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今年の大学駅伝は2強から混戦に 2017年全日本大学駅伝(4)

2017 11/14 12:45きょういち
駅伝
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出典 Pavel1964 / Shutterstock.com


今年の大学駅伝は2強から混戦に 2017年全日本大学駅伝(3)

 3区に入った時点で、東洋大がトップ、2位に13秒差で駒沢大という、今年の下馬評ではイマイチと思われていた2校が優勝を争っていた。かたや、優勝候補とみられていた東海大は50秒差の5位、昨年の大学駅伝3冠の青山学院大は57秒差の6位。今年の全日本大学駅伝は予想外の展開をみせていた。

 ただ、本命が後ろにいた方が面白いのは面白い。優勝候補がいつトップに立つのか、ダークホースが逃げ切るのか、と興味が尽きないからだ。

 3区は9・5キロと、全日本全8区間の中では最も距離が短く、唯一10キロを切る区間である。よく言えばスピードが最も重視され、悪く言えばつなぎの区間である。距離が短い分、ほかの区間に比べて差が付きにくい。

 10月の出雲駅伝との2冠を狙う東海大は、「黄金世代」と呼ばれる2年生の中でも力のある館沢亨次を配置した。全日本連覇を狙う青山学院大は今年の箱根駅伝1区4位で3年の梶谷瑠哉を起用。ともに期待通りの走りだったが、特に力を見せつけたのが東海大の館沢だった。

 1万メートルの自己ベストは29分50秒台とまだまだな部分はあるが、5000メートルは13分48秒89とチームの中では5番目に速い。そのスピードをいかした走りで、2キロ過ぎに3位集団にあがり、8キロ過ぎに駒沢大を抜いて2位にあがった。

 ただ、館沢は区間賞の走りをみせてものの、トップとの差は思ったほど縮まらなかった。

 先頭の東洋大は、1年生の西山和弥が走っていた。この西山、今年の1年生でトップの結果を残しているだけではなく、大学生全体を見ても、最高の成績を残している。

 今年の日本インカレの1万メートルでは28分44秒88で1年生ながら日本選手トップの3位に入った。5000メートルの自己ベストは13分51秒58で今年の東洋大では、全ての学年を含めてもトップのタイム。スピードも持久力もあわせもつ東洋大の次世代のエースである。

 その西山が区間3位で、区間賞の館沢とは19秒の差でとどめた。2年ぶりの優勝を目指す東洋大はこの3区もトップでたすきをつないだ。2位が東海大で31秒差、3位が駒沢大で40秒差、4位が神奈川大で45秒差だった。東洋大と駒沢大という、青山学院大が台頭する前の大学駅伝界の雄が検討。そして、予選会から勝ち上がった神奈川大がしぶとく上位につけていた。

 ここ3年ほど、大学駅伝界の中心の存在となっている青山学院大は梶谷が区間4位の走りで、順位を5位に上げた。だが、先頭の東洋大との差は1分4秒、ライバル東海大との差は33秒と、差が広がってしまった。

東海大はエースが伸びず

 4区は14キロ。全体の中では3番目に長く、中盤では最長の区間である。ここは順位の変動がある得る区間であり、このあたりでそれなりの位置につけないと優勝できなくなってしまう。

 3区で先頭を狙える位置に上がってきた東海大は、満を持してエースの投入となった。長野・佐久長聖高出身の関颯人。黄金世代の2年生の中でもトップの実力を持つ選手である。5000メートルの自己ベストは13分35秒81とチームトップ。178センチの大型ランナーは1万メートルでも28分23秒37のタイムを持ち、今後の大学長距離界のスターになり得る存在である。

 東海大は1区で出遅れながらも、いいレース展開に持ち込めると思われた。この区間でトップに立つ。見ているものの多くもそう思ったに違いない。

 しかしそれは、青写真でしかなかった。スピードに全く乗らなかった。2キロ過ぎに3位の駒沢大に追いつかれた。最終的に2位でたすきをつないだものの、区間6位の走り。順位を守るのが精いっぱいだった。

 青山学院大は昨年の6区区間賞の3年生森田歩希が快走。区間3位の走りで12キロ過ぎに3位に順位を上げた。1万メートルは29分台と学生のトップレベルではないが、ロードに強いところを見せつけた。

 4区を終えて、東海大2位、青山学院大3位と役者が上がってきたように思えたが、トップとのタイム差は東海大が1分2秒、青山学院大が1分9秒と、前の中継所より差が開いた。

 ここでも東洋大が意地を見せた。エースで3年の山本修二が区間2位の走りで、優勝候補と呼ばれた2強を引き離した。4位には神奈川大、5位には駒沢大がつけていた。

(続く)