平凡だった中学時代、逆境はねのけ急成長した高校時代
金丸の野球人生は小学1年生から始まった。高校野球の審判をしていた父の背中を見て育った夢斗少年は、自然と野球の世界へと足を踏み入れていた。
「父が野球をしていて、今でも審判をやっています。今年で甲子園は引退したのですが(※)。審判をしている父の姿を見に野球の試合にはよく行っていたので、そこから野球をやり始めました」
※父・雄一さんは今夏開催された第106回全国高等学校野球選手権大会で8月19日の準々決勝、智弁学園-京都国際戦で一塁塁審を務め、同試合で高校野球の審判を引退。
しかし、彼が辿ってきた道は決して平坦ではなかった。中学時代は体が小さく、速球のスピードも110キロ程度。目立った実績もなく、野球エリートとは程遠い存在だった。
「まさかこんなふうになるとは、当時は全然思っていなかった」という金丸は、高校進学の際に強豪私学ではなく、地元の公立校・神港橘高校を選んだ。甲子園を夢見つつも、実力不足を痛感し「環境の良い公立高校を選んだ」という選択が、彼の新たな挑戦の出発点となる。
「入学当時はレベルが高いなと。ただ、試合に出たいという思いが強かったので、みんなについていけるというか、試合に出られるようにしっかり練習していたら、意外と早く試合にも出させてもらえました」
高校1年の秋から先発としてマウンドに上がり、2年秋にはエース番号を託されるまでに成長。その間に身長も伸び、175センチに達していた。そして、最大の転機を迎える。新型コロナウイルスの影響で自粛を強いられた2020年春、自宅待機となり野球ができない日々が続く中で、金丸は自身の体と向き合っていた。
「家でトレーニングしながら、その期間は特にたくさん食べて体重を増やしました。しっかりパワーもつきましたし、球速も結構速くなりました」
逆境を糧に変え、自己成長につなげた金丸だったが、3年夏の最後の大会、全国高校野球選手権とその地方大会は中止に。ただ、それを受けて開催された兵庫県の独自大会では、エースとしてベスト8にチームを導いた。
「もう本当に楽しかったですね。投げる球も良くて、スピードも140キロ以上投げられるようになっていたので。三振もたくさん取れましたし。でも、やっぱり最後までやりたかった(※)っていう思いはありました。けど、しっかりとベスト8入りできたので、そこはいいアピールになってよかったです」
※大会規定により、ベスト8が出そろった時点で打ち切り。
「4年後プロ入り」明確な目標立て関西大へ進学
不完全燃焼ながらも成長の跡を見せて高校最後の夏を終えた金丸だったが、卒業後の進路としてはプロ野球ではなく、大学進学を選択する。
「実力的にもまだまだもっとできると思っていたので。大学4年間でしっかりと成長してプロに行こうと本気で思っていたので、(進学することを)決めていました」
高校の大先輩でもある山口高志氏(元阪急)が関西大学のアドバイザリースタッフを務めていた縁もあり、関大へと進学。そこで金丸はさらなる飛躍を遂げる。
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1年秋にリーグ戦デビューを果たすと、2年秋には6勝0敗、防御率1.33の好成績でベストナインとMVPを獲得。3年春には右膝の故障という試練も乗り越え、秋のリーグ戦では6勝0敗、防御率0.35の成績で最優秀投手、ベストナイン、MVPに輝くなど、逆境を力に変え続けてきた。
「投げるためのフォームを見直し、体への負担を減らす練習を積んだ結果が成果として表れた」と語る彼の成長の陰には、常に冷静な自己分析と着実な努力があった。その過程で、スライダー、チェンジアップ、スプリットといった多彩な変化球を武器に、投球の幅を広げていった。特にスプリットは140キロ近い球速と鋭い変化でバッターを翻弄し、「カウント球にも決め球にも使える」と自信を見せる。
さらに、今年3月には野球日本代表『侍ジャパン』のトップチームに“飛び級”で選出。プロの中でもトップレベルの選手たちと共闘する機会を得ると、欧州代表との強化試合では2回完全投球を披露し、世間にその名を知らしめた。
「良いか悪いかどちらかはっきりするかなとは思っていたのですが、緊張があった中でしっかり自分のピッチングができたので、本当に気持ちよかったです」と振り返る彼の表情からは、充実感とさらなる成長への自信が見て取れた。
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ドラ1、新人王、日本代表…”世代最強左腕”が描く未来
短期間ながら日本球界のトップレベルの選手たちと接し、間近でそのレベルを体感してから早7カ月。彼らと同じ世界に飛び込むための登竜門となるドラフト会議が目前に迫ってきた。金丸は今年の目玉として注目を集めているが、本人はいたって冷静だ。
「2年秋が終わったあたりからドラフト上位を狙ってきました。今では1位を目指せるところまできたので、あとは今まで通りやってその日を待つだけです」
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プロ入り後に目指すのは新人王、そして最終的には「日本を代表する投手になること」。目標としている投手にはDeNAで9年間プレーし、今季からMLBのカブスへ移籍した同じサウスポーの今永昇太の名前を挙げた。
「(今永投手のような)ストレートの質、わかっていても打てないような直球を投げたいのと、勝てる投手になりたい」
関西大の投手が直接プロ入りとなれば、2005年に岩田稔氏が希望枠で阪神へと入団して以来となる。
「結構(間隔が)空いているので、やっぱり特別な思いというのはあります。同じ左ピッチャーというところでとても見本になる選手だったので、(岩田氏のように)少しでも長くプロ野球の世界にいられたらいいなと思います」
21歳の青年が描く未来は、ドラフト当日の歓喜の瞬間を皮切りに大きく動き出す。”世代最強左腕”金丸夢斗がさらなる高みへ、その第一歩を踏み出す瞬間がいよいよ間近に迫っている。
実際のインタビューでは、本記事には載せきれなかった少年時代からの成長の軌跡や、“魔球・スプリット”習得秘話なども語ってくれています。ぜひ下記の動画も合わせてご覧ください。
《プロフィール》
金丸 夢斗(かねまる・ゆめと)2003年2月1日生まれ。兵庫県神戸市出身。177センチ、77キロ。左投げ左打ち。小学1年から野球を始め、広陵中では軟式でプレー。神港橘高では1年秋に先発デビューし、コロナ禍に見舞われた3年夏は兵庫県の独自大会でベスト8入り。関大では1年秋にデビューし、3年秋に最優秀投手に選ばれるなどベストナイン3回、MVP2回受賞。今年3月には侍ジャパントップチームに選出され、欧州代表戦で2回をパーフェクトに抑えた。
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