「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

注目の日本選手権男子100メートル 9秒台に挑む4人<1>

2017 6/20 10:22きょういち
陸上
このエントリーをはてなブックマークに追加

出典 Normana Karia / Shutterstock.com


 日本人初の9秒台は誰になるのか。4年前に、当時高校3年生だった桐生祥秀(東洋大)が男子100メートルで日本歴代2位の10秒01を出してから、ずっと注目されている。

 いまだ10秒の壁を越える選手は現れていないが、6月23日に開幕する日本選手権でついにその壁を突破するのではないかと、期待が高まっている。

 候補は4人。

 10秒01を2度マークし、日本の男子短距離界の火付け役となった桐生、日本歴代4位の10秒03を持ち、安定感抜群の山県亮太(セイコー)、ジャマイカ人の父親を持つケンブリッジ飛鳥(ナイキ)。昨年のリオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダリストのこの3人に加え、6月10日に日本歴代7位の10秒08をマークして急成長中の多田修平(関西学院大)も9秒台争いに名乗りを上げてきた。

 単純に4人の走りの強みで分けると、スタート型の山県、多田、中盤加速型の桐生、終盤追い込み型のケンブリッジになる。

 これだけ多くのハイレベルの選手が、しのぎを削るのは日本男子短距離界ではなかったことである。101回目の日本選手権を制し、9秒台へ突入する選手は誰だろうか。

9秒台に一番近い桐生

 日本選手権の優勝候補筆頭、そして、9秒台に一番近いのは桐生で間違いないだろう。

 「集中力が切れました」

 5月26日に行われた関東学生対校選手権。男子100メートルで3度目の優勝を果たした桐生は、10秒24に終わったレースをそう振り返っていた。

 その日の準決勝は追い風1・8メートルの好条件で、余裕を持った走りで10秒15。決勝も直前までは追い風だったが、他選手のフライングでスタートはやり直しになってしまった。そのために「集中力が切れた」のである。その証拠にスタートで出遅れた上、風も向かいになり記録が伸びなかった。

 桐生の9秒台の壁になっているのが、この向かい風である。高校時代から、記録を狙ったここ一番のレースではなぜか風に恵まれないことが多い。

 特に今年は、それが顕著である。4月の出雲陸上では向かい風0.5メートルで10秒08、織田記念では向かい風0・3メートルで向かい風の中での日本最高となる10秒04を出した。ともに圧倒的な力を見せたレースで、「追い風だったら9秒台が出ていただろう」と言われている。織田記念では直前まで追い風が吹いていただけに悔やまれるところである。

ムキムキになった桐生

 一時は風のことを気にする感じもあった桐生だが、今年は少し余裕があるように感じる。

 冒頭の「集中力が切れました」という言葉にも悲壮感はなく、「仕方ないなあ」という開き直った感じが受け取れた。

 気持ち的に余裕が持てるようになったとすれば、それは自身の実力が高まっていることを実感しているからではないだろうか。

 テレビからはなかなか伝わらないかもしれないが、桐生の上半身は確実に大きくなっている。いわゆる、ムキムキな状態になっている。その変化たるや、驚くべきものがある。

 その変化を指摘すると、桐生はうれしそうに腕の力こぶを作ってくれた。

 桐生は大学に入学してからはまず、スプリンターに必要な臀部や太もも裏の筋肉を鍛えた。そして、昨年から今年にかけてはさらに上半身や体幹などを鍛えた(もっと細かいところも鍛えているようなのだが)。

 以前から「上半身にもっと重りになるような筋肉があった方がいい」と指摘する指導者がいたが、まさにその重りをつけた感じだ。おかげで、上半身が後ろにそる悪癖が改善された。

あの鉄人が指導

 そして、昨年からの筋力強化に一役も二役も買ったのが、2004年アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治である。

 昨秋から、週に1度、1回2時間をかけて、桐生は室伏の元でトレーニングを積んでいる。それが、ムキムキの体につながっている。

 もちろん、上半身だけではなく、体全体を強化している。室伏と言えば、現役時代に「骨1本1本を動かせる」と言われていたが、桐生にも骨1本1本を動かすように指導しているらしい。

 その結果、9秒台に必要な最高速度のアップと、スタートダッシュの反応速度アップという武器を手に入れたのである。

(続く)

関連記事

おすすめの記事