昨季の経験を糧に飛躍を
ルーキーイヤーの昨季は主にリリーフとして10試合に登板。プロ初勝利を挙げるなど1勝1敗3ホールドの成績を残すも、防御率4.32と打ち込まれるケースも散見されたロッテの中村稔弥。
貴重な左腕として、昨季の経験を糧に今季は飛躍が期待されている。オープン戦では2試合(投球回4)に登板し4安打を浴びるも、1失点、防御率2.25。得意の縦に落ちるツーシームで三振を奪うなど、まずまずの投球を見せていた。
ロッテの先発陣はある程度枚数が揃っていることもあり、中村は今季もリリーフとしての起用が想定される。だが、先発陣には若手が多く、シーズンを通してローテーションを守れるか未知数な部分も多い。先発左腕は小島和哉だけという現状を踏まえると、中村に先発登板のチャンスが巡ってくる可能性も十分にあるだろう。
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三振を奪える「亜大ツーシーム」
武器は、亜細亜大仕込みの独特な軌道のツーシーム。一般的には打者の手元でボール1個分程度変化させ、芯を外して打ち損じを狙うものだが、通称「亜大ツーシーム」と呼ばれる球は、落差が大きくシンカーの軌道に近い。
亜細亜大出身のソフトバンク・東浜巨やDeNAの山崎康晃、広島の九里亜蓮、阪神の高橋遥人も、投球を組み立てる上でツーシームが軸となっている。
中村のツーシームも落差があり、見た目はシンカーやフォークのような軌道だ。特筆すべきは奪空振率の高さ。本来打たせて取るツーシームの特性を考えれば、奪空振率は九里の7.7%が妥当な値と言えるが、亜細亜大出身投手の奪空振率は軒並み高く、中でも中村の.22.5%はダントツだ。
被打率は.263と今後改善の余地があるが、ツーシームで20%以上の奪空振率は圧巻。打たせて取るというよりも、山﨑同様に三振を奪えるツーシームだ。
直球は平均球速が138.3kmと決して速くないが、リリースポイントが見えにくくキレがある。直球の投球割合は56.6%と半分以上を占めるが、被打率は.185と優秀。現状の速さでもある程度通用しているため、今後球速がアップした時が楽しみだ。直球の威力が増すことで、得意なツーシームがよりいっそう生きるだろう。
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課題は対左打者
課題はその他の球種。スライダーの被打率は.429、カーブの被打率は.600、フォークの被打率は.400と、どの球も打ち込まれている。各球種ともに投球割合が低いため、少し打たれると被打率が高くなりやすいということもあるが、直球とツーシーム以外にも自信を持ってカウントや空振りがとれる球を持っておきたい。
特に考えなければいけないのが左打者対策。右打者には得意のツーシームを多投(投球割合33.5%)していることもあってか、被打率は.217。一方、左打者にはツーシームをほとんど投げておらず(投球割合9.5%)、スライダーを多投(投球割合16.4%)。その結果.295と打ち込まれている。
プロ入り初勝利を挙げた8月24日のソフトバンク戦は、3回1/3を投げて3失点という内容だったが、左打者の柳田悠岐と中村晃にほぼ完璧にとらえられた一発を浴びている。「スライダーの精度を向上させる」「左腕が左打者に投じる際に有効なチェンジアップをマスターする」など、対策の方向性は色々と考えられるが、まずは直球の威力を増すことが変化球を生かすという意味で優先事項になるだろう。
直球の威力が増せば、空振りが取れるツーシームとの2球でリリーフとして通用するだろうし、他の球種を磨いて投球の幅を広げれば、先発やロングリリーフとしても面白い。起用法を色々と試したくなる投手であることは確かだ。
左腕不足と言われて久しいロッテ投手陣。中村が独り立ちすれば、投手陣の厚みとバリエーションが広がる。今季は、全ての面でのレベルアップに期待したい。
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