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イチロー氏が球団殿堂入りの歴史的スピーチで伝えたかった思いとは

2022 9/4 06:00田村崇仁
イチロー氏,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「野球は永遠に私の魂。限界は設けないで」

"What's up, Seattle?"(調子はどうですか?シアトルの皆さん)

米大リーグ、マリナーズでシーズン最多安打など数々の記録と伝説を残した48歳のイチロー氏の球団殿堂入り式典が8月27日、本拠地シアトルのTモバイル・パークで行われた。英語による歴史的なスピーチは4万人超が詰めかけたファンへの感謝と親しみを込め、こんなフレーズから始まった。

公開された球団の公式動画によると、イチロー氏は紺色のスーツ姿で登場。「真のプロフェッショナル」と敬愛するケン・グリフィーJr.氏やエドガー・マルティネス氏らかつてのチームメートや弓子夫人にも見守られながら、時折ユーモアを交えて「野球は永遠に私の魂であり、私の使命は選手とファンの両方がこの特別なゲームをずっと楽しめる一助になること。現役を引退しても、野球とシアトルはずっと私の心の中にあります」などと呼びかけ、大きな拍手と喝采を浴びた。

およそ17分のスピーチで特に伝えたかったのは野球への情熱や感謝だけでなく「自分の限界を設けないで!」という次世代の選手やファンへのメッセージだったのだろう。

27歳でシアトルに来て19シーズンに及んだキャリアを振り返りながら「あなたたちの未来にも想像がつかないような可能性がある。だからこそ自分の限界を設けず、ベストを尽くしてほしい。日本から来た、こんなやせっぽちの男がこのユニホームを着て戦い、今夜皆さんの前に立って栄誉を受けることができるのだから、あなたにもできない理由はない。日々の試練を乗り越える情熱や欲求を見つける。それが自分のポテンシャルを最大限に引き出す方法です」と訴えた。

監督とのキスは「恐怖だった」と笑いも

今回の表彰はマリナーズに貢献した選手らが対象となる殿堂で、会長付特別補佐を務めるイチロー氏は10人目の栄誉となるという。 

英語のスピーチでは2001年の開幕戦に勝利した後、当時監督だったルー・ピネラ氏からクラブハウスで頰に強烈なキスをされた当時のエピソードを披露。「日本ではありえないことなので、ショックを受けた。正直なところ、彼が恐怖だった(笑)。もしこれがアメリカの習慣なら、私はここで上手くやっていけないかもと思った」と、独特の語り口でファンの笑いを誘う場面もあった。

2025年に日本人初の米野球殿堂入りも期待

現在、米球界でプレーする日本選手は珍しくなくなったが、やはり思い起こせば、大リーグ通算123勝の野茂英雄氏は日本選手の「先駆者」という意味で特別な存在であり、メジャーで「トルネード旋風」を巻き起こした「開拓者」としての功績は今も輝いている。

その切り開いた道に続き、大リーグ記録のシーズン262安打や日米通算4367安打を誇る栄光の足跡を残したのがイチロー氏だ。

米メディアによると、米球界に貢献した選手らを顕彰する米国野球殿堂で、イチロー氏は資格1年目となる2025年に「満票で選出される可能性がある」と伝えられている。

メジャーデビューした2001年に最優秀選手と最優秀新人を受賞し、オールスター戦にも10度選出された実績を疑う人はいないだろう。殿堂の投票対象となるのは引退から5年後で、2019年3月に現役を退いたイチロー氏は2025年が最初の選考。実現すれば、日本人初の殿堂入りとなる。その時のスピーチも個性と情熱があふれるものになるに違いない。

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