DeNA打線引っ張る黄金ルーキー
ルーキーながらDeNA打線を牽引する牧秀悟。現在、打率.431(リーグ1位)、3本塁打(同3位タイ)、打点13(同1位)と、ルーキーとは思えない活躍をみせている。
過去に横浜の右打者で、ルーキーながら打線を牽引した選手と言えば村田修一を思い出す。村田はルーキーイヤーの2003年に25本の本塁打を放ち、将来のハマの主砲として期待されていた。そして牧も、開幕早々の活躍ぶりから将来の主砲として期待されている。
今回は牧と村田を比較しつつ、牧の可能性について触れていこう。
本塁打の村田と総合力の牧
まず、村田は入団初年度から15年連続で2ケタ本塁打を継続していた。巨人へ移籍する前年の2011年には通算250本塁打も達成している。
村田の成績を見てもらうとわかるように、長距離打者特有の数字である。2007年と2008年に本塁打王を獲得。特に2008年は、長打率と出塁率を合わせたOPSが1.062と驚異的な数字を残した。ちなみに村田が2008年に本塁打王を獲得して以来、DeNAの日本人右打者から本塁打王は出ていない。
一方の牧も前述した通り打撃3部門全てでトップ3入り。まだ開幕したばかりではあるが、ルーキー時代の村田に負けていない活躍ぶりだ。村田と違い、牧の場合は長打力だけでなくミート力も兼ね備えている。OPSでみても、牧は1.188でこちらもセ・リーグトップに立っている。
村田は本塁打で注目されていたが、牧は打率・本塁打・打点の3部門で注目されているから驚きだ。
村田にはない牧の「武器」
では、牧がこれだけの数字を残せている要因について、打撃フォームから探っていこう。
まず注目してほしいのが、軸足(右足)である。牧の場合、軽く前足(左足)を上げてステップしに行くが、ステップした前足が地面に着地するまで重心が軸足に残っている。軸足に重心が残っているのはギリギリまでボールを引きつけられている証拠で、緩急がきても対応できる。
そして一番驚くべきポイントが、軸がまったくブレないところだ。軸足に溜めたパワーを前足股関節へ移動させていくが、前足股関節を基点に1本の長い軸に沿ってキレイに回っているため、余計なブレが生じない。またバットのヘッドがまっすぐ出てくるため、打ち損じが少ないのも特徴だ。長距離型というよりアベレージ型のフォームと言えるだろう。
一方で村田の場合は、長距離打者特有の打ち方と言える。ボールの下を打つ意識が強いこともあり、バットのヘッドが少し斜め下から出てくる。このような打ち方の選手はキレイなアーチを描くホームランが多く、俗に言う「ホームランアーチスト」と呼ばれる打ち方だ。
しかし斜め下からヘッドが出てくる分、打率が下がりやすくなるのがデメリット。村田の成績を見ても打率3割を超えた年もあれば、2割前半の年もあるなど安定しているとは言えない。村田は、打率よりもホームランにこだわってプロ野球生活を送ってきたのだろう。
両者を比較すると違いが見えてきたが、かつて横浜打線を引っ張ってきた村田と同じようなオーラと存在感を牧からも感じられる。DeNAからまだ輩出されていない三冠王を初めて獲得するのは、もしかしたらこの男かもしれない。
※成績は4月8日終了時点
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