今季セットアッパーとして復活
2020年、横浜DeNAベイスターズの守護神・山﨑康晃はどん底とも言えるシーズンを送った。生命線であるストレートも決め球のツーシームもことごとく弾き返され、防御率は自身ワーストの5.68を記録。セーブ数こそ開幕から順調に積み上げたものの、7月半ばには中継ぎへと配置転換され、10月には初めて不振が理由での登録抹消も経験した。
そんな山﨑が、今シーズンは輝きを取り戻しつつある。セットアッパーとして37試合に登板して3勝1敗、17ホールド、防御率は1.98をマーク。今年は昨年と何が違うのか、これだけの成績を残しているなら抑え復帰はできないのか、復調の要因と課題をデータから探っていきたい。
BB%が改善し、K/BBが飛躍的に向上
まず、2020年と2021年の主な成績を比較してみよう。
何と言っても、防御率が大幅に改善された。その要因としては被打率、被OPSの良化が挙げられる。被打率は.327から.254へ、それに伴い被OPSも.838から.612へと大幅に良化したのだ。
また、BB%(与四球数/打席数)も大幅に改善され、8.0%から4.3%と約半分に減った。これに伴いK/BBも2.21から4.17と飛躍的に向上し、優秀とされる3.50を上回っている。これらを見るだけでも、2020年と2021年では圧倒的に違うことがわかる。
さらに、最多セーブに輝いた2019年の成績と比べてみよう。K%(奪三振数/打席数)は2019年の方が高い数値をマークしているが、BB%、K/BBは2021年の方が圧倒的に良い。さらにWHIPは同水準にまで戻している。
あとは被打率を、自身のキャリアでも上位に位置する2019年の水準に戻せるか。これがクリアできれば、山﨑としても一つ上のステージに達することができるだろう。
ストレートとツーシームの球質が改善
この表から、2020年から2021年にかけてストレートとツーシームの数値が改善していることがわかる。特に被打率においては、どちらの球種も3割以上だったものが、2割5分程度にまで改善。空振率・見逃率を見ても、ストレートの空振率以外は改善した。
ここで2019年の数値を見ていただきたい。2021年はまだ、2019年の水準には達していないことがわかるだろう。ツーシームの空振率・見逃率はほぼ同水準となっているが、ストレートにおいては大きな差が見られる。さらに状態を上げるためには、ストレートのさらなる向上が鍵となってきそうだ。
最後に、リード時の成績を見ていこう。同じように2019年~2021年を比較すると、その差は一目瞭然だ。被打率・被出塁率・被長打率において2020年よりも2021年、2021年よりも2019年が上回っている。やはり守護神として求められるのは、2019年のパフォーマンスということだ。
ちなみに、山﨑に代わって守護神を務める三嶋一輝は、被打率こそ2019年の山﨑より劣るが、被出塁率・被長打率はいずれも優っている。長打を1本も許しておらず、3敗は全て同点の場面で登板したときのもの。いかにリード時に安定した投球を見せているかがわかる。
山﨑が守護神の座を奪い返すには、2019年の自身を超えるだけでなく、三嶋を上回ることが条件となる。しかし、三嶋も簡単にその座を譲るつもりはないだろう。横浜スタジアムの9回に「ヤスアキジャンプ」が戻ってきたとき、それは山﨑にとって「復活」ではなく「進化」を意味するのかもしれない。
※成績は全て7月8日時点
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