2年生が軸の東海大
スピードと持久力。速くなるためのアプローチの違いの対決でもある東海大と青山学院大の2強だが、世代の戦いでもある。
2年生が軸の東海大と、4年生に2人のエースがいる青山学院大。
東海大は2年生が、いわゆる「黄金世代」である。2年前の全国高校駅伝のエースが集う「花の1区」で、区間賞をとったのが長野・佐久長聖高の関颯人。4位が福岡・大牟田高の鬼塚翔太、5位が京都・洛南高の阪口竜平、6位が埼玉栄高の館沢亨次。この全員が東海大に進学した。全日本では13人のエントリー中、8人が2年生。この世代の力が突出している。
青学大、エース候補は2人
青学大は昨年の全日本初優勝経験者6人がエントリーした。昨年に比べ、全体としての力はあまり変わらないものの、原晋監督は一つの心配材料を口にしていた。「絶対的エースはいない」
昨年は、一色恭志という大きな柱がいた。全日本では最終8区を走り、49秒差を逆転して、チームを初優勝に導いた。
今年はと言えば、エース格は4年生の2人。その1人の下田裕太は10代のマラソン日本最高記録を持ち、スタミナが持ち味。今年の出雲では3区を走り、チームを3位からトップに引き上げた。
もう一人のエース格が田村和希は、駅伝になるとめっぽう強い、ロードが得意な選手である。これまで、大学3大駅伝で5度の区間賞を獲得している。今年の出雲では2区を走り、区間新の快走で5人を抜いた。
長い距離は未知数ながら、ポテンシャルを持つ2年生が軸の東海大と、実績十分の4年生を誇る青山学院大。次なる興味は、エースたちをどの区間に配置するかだった。
各校とも前半重視、神奈川大はエースをアンカーに
全日本のエントリーはレース当日の朝に3人まで変更できる。変更が完了した時点で、各校の思惑が見えてくる。
ただ、各校の思惑をあまり変わらず、総じて言うなら、前半重視になっていた。
それはこの全日本、通称伊勢路のコースの特性からである。
そもそも駅伝は、「流れ」を重視する。一度遅れると、追いかけるために、オーバーペースとなり、本来のタイムより遅くなってしまう。だから、1、2区で上位につけて流れをつくり、中盤以降も有利に走りたいと考える。1、2区といった前半が重視されるゆえんである。
さらに、全日本はコースが平らで、箱根のような山登りはない。特殊能力は必要なく、トラブルや、トラックでのタイム以上の大きな差が付くということはあまりない。終盤での逆転劇が少ないから、前半に戦力を集める傾向がある。最終8区が最も長い19・7キロとは言え、アンカーに必ずしもエースがいないのはそのためである。
特に前半重視のオーダーできたのは、過去最多の12度の優勝誇る駒沢大だった。1区に片西景、2区に工藤有生という、今年の台湾ユニバーシアードのハーフマラソンで金メダルと銀メダルを獲得した2人を並べた。駒沢大はこれまでも、序盤でトップに立ってそのまま逃げ切るというレースパターンが多かった。今回も、その成功体験に基づいた配置だった。
「5区につなぐ時点で、先頭争いをしていることが大切。そこから逃げ切りたい」と話していたのは東海大・両角速監督。その東海大は、1区に鬼塚、3区に館沢、4区に関と、前半に黄金世代を並べた。後半は3、4年生を起用。前半で流れをつくり、逃げ切る作戦に出た。
青山学院大は2区にエース格の田村、3区に今年の箱根1区4位だった梶谷瑠哉、5区にもう1人のエース格下田を起用した。こちらも、終盤区間に入る前に、しっかりと流れをつくりたい布陣だ。レースに向けてのポイントとしては、「1区で出遅れないことが肝心」と話していた。
エースをアンカーにした大学もある。ダークホースとして見られていた神奈川大だ。8区に、今年の箱根2区で区間賞を獲得し、ユニバーシアードのハーフマラソンで銅メダルを獲得した鈴木健吾を配置した。現在の大学生では、将来のマラソンでの活躍が最も期待されるのが鈴木と言われ、関係者からの評価が高い。さらに、1区にもエース格の山藤篤司を起用した神奈川大は、終盤までもつれれば面白い存在になるように思われた。
(続く)