菅野智之が6度目の大役へ
セ・リーグ2連覇を目指す巨人はオープン戦で最下位と苦しんだ。ただ、そのような状況の中でも、すでに開幕投手に指名されていた菅野智之は4試合の登板で17回を投げ自責点はわずかに3。防御率1.59としっかり結果を残していた。
現時点で開幕日は4月24日を目指すとされ、日にちが確定しているわけではないが、菅野は不動のエースとして開幕投手を務めることが決定的。自身6度目となる大役の日を待っている。
菅野はこれまでに5度開幕投手を務めているが、その成績は3勝2敗で、2018年、2019年と現在2連敗中だ。長い巨人の歴史において、開幕戦で3年連続黒星を喫した投手はひとりもいない。
日程変更による調整の難しい面はあるものの、それは他の投手も同じこと。2016年以来となる開幕戦4勝目をつかみ取りたいところだろう。
上原浩治は7年連続の開幕投手
そんな巨人の開幕投手の歴史を振り返ってみると、菅野の6度を上回る投手は1人しか存在しない。昨シーズン限りで現役を引退した上原浩治である。上原は入団2年目となる2000年から2006年まで7年連続で開幕投手を務めた。この7年連続は球団最長であるとともに、松岡弘(ヤクルト)と並んで、セ・リーグ記録でもある。
NPB記録は山田久志(阪急)の1975年から1986年までの12年連続で、開幕戦の連続登板数が2桁に達しているのは、この山田の記録がNPB唯一である。
上原に続く6度務めているのが、斎藤雅樹と堀内恒夫のふたりである。とくに斎藤は1994年から1996年まで3年連続完封勝利という偉業を達成した。これは開幕戦における複数年連続完封勝利のNPB記録でもある。4年連続を目指した1997年には、ヤクルトの小早川毅彦に3打席連続本塁打を浴び、7回途中5失点で開幕戦において初めて敗戦投手となった。
斎藤は6度登板した開幕戦で4勝1敗の成績を残したが、この4勝は別所毅彦とならんで球団最多タイ。菅野は勝利数で歴代の先輩たちに肩を並べつつある。
ちなみに、開幕投手を務めた回数を見ると、江川卓は4回、桑田真澄は3回となっており、残した実績に比べると少ない感がある。自身の故障などもあるが、同時代に好投手が多く、開幕投手が分散したことが影響したと言えそうだ。
川上哲治は開幕投手のシーズンに首位打者を獲得
1リーグ時代の開幕投手も興味深い。1936年の開幕投手は沢村栄治だった。太平洋戦争で戦死した伝説の投手であり、先発投手の最高峰に贈られる沢村栄治賞(沢村賞)の由来となった名投手である。沢村は1936年夏、秋、1937年春、秋と4季連続で開幕投手を務め2勝1敗の成績を残している。
以降は300勝投手のビクトル・スタルヒン(須田博)や史上初の完全試合達成者である藤本英雄が務めてきた。そのなかでも目を引くのが、1939年の川上哲治だろう。
「打撃の神様」と称され、現役を引退後も巨人を率いてV9を達成したあの川上だ。川上は投手として11勝と、野手としての成績に比べると見劣りするのは確かではあるが、開幕投手の大役を務めていたのである。ちなみにこの年、川上は自己最多の6勝をマークし、自身初の首位打者を獲得した。
1リーグ時代のこととはいえ、開幕投手を務めたシーズンに首位打者を獲得するような選手は今後現れることはなさそうだ。
2020年プロ野球・読売ジャイアンツ記事まとめ