抜群のコントロールでチームをけん引
昨年、球団20年ぶりの日本一に輝いたヤクルト。そのチームとともに大きな飛躍を遂げたのが、高卒2年目の奥川恭伸だった。
チーム方針で登板間隔は調整されながらも、1年間を通して一軍でプレー。7月1日の登板から7試合連続無四球を記録するなど、シーズン後半にかけて抜群のコントロールを武器にチームをけん引した。今回はそんな右腕のピッチングに迫りたい。
先述の通り、奥川の武器として制球力が挙げられる。ひとえに制球力といってもさまざまな要素があるが、奥川のデータを見るとストライクゾーンへコンスタントに投げ込んでいることが分かる。
本人も「ゾーン内で勝負する」意識の強さを語っており、昨季のストライクゾーン投球割合は54.0%と見事に体現されていた。
K/BBはNPBでも屈指の数値
一方でボールゾーンにも注目してみると、奥川のもうひとつの特徴が見てとれる。昨季のボールゾーンスイング率35.4%という数値は、球界を代表するエースたちに次ぐ数字だったのだ。
これは打者が振りたくなるようなコースを攻められている証明ともいえるだろう。ストライクゾーンに投げ込むスキルとボール球を振らせるスキル、このふたつを併せ持つことで投手有利のシチュエーションを創り上げた。
その結果として、昨季は91個の奪三振に対して与えた四球はわずかに10個。奪三振数を与四球数で割ったK/BBは制球力を図る指標のひとつに挙げられるが、奥川が残した9.10は近年のNPBでも屈指の数値だ。高卒2年目ながら、カウントを整える管理能力はすでに球界トップクラスといえる。
100球未満での完封勝利
こうした能力は省エネピッチングの実現にも寄与している。1イニングあたりの投球数を示すP/IPは14.5と球界一の少なさを誇っており、クライマックスシリーズでは100球未満での完封勝利、通称「マダックス」を達成をしたことも記憶に新しい。
その由来となったグレッグ・マダックスは精密機械と称された抜群のコントロールでメジャーを席巻した名投手だが、弱冠20歳の奥川はそんな大エースへの歩みを進めていくのだろうか。今季もそのピッチングから目が離せない。
※文章、表中の数字はすべて2021年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:泉 熙
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