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注目の日本選手権男子100メートル 9秒台に挑む4人<3>

2017 6/21 12:35きょういち
陸上
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出典 nopporn / Shutterstock.com

注目の日本選手権男子100メートル 9秒台に挑む4人<2>



 6月18日、慶応大学日吉キャンパスのグラウンド。桐生祥秀(東洋大)と並び、日本人初の9秒台に最も近いと言われる山縣亮太(セイコー)は雨が降りしきる中、練習を報道陣に公開していた。

 今季は山縣、桐生を含めて4人が10秒0台をマーク。日本選手権にはそのうち3人が出場し、さらに10秒10の記録持ち、昨年のリオデジャネイロ五輪男子400メートルリレーのアンカーだったケンブリッジ飛鳥もいる。

 日本男子短距離界史上、最もレベルが高い争いになっているが、山縣自身もそれは承知している。

 「今年はレベルが高い。(世界選手権の)3枠に入るのは非常に高いハードルだと思う」

 周囲は日本選手権で日本人初の9秒台を期待する。でも、山縣は至って冷静だ。

 「優勝だけを狙いたい」

 意外かもしれないが、山縣が日本選手権を制したのは1度だけ。それも2013年までさかのぼる。優勝すれれば4年ぶり2度目となる。

調子は85~90%

 もともと冷静で、その学歴(広島の名門進学校、修道高校出身である)もあり、「クレバー」な印象がある山縣だが、普段よりも言葉を選ぶ理由がある。

 3月のオーストラリアの大会で10秒0台を2回出したものの、右足首を痛めて、ふるさとの大会である4月の織田記念、所属先のセイコーの冠大会である5月のゴールデングランプリ川崎を欠場した。練習を再開したのは5月中旬で、日本選手権が復帰戦になるのだから、いつも以上に冷静になって当然である。

 本人も、自身の調子をこう語っている。

 「(状態は)85~90%」

 ケガで不在の中、関西学院大の多田修平が追い風参考ながら9秒94、公認でも10秒08を出した。そんな中で焦りもあったようだ。

 「ライバルの結果が気になっていた。なんで走れないのかと、もどかしかった」

先行逃げ切りで勝負

 決して万全でない中、どういったレースプランを描くのだろう。山縣の答えは明確だった。

 「先行逃げ切り。音が鳴った瞬間先頭を」

 自分の特長を誰よりも分かっている。

 山縣はスタートダッシュから飛び出す序盤型。強みは特にその反応時間の速さにある。リオデジャネイロ五輪男子100メートル準決勝では、出場選手中最速の0秒109で飛び出した。0秒100未満ではフライングになるから、驚異的だ。2008年北京五輪男子400メートルリレーのメダリストである朝原宣治氏の言葉を借りれば「神業」である。

 銀メダルを獲得したリオ五輪では1走を務め、チームに勢いを与えた。朝原氏も「山縣君は1走としては世界トップクラス」と称賛していた。

 そして、反応速度だけではなく、ダッシュ後の動きも他の追随を許さない。

 男子400メートルの日本記録を持つ高野進氏は「忍者のよう」と表現した。躍動感があるというのではなく、足をスタスタと置いていく感じ。とにかく、その動きはほぼ完成されていて、再現性が高いから、いつ走っても好タイムを出す安定感がある。

 ライバルからすれば先に飛び出されるのは脅威である。中盤以降の加速力では山縣に勝っていても、先に出られると動きが硬くなってしまい、自らの良さを消されてしまう。良さを消される、そのさいたる例が桐生だろう。そして、相手の良さを消す力を山県は持っている。だから、最近、桐生はなかなか山縣に勝てない。

中盤からの加速には課題も

 もちろん、山縣にも課題はあって、NHKのインタビューにはこう答えている。

 「中盤で加速していくところ、しっかりスピードに乗れれば」

 9秒台をマークするのに必要な最高速度は、桐生ほどには速くはない。うまく中盤でうまく加速できないと、昨年の日本選手権のように後半型の選手、つまりはケンブリッジ飛鳥(ナイキ)に終盤で抜かれてしまうかもしれない。その二の舞いは避けたいだろう。

ケンブリッジの巻き返しは

 昨年、日本選手権を初めて制し、一気にブレイクしたケンブリッジはなかなか公認記録で9秒台に近づけない。

 今年は追い風5・1メートルの参考記録で9秒98をマークしたが、公認記録は10秒10が最高で、いまだに10秒0台にも突入していない。今大会注目の4選手の中では、自己ベストで最も劣っている。ケンブリッジの巻き返しはあるのだろうか。

(続く)

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