すでにキャリアハイの6本塁打
首位を快走するヤクルトは各ポジションで若手が躍進している。ここまでを見る限り「勝利と育成」の両立ができているようだ。投手では木澤尚文、捕手は内山壮真がともに2年目ながら一軍に定着した。
内野手では、高卒3年目の長岡秀樹が開幕から遊撃のポジションを守り抜いている。打率こそ.248と規定打席到達者の中ではワースト3位だが、打点33は丸佳浩(巨人/34打点)や佐野恵太(DeNA/35打点)ら他チームの主軸と遜色ない。下位打線にこれだけの打者がいるのは相手チームにとって脅威だろう。
そして、外野手では高卒4年目の濱田太貴が着実に進化している。ここまでは主に左投手の先発時と代打での出場となっており、現時点でレギュラーに定着しているわけではない。それでもすでに51試合に出場。リーグトップタイの代打本塁打2本を含む6本塁打はキャリアハイだ。
本塁打率18.5は山田哲人と遜色なし
濱田はここまで117打席と規定打席には到達しておらず、主力に比べると打席数は少ない。しかし、それを考慮しても優秀な数値が多く並ぶ。
まず、総合的な打撃能力を示す指標であるOPS(出塁率+長打率)は.735で、主力の青木宣親(.652)やオスナ(.660)、山崎晃大朗(.657)を凌ぐ。また、1本塁打までに要する打数を示す本塁打率は山田(18.1)と遜色ない18.5。わかりやすくいうと、山田と同じペースで本塁打を量産しているといことになる。
純粋な長打率を表すISO(長打率-打率)は.216と、村上(.373)や山田(.236)についでチーム3位(50打席以上)。リードオフマンの塩見泰隆(.206)よりも高い数値を示している。
一般的に長打力がある打者は、強く振るため三振が多くなる傾向がある。濱田も三振は決して少なくない。三振の割合を示すK%は21.4%と、およそ5打席に1回は三振していることになる。しかしチーム内で見ると、山田(24.2%)、塩見(21.9%)、村上(21.6%)らよりも低い数値だった。
ここまでの数値から濱田を(都合よく)言語化すると、「総合的な打撃能力では青木やオスナを凌ぎ、三振は多いものの村上とほぼ同じ。そして長打力は塩見よりあり、1本塁打に要する打数は山田と同等」ということになる。ロマンが溢れている。
だが、課題もある。村上らと比べて与四球が圧倒的に少ないのだ。与四球の割合を示すBB%は4.3%しかない。村上(21.8%)は別格として、山田(12.9%)と塩見(10.0%)も10%を超えている。
まだ若い濱田の場合、相手投手も避けるというよりも勝負してくるケースのほうが多いため、つい積極的にフルスイングしてしまう。現時点においてBB%は伸びにくいかもしれない。しかし、BB%に改善の余地があるのは事実。裏を返して「とてつもなく大きな伸びしろがある」と言ってもいいだろう。
左翼のレギュラー奪取へ青木宣親との争い
ヤクルトは左翼の世代交代がひとつの課題となっている。ここ数年、レギュラーを務めてきた青木もすでに40歳。もちろん戦力ではあるが、全盛期と比べれば成績は落ちている。
今シーズンも調子が上がらず、一時は登録を抹消されていた。来シーズン以降も常時スタメン出場を求めるのは、少し酷だろう。チームの将来を考えると、そろそろ若い選手へのバトンタッチも必要になってくる。
キャリアハイの成績を残さんとしている濱田も、もちろんその候補のひとりだ。現時点では青木や山崎らと併用ではあるが、濱田が結果を残せばその座を奪うことも十分に考えられる。
濱田は入団当初から長打力に期待をかけられ、”ロマン砲”と称されていた。だが、ロマンのままで終わるわけにはいかない。ロマン砲から大砲へと進化すること、使わざるを得ないくらい打つこと──それが左翼のレギュラー奪取への一番の近道だ。
ファンは山田、村上、そして濱田の3人が球団史上初となる”和製”30本トリオとなる日を待ちわびている。
※数字は2022年6月30日終了時点
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