セ・リーグトップの防御率1.31
プロ野球の2024年シーズンも残りわずかとなり、タイトル争いの行方も気になるところ。現在セ・リーグの防御率トップが広島の大瀬良大地だ。
20試合に登板して白星は6つながら防御率は1.31。プロ11年目右腕は、4月4日ヤクルト戦で今季初登板してから一度も抹消されることなく先発ローテーションを守り、6月7日ロッテ戦でノーヒットノーランを達成するなど安定した投球を続けている。
被打率はセ・リーグで規定投球回数に到達している11人中、唯一の1点台(.189)。パ・リーグを含めてもソフトバンク・モイネロ(.182)と2人だけしかいない。
被安打も12球団最少の87、被本塁打はわずか1本で、1試合で打たれる本塁打数を示す「HR/9」は断トツの0.07と秀逸だ。
大瀬良のストレートは平均144.5キロと驚くほど速いわけではない。パワーピッチャーも多い現代野球で、なぜここまで打たれないのだろうか。
得意のカットボールが要因ではない?
大瀬良と言えばカットボールのイメージが強い。全投球に占める割合はストレート以上に多く、被打率も.188で巨人・山崎伊織に次いでセ・リーグ2位だ。
ただ、カットボールの被打率は6勝11敗、防御率3.61に終わった昨季も.202と優秀だった。カットボールが特に良化しているわけではない。
被打率が大幅に良化しているのは実はストレートなのだ。2023年の.283から2024年は.162にジャンプアップ。被本塁打も5本から1本に激減している。
また、投球割合はそれほど多くないもののシュートも被打率.280から.184、カーブも被打率.294から.136に良化。逆にスライダーは.232から.323に悪化している。
そこで球種別の投球割合を調べてみると、被打率が良化しているカットボール、シュート、カーブの割合が増え、被打率の悪いスライダーは半分に減らしている。
もちろん、大瀬良の意思だけでなく、捕手のリードもあるだろう。いずれにしても結果につながっている球種を多投していることが分かる。
三振は減少、四球は増加ってどういうこと!?
昨季の防御率3.61から1.31と大幅に成績を伸ばしている大瀬良だが、実は悪化している数値もある。1試合で記録する三振数を示す奪三振率(K/9)は7.15から5.51、1試合で記録する四球数を示す与四球率(BB/9)は2.29から2.89となっている。
一瞬、頭がこんがらがり理解が追いつかないが、落ち着いて考えてみた。三振を狙わず、四球を恐れず、丁寧にコーナーを狙っている結果、三振は減り、四球が増えているのではないか。
だからこそフライが減少し、ゴロが増加。結果として被本塁打率(HR/9)が1.04から0.07と大幅に良化しているとすれば、説明が成り立つ。2023年の大瀬良は15発も被弾したにもかかわらず、今季は先述の通り、わずか1発だけなのだ。
バッタバッタと三振を取らなくても変化球を有効に使い分け、四隅を狙って打者に的を絞らせない投球こそ、プロ通算87勝を挙げているベテランの真骨頂と言えるのではないだろうか。決して力任せではない、まさにプロフェッショナルな投球術でチームを優勝に導くか。
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