ロッテを苦手とし、楽天を得意に
昨シーズン、通算1000安打やNPB最多タイの月間32得点といった記録を達成したソフトバンクの柳田悠岐。3度目の首位打者に加え、自身初となる最多安打のタイトルも獲得し、主要打撃成績でも軒並み上位にランクインした。ゴールデングラブ賞とベストナインも獲得し、パ・リーグMVPに輝いた。
昨シーズンの打撃成績は打率.342(427打数146安打)、29本塁打、86打点、出塁率.449、長打率.623、OPS1.071。特に本拠地・PayPayドームでは打率.380(208打数79安打)、17本塁打、50打点と無類の強さを誇った。
パ・リーグの規定打席到達選手としては唯一OPS1.0越えをマークするなど、球界最強打者の呼び声が高い柳田。そんな男が最も苦手、もしくは得意としたチームや選手をデータから探っていく。
まずはチーム別の対戦成績から見ていこう。最も得意とした球団は昨季4位の楽天で、打率.376(93打数35安打)、11本塁打、23打点の荒稼ぎ。長打率に至っては脅威の.785をマークし、OPSも1.2を超えた。打率だけを見ると.405(84打数34安打)の日本ハム戦が最も高いが、本塁打・打点では楽天戦が大きく上回っている。PayPayドームでの楽天戦12試合で7本塁打を放つなど打ちまくった。
反対に最も苦手とした球団は2位のロッテ。打率こそ.299(87打数26安打)とオリックス戦の.293(82打数24安打)をやや上回るものの、打点11、出塁率.386、長打率.494は5球団の中で最低の数字。得点圏打率.438は5球団で一番高いが、打点が最少ということから「いかにロッテがチャンスで柳田に回さなかったか」ということがわかる。
最終的に14ゲーム差になったものの、ロッテがパ・リーグで唯一ソフトバンクに勝ち越すことができた要因の一つと言えるだろう。
最も苦手としたのはロッテ・石川歩
続いて投手ごとの対戦成績を見ていこう。柳田と10打席以上対戦があったのは合計12人。そのうち最も得意とした対戦相手は、打率.600(10打数6安打)と打ち込んだ日本ハムのバーヘイゲンだ。6安打のうち2二塁打、1三塁打、1本塁打と長打を量産し、喫した三振もわずかに1つ。まさにカモにしていたと言える。
最も多くの安打を放ったのはロッテの美馬学から放った8本。しかし美馬とは対戦数自体が多いため、打率.364(22打数8安打)と高いものの、バーヘイゲンほど打ち込んだわけではない。さらに、美馬には7三振を喫しており、昨シーズンの柳田が1投手に喫した三振で最多タイでもある(もう一人はオリックス・山本由伸)。美馬自身はソフトバンクから5勝を挙げており、比較的柳田以外の打者に対しては抑えていたようだ。
一方、最も苦手としたのはロッテの石川歩で打率.154(13打数2安打)、1本塁打、2三振、2四球と抑え込まれた。ロッテでは二木康太とも打率.273(11打数3安打)、1本塁打、6三振、1四球とやや分が悪く、チーム別の対戦成績が悪かったことにもつながっている。
対戦が10打席未満の投手では、西武のニールと楽天の岸孝之にそれぞれ7打数1安打、新人王となった西武の平良海馬にも4打数無安打と抑え込まれた。右投手相手にも打率.328を誇った柳田だが、ここに挙げた投手はいずれも右投手で、平良以外はいずれもストレートの平均球速が140キロ台前半の先発投手だった。
新人王・平良海馬が柳田キラー襲名か
タイトルホルダーとの対戦を見ていくと、11勝で最多勝の楽天・涌井秀章とは打率.357(14打数5安打)、1本塁打、3三振と相性の良さを発揮。防御率が千賀滉大に次ぐ2位で最多奪三振の山本由伸とは、打率.250(16打数4安打)、1本塁打、7三振とやや分が悪い。
最多セーブの増田達至には2打数無安打、1三振、1四球、31セーブを挙げたロッテの益田直也にも5打数1安打、1三振と抑え込まれた。柳田といえども、トップクラスのクローザーを少ない打席でとらえることは難しいということだ。
前述したように西武の平良には4打数無安打、2三振、1四球と封じられた。平良は昨シーズン、ソフトバンク戦に9試合登板し防御率0.00、被安打0と圧倒していた。柳田にとっても天敵と言える存在になり得るかもしれない。
最後に日本シリーズでの巨人戦を見ていこう。4試合での通算成績は打率.429(14打数6安打)、1本塁打、3打点、3三振、1四球。柳田が対戦した11人のうち2打数以上は菅野智之、サンチェス、戸郷翔征の3人で、無安打に抑え込まれたのは菅野のみ。日本シリーズを制したのはソフトバンクだったが、リーグMVP同士の勝負は2打数無安打、1三振、1四球で菅野に軍配が上がった。
本記事では柳田が得意・苦手とした相手をピックアップしたが、ほとんどの項目で柳田の好成績が目立つ形となった。最も打てなかった対ロッテでも、3割近い打率を残していることが何よりの証だ。
それだけ、現在の柳田は手のつけられない打者ということなのだが、はたして今シーズンはどんな打撃を見せてくれるのだろう。より凄みを増して開幕を迎えるのか、それとも平良のように柳田を抑え込む投手が増えるのか。今シーズンも柳田から目が離せない。
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