先発3番手として復調を期待
ルーキーイヤーの2018年に肘を故障した影響もあり、昨季はシーズン途中から1軍に復帰。10試合に先発し、3勝4敗と不完全燃焼に終わったオリックスの田嶋大樹。今季は完全復調を目指したいところだが、オープン戦では3試合に登板して防御率6.08と精彩を欠いている。
現状、オリックスの先発ローテーションには、山岡泰輔、山本由伸と日本代表レベルの2枚看板がいるが、先発投手の駒の不足感は否めない。首脳陣やファンにとっては、左腕の田嶋には是非とも先発の3番手として確固たる地位を確立してもらいたいところだろう。
開幕が延期され調整期間が延びたことで、田嶋にも猶予ができた。この期間を生かして復調できるかどうかは、オリックスの今季の戦いの行方を大きく左右しかねない。
制球難、球数の多さが課題
田嶋の武器といえば、スリークォーターから繰り出すキレのあるスライダー。全体に占める同球種の割合は約28%と多い。奪空振率は6.2%と高くないが、被打率は.220と優れた数値をマークしている。
課題は制球力だ。2月24日の韓国・斗山との練習試合に先発し、3回2安打1失点6奪三振。数字だけをみれば好投といえるが、いかんせん球数が58球と多かった。被安打が少ない割に四球などで満塁のピンチを招くシーンもあり、結果として三振で切り抜けはしたが、球数が多くなっての「独り相撲」は、良くも悪くも田嶋らしいといったところだろうか。
故障明けだった昨季は最長でも6回までの登板で、基本的に5回前後でマウンドを降りるケースがほとんどだったが、常に球数が多かった印象。やはり先発ローテーションの柱としてシーズンを通して投げていくには、長いイニングを任せられる安心感がほしい。3月8日の日本ハムとのオープン戦でも、4回6安打2失点で要した球数は93。3四球を与えており、制球に課題を残した。
直球はルーキーイヤーに最速153km、故障明けの昨季も最速151km。今年もここまで直球の走り自体は良いが、スライダーは抜け球が多いなど制球に苦しんでいる。ストライクを簡単にとれる変化球を磨いていきたいところだ。
鍵になるのはチェンジアップか
そこで鍵を握りそうな球種がチェンジアップだ。同僚で同じ左腕のアルバースも直球とスライダーの割合が高い投手であるが、そこにチェンジアップやツーシームを織り交ぜながら投球を組み立てる。昨季は不振に陥ったが、好成績を挙げた来日1年目の2018年にはツーシームが機能した。
田嶋のチェンジアップの割合は約8%と少ないものの、被打率は.130。チェンジアップを要所に織り交ぜれば、緩急により投球の幅は格段に広がる。初球から簡単にストライクをとれる変化球があれば、球数減少にも寄与するだろう。
直球が走っている時は簡単に打者を追い込めるが、長いシーズンで毎回そうはいかない。主に直球とスライダーの2種では必然的に苦しくなるため、やはりスライダー以外の変化球は必要だ。
また、故障後にフォームをマイナーチェンジしたことも投球に影響しているかもしれない。ルーキーイヤーは腕を鞭のようにしならせて全力で投げていたが、故障明けとなった昨季は、肩肘への負担も考慮してか力感のないオーソドックスなフォームに少し近づいたように感じる。
多少暴れる感じで腕を振り切っていた頃は、打者が腕の振りに惑わされる分、直球とスライダー主体でガンガン押せた。だが、現在のフォームになってからはスライダーを置きにいくケースも散見される。
対左打者のゾーン別データをみると、外角低めの投球割合が約29%とゾーン別で最も高いのだが、被打率は.333と打ち込まれている。本来は左打者の泣き所になるはずの外角低めへと逃げていくスライダーが、あまり機能していないとも考えられる。
投球フォームをモデルチェンジした今こそ、スライダー以外の球種を積極的に織り交ぜるなど、投球スタイルも変えるべきタイミングなのかもしれない。そうすれば、武器であるスライダーもよりいっそう生きるはずだ。
ポテンシャルには疑いの余地がなく、チームにとってはやってもらわないと困る投手。開幕までにどれだけ復調できるか。田嶋が今季のオリックス浮沈のカギを握っていると言っても過言ではない。
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