投手にとってK/BBは最も重要
K/BBは投手の奪三振数を与四球数で割った数値。単純な数字だが、セイバーメトリクスでは投手にとって最も重要な指標の一つとされる。
奪三振は振り逃げ以外では走者を塁に出さない、投手にとっては最も安全なリザルトだ。一方で与四球は守備側がどんなに頑張ってもアウトにすることができない、最も残念なリザルトだ。
セイバーメトリクスの世界では「本塁打以外の安打は偶然の産物で、投手には制御できない」という考え方が根強い。それだけにK/BBの数値が高い選手は、安定した成績を挙げることができると考えられているのだ。
今季、セ・リーグで100イニング以上投げた先発投手のK/BB5傑が下の表だ。
2年目のヤクルト・奥川恭伸が驚異的なK/BBを記録。102イニングと規定投球回数未達だが、四球を10個しか与えなかった。後半戦から中10日前後のゆとりのある登板間隔で先発したが、6月20日から9試合連続QSという安定した投球だった。
奥川は星稜高校時代、2019年夏の甲子園でも5試合41.1回を512球で投げた。1イニング当たりの投球数は12.39、1イニング15球以下ならプロでも優秀と言われる中で、驚異的な数字を残した。この投球精度の高さがプロでも発揮されつつある。
100イニング以上では2009年、広島のコルビー・ルイスが9.79(186奪三振19与四球)を記録したのが史上1位、奥川の記録は史上6位になる。以下4点台の投手が並ぶ。
好成績の投手が多いが、3位の中日・福谷浩司は5勝10敗、防御率4.53と冴えない。被打率.276、103.1回で被本塁打10本と、四球は少なかったが走者をたくさん出した。K/BBは優秀でも成績が良くない投手も中にはいるのだ。
次に40試合以上投げた救援投手のK/BBを見ていこう。
救援投手の中でも最終回を任されるクローザーが多いことが分かる。リードを保って1イニングを投げ切らなければならないクローザーにとって、与四球は絶対に避けたいところ。そのうえで、奪三振で打者を退けることができるのが最上の結果だ。
K/BBはクローザーにとって先発投手以上に重要だと言えよう。2年連続最多セーブの阪神スアレスが1位なのはうなずける。