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今年の大学駅伝は2強から混戦に 2017年全日本大学駅伝(3)

2017 11/6 14:26きょういち
駅伝
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心配が現実に

 「1区(14・6キロ)で中村(祐紀)が先頭争い、悪くても20秒以内でつないでくれれば勝利が見えてくる」。

 青山学院大の原晋監督は、かつての「山の神」、神野大地によるテレビでのインタビューでそう語った。この言葉は、逆に言えば1区に不安があるのかとも思えた。

 1区の中村は、野球で有名な大阪桐蔭高出身。もともとは中距離の選手でスピードのあるランナーだが、今年の出雲ではメンバーから漏れた。

 その中村を1区に使い、うまく流れを引き寄せられれば、という思いが原監督にあったに違いない。駅伝はとにかく序盤で流れをつくらないと、後半にどれだけ力のある選手がいても、追いつけなくなる。さらに、全日本のコースは平らで、終盤での逆転劇が少ない。中村にかける期待も、不安も大きかったはずだ。

 だが、中村の走りは、不安の方が的中してしまった。7・5キロ付近で先頭争いから早々と脱落してしまった。普段はキレのある走りが持ち味の中村だが、走りが重い。そして、上体が後ろに反るようになり、うまく前に進まない。原監督の思惑は早々と崩れた。

 東海大の1区は高校時代から大舞台を経験している2年生の鬼塚翔太。10月の出雲でも4区で区間賞をマークしていて、全日本でも区間賞候補。両角速監督も、そう目論んでいただろう。ところが、鬼塚も12キロ付近で遅れ始めた。

 結果、鬼塚はトップと35秒差の8位、青山学院大は1分22秒差の10位。優勝候補の2強は、予想外の出遅れとなった。特に、青山学院大の遅れは致命的にも思われた。

意地を見せる東洋、駒沢。早稲田

 1区で飛び出したのは、今年は力が2強に比べて落ちると見られていた強豪たちだった。2年前の優勝校・東洋大、全日本最多の12度の優勝を誇る駒沢大、そして、名門・早稲田大だった。

 東洋大は昨年、出雲で9位、全日本で6位と苦しんだ。箱根こそ2位だったが、巻き返しを図るべく、今年の全日本のメンバー8人は3年生以下と、今後を見すえた布陣にした。

 その中で1区に持ってきたのが、エース格の相沢晃。1区終盤のスパート対決では、ユニバーシアードのハーフマラソン金メダリストの駒沢大・片西景を1秒差で振り切り、区間賞を獲得した。2位には駒沢大、3位が早稲田大。4位には、神奈川大のエース格山藤篤司がトップと5秒差でたすきをつないだ。

 戦力で劣ると思われていたチームが順調に滑り出し、2強と目されていた東海大、青山学院大が遅れた1区。今年の全日本は面白くなりそうな予感がした。

2区で巻き返した2強

 2区は13・2キロ。トップと1分22秒差の青山学院大は3大駅伝で過去5度の区間賞を獲得している「駅伝男」の田村和希。この田村である程度、上位との差を詰めないと2連覇はあり得ない。青山学院大はレース序盤から背水の陣に立たされた。

 かたやもう一方の優勝候補東海大も、青山学院大とまではいかずとも、窮地に追い込まれていた。エースの鬼塚が1区で35秒差の8位。2区は1年生の塩沢稀夕。力があるとはいえ3大駅伝初出場。この区間でさらにトップとの差が大きく開くようなら、優勝は厳しくなるところだ。

 そんな状況下で、2人は力を発揮した。青山学院大の田村は3大駅伝6度目となる区間賞を獲得。トップとの差を57秒に縮めた。東海大の塩沢は9キロ過ぎに田村に並ばれたが、そこから粘った。結果、塩沢はトップと50秒差の5位、田村は57秒差の6位でたすきをつないだ。

 2区を引っ張ったのは、1区同様、この10年近く大学駅伝界をリードしてきた東洋大、駒沢大だった。

 駒沢大はユニバーシアードのハーフマラソン銀メダリスト工藤有生、東洋大は5000メートル14分台とあまりスピードがない渡辺奏太。工藤の方が有利かと思われたが、10キロ付近で渡辺が飛び出し、トップでたすきリレー。駒沢大が13秒差で続いた。3位神奈川大が32秒差、4位早稲田大で35秒差。この時点での興味は、東洋大、駒沢大を、東海大、青山学院大がとらえることができるのか、ということだった。


(続く)