今年は1強から2強へ
昨年の大学駅伝は青山学院大一色のシーズンだった。全日本大学駅伝で初優勝するなど、大学駅伝3冠も達成。圧倒的な力でライバルと言える大学はいなかった。
ところが今年は違う。大学駅伝の幕開けとなった10月の出雲駅伝では、2位に終わった。優勝は2年生にその学年のトップ選手が集まり、「黄金世代」を形成する東海大だった。
今年の全日本での優勝候補は、2年ぶり2度目の優勝を狙う青山学院大と、14年ぶり2度目の優勝を目指す東海大の2校というのが、大方の見方だった。
レース2日前の記者会見、青山学院大の原監督とは正反対の、厳しさを前面に出す東海大・両角速監督との舌戦が見たかったが、昨年の東海大は7位。シード権を逃し、予選会から勝ち上がった東海大の両角監督は記者会見に登壇することなく、レース前の原、両角両監督による「対決」は実現しなかった。
スピードvs持久力
出雲は6区間45・1キロ、全日本は8区間106・8キロ。全日本は、区間距離が出雲より長く、9・5~19・7キロとなる。箱根と言えばさらに長くなり、区間平均が22キロ近くになる。大学3大駅伝と言っても、そのレースは全く異なり、練習で何に重きを置くかによって、得意なレースが決まってくる。
出雲で東海大に敗れた直後、青山学院大の原監督は「東海、青学の2強という構図が分かった」と語っていた。そして、こうも続けた。「全日本、箱根は自信があります。距離が延びる。区間が増える。青学は層が厚いので取りにいきたい」。
青山学院大は、2時間11分34秒の10代のマラソン日本最高を持つ下田祐太のように、学生に積極的にマラソンを走らせる。原監督は「長い距離に特化した体作りをしている」と話す。青山学院大は、スピードよりも持久力を重視し、箱根に適したトレーニングをしていると言っていい。
一方の東海大の武器は、出雲を制したことからも分かるように、スピードである。両角監督は長野・佐久長聖高時の監督のときから、クロスカントリーを練習にうまく取り入れ、スピードを持ったランナーを育てるのがうまい。
今、男子マラソンで期待される大迫傑や、駅伝やトラック種目で長く活躍する佐藤悠基、上野裕一郎は、両角監督の佐久長聖高時代の教え子である。
タイムで見ても、今年の東海大のエントリーメンバーでは、学生トップ級の目安である5000メートル13分台が12人、1万メートル28分台が5人いる。レベルの高いスピードランナーが育っている。「なんでもかんでも駅伝を目指して仕上げる、という指導はしない」というのが両角監督のモットーである。
全日本はもともと、スピード重視の出雲、持久力重視の箱根の中間に位置する大会である。
青山学院大の原監督も、「全日本はどっちに転がるか。興味がある」と語っていた。
スピードvs持久力。速くなるためのアプローチが全く違う二つの大学の対決。全日本の前は、そういう図式ができあがっていた。
(続く)