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阪神タイガースの2023年wRAAランキング、打撃面で貢献度No1は誰だ?

2023 10/12 06:00SPAIA編集部
阪神の佐藤輝明・大山悠輔・近本光司,ⒸSPAIA
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誰がMVPに選ばれても異論が出る?

18年ぶりの優勝を果たした阪神タイガース。飛び抜けた選手はいなくてもチーム一丸となって、2位・広島に11.5差をつけるぶっちぎりのリーグ制覇だった。

野手に関して言えば、チーム打率.247はリーグ3位、チーム本塁打84本はリーグ5位にもかかわらず、リーグトップのチーム合計555得点をマークした阪神打線。三冠王はいなくても、リーグ最多の494四球、同じくリーグ最多の79盗塁を絡めて効率良く得点し、常に優位に試合を運んだ。

選手個々の優劣をつけにくい状況のため、多くの場合は優勝チームから選出されるMVPは誰になるのか議論が噴出。誰が選ばれても異論が出そうな状況だ。

そこで打撃面の貢献度を数値で見てみたい。SPAIAでは毎週、wRAAを集計し、チーム最高の選手を「週間MVP」として球団別に紹介してきた。

wRAAとは、リーグの平均的な打者が同じ打席数の場合と比べてどれだけチームの得点を増やしたかを示す指標。平均的な打者なら0となり、貢献度が高いほど数値は大きく、低ければマイナスになる。wRAAが10なら、その打者が打席に立つことで、平均的な打者より10点増えたと評価できる。2023年の阪神野手陣のwRAAベスト5は以下の通り。

阪神タイガースwRAAランキング

wRAAトップは最高出塁率に輝いた大山悠輔

チームトップはwRAA46.6の大山悠輔。今季は全試合4番で出場し、チームトップの打率.288、19本塁打(チーム2位)、78打点(チーム2位)をマークした。

特筆すべきはチームのみならずリーグトップの99四球。「四球は安打と同じ」と球団フロントに査定ポイントのアップをお願いした岡田彰布監督の考えを具現化し、自身初タイトルとなる最高出塁率(.403)に輝いた。

実は大山はもうひとつリーグ最多を記録している。チームメイトの木浪聖也に1差をつけてトップだったのが犠飛数(8犠飛)だ。いかにチャンスできっちり仕事をしているかの証明だろう。

オーバーフェンスとなれば言うことはないが、アッパー気味のスイングで犠飛を量産しているのは長距離砲ならではとも言える。何より重圧に耐え、主砲としてシーズンを全うした事実は高く評価されるべきだ。

新人から3年連続20発の佐藤輝明

2位はwRAA34.5の佐藤輝明。優勝を決めた9月14日の巨人戦で20号2ランを放ち、左打者では史上初、右打者を含めても7人目となる新人から3年連続20本塁打を達成するなど、打率.263、24本塁打(チームトップ)、92打点(チームトップ、リーグ3位)をマークした。

長打率.498は規定打席到達者の中でリーグ6位だが、長打率は単打もカウントするため「長打率-打率」で算出し、純粋な長打力を示すIsoPは.235でリーグ5位。本塁打を記録するまでにかかる打席数を表す指標「AB/HR」も20.3で同じくリーグ5位となっている。

佐藤より上には岡本和真(巨人)、村上宗隆(ヤクルト)、坂本勇人(巨人)、牧秀悟(DeNA)しかおらず、リーグ屈指のスラッガーであることは数字が示している。

2年連続盗塁王で成功率も高い近本光司

3位はwRAA29.9の近本光司。今季は129試合に出場し、打率.285、8本塁打、54打点をマークした。wRAAには含まれないが、28盗塁で2年連続4度目の盗塁王も獲得。リードオフマンとして足とバットで相手チームをかく乱し、広い守備範囲でも貢献した。

出塁率も大山よりは低いもののリーグ3位の.379をマーク。盗塁失敗は3度しかなく成功率は90.3%と高い。リーグ2位の20盗塁を決めたチームメイト中野拓夢が12度の盗塁失敗があり、成功率62.5%に留まっていることと比較しても近本の存在は極めて大きい。

4位はwRAA4.7の中野拓夢だが、3位・近本とは大きな開きがある。ほぼ2番として固定され143試合にフル出場したものの、単打が多く、四球数も近本(67個)より少ない57個だったことなどが影響している。

とはいえ、今季は164安打で牧秀悟とともに最多安打のタイトルを獲得。打率.285、2本塁打、40打点、20盗塁をマークした。ショートからセカンドにコンバートされ、失策数も18から9に半減。優勝に大きく貢献した一人であることは間違いない。

5位はwRAA4.1の小野寺暖。出場は43試合で規定打席には達していないが、打率.347、OPS.829をマークした。育成出身の25歳はパンチ力もあり、今後の成長が楽しみだ。

ちなみに6位はwRAA3.2の森下翔太、7位は同2.2の小幡竜平、8位は同1.3の前川右京と続く。MVPについては、最優秀防御率(1.75)に輝いた村上頌樹や、最多セーブ(35個)を獲得した岩崎優も候補に挙がる。いずれにせよ、今季の阪神の優勝はチームの総力を結集した賜物と言えるだろう。

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