勝てる試合を落とすと負の連鎖に
48勝51敗1分けでリーグ5位のロッテ(8月7日試合終了時点)。ただ5位とはいえ、首位の西武までわずか6.5ゲーム差。5球団がひしめく大混戦の様相を呈している。そんな状況でポイントとなるのが、「勝てる試合を落とさないこと」。終盤までリードし、勝ちパターンの投手をつぎ込んだ試合は確実に拾っていくことが重要だ。
7月29日、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた後半戦の初戦では、3点リードした9回表に益田直也が杉本裕太郎に3点本塁打を打たれて土壇場で追いつかれると、延長12回には守備の乱れから決勝点を献上し、痛恨の敗戦。悪い流れも影響してか、同一カード3連敗を喫した。やはり、勝てる試合を落としてしまうと負の連鎖に陥る。
セーブ数リーグ1位も防御率3点台の益田
昨季はリーグトップの67試合に登板し、球団記録を更新する38セーブをマークした益田。今季もクローザーとしてリーグ1位タイの25セーブを挙げているが、防御率はクローザーとしては決してよくない3点台だ。
他の球団のクローザーの防御率を見ると、ソフトバンクのリバン・モイネロが0.80、オリックスの平野佳寿が1.03、西武の増田達至が1.06、楽天の松井裕樹が1.69と概ね1点台であり、それらを踏まえても、やはり3点台は厳しい。加えて、被打率.217、被本塁打4本もこの中ではワーストだ。
益田の投球割合を見ると、直球が全体の59.1%。次にシンカーが27.1%、スライダーが13.4%と続く。投球の多くを占める直球の走りがいい時は打者を押し込めるが、それができないケースでは変化球を見極められ、投球が苦しくなりがちだ。特に対右打者への投球割合が多いスライダー(対左:0.3%、対右:28.7%)は、被打率.304にも表れている通り打ち込まれている。
最終回のマウンドは、他の回とは違う。7回や8回に登板して安定した投球を普段見せているリリーバーが、9回に登板すると思いのほか乱れるケースがあるが、試合を締めにかかるマウンドにはそれだけプレッシャーがかかる。
現状のロッテにおいて、経験値という観点から見れば益田以上の適任者はいないわけだが、勤続疲労もあるだろう。今季で11年目だが、積み重ねた登板数は634。単純計算で毎年60試合近く投げている計算となり、勤続疲労がないわけがない。
MLB155Sの実績持つオスナとWストッパーの可能性
益田が不安定な一方で、途中加入のロベルト・オスナが安定した投球を続けている(13試合登板、防御率1.38、被打率.159、与四死球2)。8月2日の楽天戦では1失点を喫したが、これまでの登板で制球が乱れることがほとんどなく、連打を許すことも少ない。
最終回に特殊なプレッシャーがかかることは前述したが、オスナにはMLBで155セーブを挙げ、最多セーブのタイトルも獲得した実績と経験があり、最終回も任せられる。7月19日の西武戦で2連投中の益田がベンチ登録を外れていた際、9回のマウンドに2点リードの場面で登板すると無失点に抑えて来日初セーブを挙げたように、NPBでも実証済だ。
そんなオスナと益田とのダブルストッパー体制を提案したい。勤続疲労が懸念される益田の連投を回避できる上、相手との相性で使い分けることもできる。例えば、今季の益田は西武(7試合登板4失点、防御率3.86)とオリックス(4試合登板5失点、防御率9.00)に打ち込まれている一方、楽天(9試合登板1失点、防御率1.00)と日本ハム(7試合登板1失点、防御率1.29)は抑えており、得意不得意がはっきりと出ている。
西武、オリックス戦ではここまで両チームに対して無失点のオスナを、楽天、日本ハム戦では益田をクローザーとして登板させるなど、リスクを極力回避する起用も考えられる。新型コロナウイルスにより、いつ誰が離脱するかわからない状況を鑑みても、柔軟に対応できる体制を整えておくことは無駄にならないはずだ。
ただ、ダブルストッパー体制を敷くのであれば、「先発投手がある程度長い回を投げる」「セットアッパー陣がある程度充実している」といったことが条件になるだろう。前半戦で活躍した東條大樹、小野郁、タイロン・ゲレーロらに加え、8月3日の楽天戦で今季初登板した唐川侑己、トレードで加入した坂本光士郎らの出来がよければ、ダブルストッパー体制も可能だ。
過去には左右のWストッパーが躍動
かつてロッテでは、ダブルストッパーが躍動した。ボビー・バレンタインがロッテの監督に就任した1995年、右腕の成本年秀(同年、9勝3敗21セーブ)と左腕の河本育之(4勝3敗10セーブ)が左右のダブルストッパーとして君臨。それまでBクラスに低迷していたチームが、同年リーグ2位に躍進した一つの要因になった。
1985年にリーグ優勝・日本一を果たした阪神には、山本和行(5勝6敗11セーブ)と中西清起(11勝3敗19セーブ)がダブルストッパーとして君臨。1997年のヤクルトでは、野村克也監督のもと、伊藤智仁(7勝2敗19セーブ)と高津臣吾(7勝4敗7セーブ)がダブルストッパーを形成し、リーグ優勝・日本一に貢献した。
大混戦のパ・リーグで抜け出すためには、勝てる試合を確実にとるための戦い方が求められ、最終回を投げる投手の役割はよりいっそう大きなウエートを占める。オスナと益田とのダブルストッパー体制は一考ではないだろうか。
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