大谷翔平と松井秀喜の「メジャー1年目」
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日米に大きな衝撃を残すメジャーデビューを飾ったエンゼルスの大谷翔平。右ひじ靱帯損傷の苦難を背負ったが、打者としては少ない打席で本塁打を量産し、メジャー1年目で最も多くのアーチを描いた日本人選手となった。
その活躍の中で、よく比較対象にあがったのが、これまで最高のメジャー日本人スラッガーである松井秀喜だ。シーズンを終えて、改めて大谷と松井の「1年目」を比較してみたい。
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日米に大きな衝撃を残すメジャーデビューを飾ったエンゼルスの大谷翔平。右ひじ靱帯損傷の苦難を背負ったが、打者としては少ない打席で本塁打を量産し、メジャー1年目で最も多くのアーチを描いた日本人選手となった。
その活躍の中で、よく比較対象にあがったのが、これまで最高のメジャー日本人スラッガーである松井秀喜だ。シーズンを終えて、改めて大谷と松井の「1年目」を比較してみたい。
大谷は打者として、82試合目に松井1年目の16本塁打を超えた。最終的に22本塁打。104試合・367打席での本数だ。本塁打1本を打つのに必要とした打数を表す「本塁打率」をみると、大谷14.82、松井38.94となる。本塁打を打つ能力については、1年目の松井を凌駕するものをみせた。
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打率は大谷.285、松井.287と、ほとんど変わらなかった。これに関しては、そもそも大谷は規定打席に届いていないが、打席数で大幅に上回る松井の方が価値の高い成績といえる。
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松井の打率キャリアハイはヤンキース3年目の.305。23本塁打・116打点もマークした。巨人時代同様、確実性と一発の怖さを両立できたことが、猛者揃いの大リーグで最大の強みとなった。大谷にも松井・イチロー以来、日本人3人目となる打率3割達成を期待したいところだ。
出塁率も大谷.361、松井.353と大きくは変わらない。したがって、選球眼の目安になる指標「Isod」(出塁率-打率、四死球のみの出塁率を表す)も大谷.076、松井.066と大差はなかった。ただし、日本時代からの変化をみると対照的な結果がでている。
松井は巨人通算Isodが.109。特に最後の6年間は最低.112~最高.130と、メジャー挑戦でこの指標は大きく下がった。大谷は日本ハム通算Isodが.072で、シーズン最高は.094。日本時代からあまり変化がなく、大谷の適応がスムーズだったことを表しているだろう。
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次に、1打数あたりの塁打数の期待値を示す「長打率」。打席数が違うため単純な比較はできないものの、はるかに少ない打席数で松井の本塁打数を超えた大谷は、この指標で大きく松井を上回る形になる。出塁率があまり変わらないため、「OPS」(出塁率+長打率)も同じだけ差がつく。長打率は大谷.564、松井.435。OPSは大谷.925、松井.788だった。
松井も31本塁打をマークしたヤンキース2年目(2004年)に長打率.522、OPS.912という抜群の数字を残した。このシーズンの松井以降、30本塁打超えと、OPS.900以上の日本人打者は登場していない。
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ただし、松井がヤンキースで活躍していた当時は、大リーグ全体で打高投低傾向が非常に強かった時代だ。2004年は43名もの打者が長打率.500以上を記録し、OPS.900以上も28名いた。今シーズンは長打率.500以上が26名、OPS.900以上は11名。その中で、大谷以上のスコアだったのは長打率5名、OPS7名となる。
傑出度も考慮すると、大谷が1年目で残した成績は長距離砲として非常に価値が高い。367打席という限られた出場機会の中では、24歳にして29歳の松井1年目を凌駕し、キャリアハイにも匹敵する、メジャー屈指の強打者である。
しかし、なぜ松井が1年目からフル出場を果たすことができたか。これを忘れてはならない。
松井のメジャー1年目は本塁打数こそ多くなかったものの、クリーンナップの一角を任され106打点をマークし、ポストシーズンでも2本塁打11打点の活躍。勝負強く打点を稼ぐクラッチヒッターとしての立場を1年目から確立した。守備がそこまで良いタイプの選手ではないにもかかわらず、シーズンを通してレギュラーの座を失わなかったのは、左投手を苦にしなかったことが大きいだろう。
松井1年目の対左投手打率は.287。つまり、対右投手とまったく同じアベレージだ。今シーズンの大谷は対右投手打率.313に対し、対左投手は.222。これでも次第に良くなってきた数字で、対左投手打率1割台の時期も長かった。
松井と同じだけの打席数があれば大谷は松井を超え、本塁打王も狙える。それだけのポテンシャルは確実にある。だがその仮定も、苦手を克服しないことには成り立たない。来シーズン、大谷がどう左投手を攻略していくのかに注目だ。
(本文作成:青木スラッガー)