浜田高時代、2年夏、3年夏に甲子園出場。1998年夏の甲子園では、準々決勝で同年ドラフト1位で横浜入りする古木克明を擁する豊田大谷に延長10回の激闘の末、3-4で敗れた。
同日の第1試合で行われたのが今も伝説として語り継がれる横浜vsPL学園、延長17回の死闘。その後も長い野球人生で切磋琢磨する、松坂大輔を始めとするハイレベルな世代が注目されるきっかけとなる大会だった。
早稲田大では法政大・江川卓が持っていた東京六大学記録を更新する通算476奪三振をマーク。リーグ通算27勝を挙げ、2002年ドラフト自由獲得枠でダイエーに入団した。
1年目から5年連続2桁勝利、8年目の2010年には17勝で最多勝、MVPに輝くなど、日本を代表する左腕として2011年オフに海外FA権を行使し、MLBオリオールズと契約。しかし、ケガでメジャーのマウンドに立つことはできず、カブス移籍後の2014年に4勝、2015年に1勝を挙げたのみに終わり、ソフトバンクに復帰した。
復帰1年目の2016年に15勝でいきなり最多勝。その後も松坂世代の選手たちが次々にユニフォームを脱ぐ中、和田だけは左腕を振り続けた。
NPB通算334試合で160勝89敗、防御率3.18。メジャーでの5勝も合わせて日米通算165勝は、松坂大輔に5勝及ばなかったものの、アマチュア時代を含めて輝かしい実績を残した。
2023年のストレート空振り率は8.2%
和田の特長のひとつが奪三振率の高さだ。NPB通算2073.1回で1883三振を奪っており、奪三振率は8.17。NPBで1204三振をマークし、奪三振率10.31の野茂英雄、同じく1410三振をマークして奪三振率8.67の松坂大輔ら歴代の剛腕には及ばないが、7.96の田中将大、7.71の工藤公康、7.68の菅野智之らレジェンド級の先発投手を上回っている。
今季は8試合しか登板がなかったが、21試合に登板して8勝を挙げた2023年は奪三振率7.65だった。球威にものを言わせることができる20代ならともかく、なぜ40代でも現役を続け、高い奪三振率を維持できたのか。
その秘密がフォームにあることはよく知られている。体を開かずに体重移動し、ギリギリで一気に回転。加えてトップの位置が低いため、相手打者はボールの出所が見にくく、スピード以上に速く見えるのだ。
事実、2023年のストレートの平均球速は142.6キロ。スピードだけならもっと速い投手はたくさんいるが、決して速くないストレートで空振り率8.2%をマークしている。
規定投球回到達者の中で4位相当
それがどれほど凄いことなのか。2023年の規定投球回に到達した投手と比較すればよく分かる。下の表を見てほしい。
ストレートの空振り率は西武・平良海馬(12.7%)、日本ハム・上沢直之(10.1%)、オリックス・山本由伸(9.7%)とストレートが速くて切れる投手がTOP3。和田の空振り率8.2%は彼らに次ぐ4位相当で、日本ハム・伊藤大海、西武・高橋光成、オリックス・宮城大弥、ロッテ・小島和哉、日本ハム・加藤貴之、楽天・則本昂大を上回っているのだ。
ストレートの平均球速は153.0キロの山本由伸を筆頭に140キロ台後半が多い中、和田の142.6キロは9位相当。それにもかかわらず空振り率は4位相当、奪三振率7.65も山本由伸(9.27)、平良海馬(9.18)、伊藤大海(7.87)に次ぐ4位相当となっている。
2023年は42歳。後厄だ。誰もが衰えを痛感する年齢で、パ・リーグを代表する、バリバリの20代の投手たちと肩を並べるのは並大抵のことではない。
体に負担のかからない無理のないフォームはもちろん、継続してトレーニングを積み、入念に体をケアしてきたからこそ「ラストサムライ」は誰よりも長く現役を続けられた。そして、最後まで侍らしく、潔い終わり方だった。まずはゆっくり心身を休めてもらい、次は指導者としてユニフォームを着る日を楽しみに待とう。
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