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東京五輪へ向け、現れた新星 服部勇馬の台頭で日本男子マラソン界は「4強」時代に②

2018 12/19 11:00鰐淵恭市
マラソン,ⒸShutterstock.com
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タイムでは計れない服部勇馬の記録

12月2日に行われた福岡国際マラソンで、日本人選手として14年ぶりの優勝を成し遂げた服部勇馬(トヨタ自動車)。タイムは2時間7分27秒の日本歴代8位とはいえ、大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)の持つ2時間5分50秒の日本記録とは1分30秒以上の開きがある。それでも服部の走りが評価されるのはなぜだろうか。

20度を超える悪条件でのスタート

「この天気がレースの最初からだったらなあ」

レース後、厚い雲で覆われた空を見上げながら、日本陸連の瀬古利彦・マラソン強化戦略プロジェクトリーダーがそうつぶやいた。

今回の福岡は稀にみる暑さだった。12月だというのにスタート時の気温は20.2度。スタートの時に20度を超えるのは53年ぶりだったため、前半は全体的にスピードが上がらなかった。

逆に終盤は曇りになった影響で、走りやすくなった。服部は35キロからの5キロを14分40秒で走っている。35キロ以降をこのタイムで走れば、世界的にも勝負できる。 だからこそ、瀬古氏が嘆くのも分かる。最初から気温が低かったら、どれだけのタイムで走れたのだろうと。

瀬古氏はこうも続けた。

「設楽(悠太)が日本記録を出した東京と同じ気象条件だったら、昨年の福岡の大迫は2時間5分後半で走れると、日本陸連の科学委員会は分析していた。そして、実際にシカゴで大迫は2時間5分台で走った。今年の福岡の方が条件は悪い。だから、服部も2時間5分台で走れる力がある」。

瀬古氏の言葉を少し補足しよう。昨年の福岡国際マラソンで、大迫は2時間7分19秒をマーク。これは当時の日本歴代5位の好記録で、この大迫の走りがその後の日本男子マラソン界を勢いづかせるきっかけとなった。ただ、この時の福岡も暑くてスタート時の気温は14.1度だったのだ。

一方、設楽が16年ぶりに日本記録を更新した今年の東京マラソンはスタート時の気温は6.5度で天気は曇り。絶好の気候だった。14位までが2時間10分を切るなど、好記録が続出した。

そこで、日本陸連の科学委員会が東京の気象条件で大迫が走っていたら、どれだけのタイムが出せたのか試算したらしい。その方法は分からないが、瀬古氏が言うように2時間5分後半で走れるという結論だった。

服部が走った今年の福岡は、大迫が走った昨年の福岡よりもさらに暑かった。だから、瀬古氏は服部も2時間5分で走れると言い切るのだ。そんなにうまくいくかどうかは分からないが、服部の実力は2時間7分台のものではないというのは納得がいく。

3強から4強へ

今年の福岡の前、指導者たちは2年後に控える東京マラソンに向けてこう言っていた。

「3人の力が抜けているなあ」

その3人とは、2月に日本新記録を出した設楽、その8か月後に日本記録を更新した大迫、真夏のアジア大会で金メダルを獲得した井上大仁(MHPS)だ。

学生時代から駅伝で活躍してきた設楽と大迫は、いわゆるスピードランナーだ。マラソン転向前の2016年リオデジャネイロ五輪には、ともに1万メートルの代表として出場している。そのスピードをマラソンに持ち込み、好結果を出しているのだ。ちなみに設楽と大迫は同い年である。

設楽と大迫の一学年下の井上は少しタイプが違う。長崎・鎮西学院高から山梨学院大に進んだ井上も駅伝で活躍してきた。タフなランナーという印象はあったが、設楽や大迫ほどのスピードはなく、スター選手ではなかった。だが、地元にあるMHPSで鍛えられ、マラソン選手として開花した。どのレースでも結果を出し、マラソンに対して「適性がある」と言われている。

自信2度目のマラソンだった2017年の東京マラソンでは2時間8分22秒で走り、世界選手権代表にも選ばれた。今年の東京では設楽の後塵を拝したが、当時の日本歴代4位となる2時間6分54秒をマーク。その後のアジア大会で金メダルを獲得した。

この3人が「3強」と呼ばれていた。今年の福岡までは。服部が優勝した夜、日本陸連の幹部が言っていた。

「これで4強になった」

誰が東京五輪の代表の座を射止めるのか。代表を決めるレース「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ」は2019年9月に行われる。

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