「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

梨田昌孝氏に聞く③コロナ渦の高校球児へメッセージ

梨田昌孝氏ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

プロ野球の近鉄、日本ハム、楽天の3球団で監督を務めた梨田昌孝氏がSPAIAの単独インタビューに応じた。新型コロナウイルスに感染し、一時はICU(集中治療室)に入るなど生命の危機に瀕したが、5月に無事に退院。闘病生活や今年のプロ野球、高校野球についてなど大いに語った。3回連載の最終回は、高校球児へのメッセージ。

甲子園はプロにアピールする場だった

過酷な闘病生活を強いられた梨田氏は新型コロナに打ち克ったが、甲子園が中止になった高校球児もまた新型コロナの犠牲者と言える。特に最後の夏に青春を捧げるはずだった3年生にとって、これほど残酷な終わり方はないだろう。

「本当にかわいそうですね。目標がないのは一番つらいから」

その心中を思うと胸が痛む。当然ながら梨田氏も元高校球児だ。島根の浜田高時代は強肩捕手として名を馳せた。3年生となった1971年には春夏連続甲子園に出場。センバツは坂出商(香川)に、夏は蔦文也監督率いる池田(徳島)に、いずれも初戦で敗れたが、それでも高校日本代表に選出され、ハワイ遠征した。

「親父が中学の時に亡くなって、おふくろを楽にさせるためにプロに入ろうと思ってたから、甲子園は自分をプロのスカウトに対してアピールする場所だと思ってました。甲子園は憧れではあったけど、肩や打撃を評価してもらいたい気持ちの方が強かったですね」

今年は逆に評価する側も難しい判断を迫られるだろう。プロのスカウト陣も選考材料が少ないだけに頭を悩ませるに違いない。

「ドラフト1位でも1億円の価値があるのか、金額を決めるのも困るでしょうね。今年は1位でも1億円を割る球団もあるんじゃないですか。球団経営も大変な状況だから」

例年とは違う意味で、今年のドラフトは注目を集めそうだ。

「新しい目標を見つけて邁進してほしい」

とはいえ、開催中の「2020甲子園高校野球交流試合」が盛り上がりを見せているのは何より。今春センバツに出場予定だった32校が招待された、一度きりの夢舞台だ。

「よく企画したと思います。夏は代表校が決まってないけど、春は決まってたわけだから」

まずは関係各所の努力に敬意を表した梨田氏。今夏は各都道府県の高野連が独自に地方大会を開催した。優勝しても甲子園にはつながらないが、3年生にとっては集大成の場となった。

「優勝校には1試合だけでも甲子園でやらせてあげたい気もします」

大目標が自分の実力以外の理由で奪われたとあっては、落胆するのも仕方ないだろう。しかし、梨田氏はそんな球児に優しい眼差しでエールを送った。

「野球をやめる人も続ける人もいるだろうけど、新しい目標を見つけて邁進してほしい。野球を続ける人は大学で日本一になるとか、社会人で都市対抗や日本選手権を目指すとか。やめる人は好きなことでトップクラスになれるように、クヨクヨしても仕方ないんで、どこかで切り替えて進んでほしいですね」

《プロフィール》
梨田昌孝(なしだ・まさたか)1953年8月4日、島根県出身。浜田高3年時に春夏連続で甲子園出場。強肩強打の捕手として1971年ドラフト2位で近鉄に入団し、現役17年間で通算1323試合出場、打率.254、113本塁打、439打点。2000年から近鉄、2008年から日本ハム、2016年から楽天で計12年間監督を務め、通算805勝776敗31分け。

梨田昌孝氏に聞く①新型コロナとの闘病を経て感じたこと
梨田昌孝氏に聞く②元監督が見た楽天の強さの秘密