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メジャーも重視する安定感示す指標K/BB、ヤクルト奥川恭伸が驚異的な数字

2021 10/30 06:00広尾晃
東京ヤクルトスワローズの奥川恭伸,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

投手にとってK/BBは最も重要

K/BBは投手の奪三振数を与四球数で割った数値。単純な数字だが、セイバーメトリクスでは投手にとって最も重要な指標の一つとされる。

奪三振は振り逃げ以外では走者を塁に出さない、投手にとっては最も安全なリザルトだ。一方で与四球は守備側がどんなに頑張ってもアウトにすることができない、最も残念なリザルトだ。

セイバーメトリクスの世界では「本塁打以外の安打は偶然の産物で、投手には制御できない」という考え方が根強い。それだけにK/BBの数値が高い選手は、安定した成績を挙げることができると考えられているのだ。

今季、セ・リーグで100イニング以上投げた先発投手のK/BB5傑が下の表だ。

セ・リーグ先発K/BB5傑(100イニング以上),ⒸSPAIA


2年目のヤクルト・奥川恭伸が驚異的なK/BBを記録。102イニングと規定投球回数未達だが、四球を10個しか与えなかった。後半戦から中10日前後のゆとりのある登板間隔で先発したが、6月20日から9試合連続QSという安定した投球だった。

奥川は星稜高校時代、2019年夏の甲子園でも5試合41.1回を512球で投げた。1イニング当たりの投球数は12.39、1イニング15球以下ならプロでも優秀と言われる中で、驚異的な数字を残した。この投球精度の高さがプロでも発揮されつつある。

100イニング以上では2009年、広島のコルビー・ルイスが9.79(186奪三振19与四球)を記録したのが史上1位、奥川の記録は史上6位になる。以下4点台の投手が並ぶ。

好成績の投手が多いが、3位の中日・福谷浩司は5勝10敗、防御率4.53と冴えない。被打率.276、103.1回で被本塁打10本と、四球は少なかったが走者をたくさん出した。K/BBは優秀でも成績が良くない投手も中にはいるのだ。

次に40試合以上投げた救援投手のK/BBを見ていこう。

 セ・リーグ救援K/BB5傑(40登板以上),ⒸSPAIA


救援投手の中でも最終回を任されるクローザーが多いことが分かる。リードを保って1イニングを投げ切らなければならないクローザーにとって、与四球は絶対に避けたいところ。そのうえで、奪三振で打者を退けることができるのが最上の結果だ。

K/BBはクローザーにとって先発投手以上に重要だと言えよう。2年連続最多セーブの阪神スアレスが1位なのはうなずける。

MLBで成功した投手はK/BBが優秀

パ・リーグはどうか?

 パ・リーグ先発K/BB5傑(100イニング以上),ⒸSPAIA


今季投手5冠に輝くオリックスの山本由伸がK/BB5.15でトップ。この数字からも、今季の山本が素晴らしい投球内容だったことが分かる。3位から5位までは楽天の先発投手が並ぶ。

田中将大は援護点が少なく、4勝しかできなかったがK/BBも優秀だった。とはいえ、2011年は8.93(241奪三振27与四球)、2012年は8.89(169奪三振19与四球)と驚異的なK/BBを記録している。それに比べれば低いと言わざるを得ない。

一般的にK/BBはベテランになると数字が悪くなるが、これは制球力が落ちるからではなく奪三振数が減るからだ。田中の数字の悪化はこれによると考えられる。

40試合以上登板した救援投手についても見ていこう。

 パ・リーグ救援K/BB5傑(40登板以上),ⒸSPAIA


1位はソフトバンクの2年目、津森宥紀だ。津森はサイドスローの技巧派投手で、制球力が身上。今季はワンポイント的な起用が多かったが、さらに活躍できるのではないか。

3位は最多セーブのロッテ益田直也で、リーグ優勝したオリックスの平野佳寿が4位。強豪チームのクローザーは精度の高い投球をしたのだ。

中にはK/BBの数値が低くても好投する投手もいる。今季でいえば、K/BBが1.86(41奪三振22与四球)の中日・又吉克樹がそれにあたる。三振2個をとる間に1つ以上四球を与える計算、それでいて防御率1.28、33ホールド8セーブ。又吉は走者を出しても粘りの投球で凡打にして切り抜けることが多かったということになる。

だが、一般的にはK/BBが優秀な選手はピンチが少なく、安定した投球を長く続けられる率が高い。NPBからメジャー挑戦する投手について、MLB球団が最も重要視するのもK/BBだと言われる。

黒田博樹、前田健太、ダルビッシュ有、田中将大などMLBで成功した投手はK/BBの数値が優秀だった。そういう意味では奥川恭伸も山本由伸も、MLBに挑戦すれば好成績を残す可能性が高いと言えるだろう。

※成績は10月27日現在

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