世界陸上ブダペスト大会8月19日開幕
陸上の世界選手権は8月19日、ブダペストで開幕する。今大会、男子110m障害で日本勢初のメダルを期待されるのが日本記録保持者の泉谷駿介だろう。
今季は日本選手権で自身の日本記録を0秒02更新する13秒04をマークして3連覇し、初出場した世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)でも初優勝。世界陸上で表彰台に立てばトラック種目で歴史的な快挙達成となり、来夏のパリ五輪に向けて大きな飛躍となる。
女子やり投げの北口榛花も7月のDLシレジア大会で今季世界最高となる67m04の日本新記録を樹立し、DL今季2勝目、通算4勝目を挙げており、世界で躍進する2人の活躍は大きな注目点。2025年の世界陸上が東京開催に決まり、盛り上がりを見せる陸上界は過去の大会でも数多くのドラマがあった。そんな歴代日本人メダリストを振り返る。
1991年東京大会:谷口浩美が史上初の金メダル
1983年に行われた第1回ヘルシンキ大会、1987年の第2回ローマ大会はメダルなし。初めてのメダルは1991年の東京大会だった。
男子マラソンの谷口浩美が最終日に2時間14分57秒で優勝し、日本に五輪を通じても初の金メダルをもたらした。首を右に傾けた独特のピッチ走法で38km過ぎにスパート。ただ1人食い下がってきたアーメド・サラ(ジプチ)を上り坂で突き放す会心のレース運びで逃げ切った。
女子マラソンは山下佐知子が2時間29分57秒で銀メダルに輝いた。
2001年エドモントン大会:ハードラー為末大が新たな歴史
男子400m障害の為末大が新たな歴史の扉を開き、47秒89の日本新記録で銅メダルを獲得。男子トラック種目で日本選手のメダルは五輪、世界選手権を通じて史上初の快挙だった。
170cmの小柄なハードラーは序盤から積極果敢に飛ばし、最後の直線でも粘り腰を発揮。鍛え抜いた走力と圧巻のハードル技術で一世一代の勝負に打ち勝った。
2003年パリ大会:末続慎吾が日本短距離初のメダルで金字塔
男子200m決勝で末続慎吾が20秒38で米国勢に次いで3位に食い込み、銅メダルを獲得した。短距離での日本選手メダルは五輪、世界選手権を通じて初の快挙。忍者のような「すり足走法」で挑み、歴史的な金字塔を打ち立てた。
2007年大阪大会:土佐礼子が粘りの銅
酷暑と有力選手の不振が目立った地元大会で、女子マラソンの土佐礼子が2時間30分55秒で殊勲の銅メダルを獲得した。日本は目標のメダル5個を大きく下回り、土佐がこの大会唯一の日本選手メダリストとなった。
2009年ベルリン大会:男子やり投げの村上幸史が快挙の一投
男子やり投げで村上幸史が銅メダルを獲得し、五輪、世界選手権を通じて同種目の吉田雅美、溝口和洋らが立てなかった表彰台に日本選手で初めて立った。
全国の強豪高校からスカウトされるほどの実力だった野球少年。185cm、90㎏の恵まれた体格で決勝の2投目は低い軌道で伸びて82m97をマークした。
女子マラソンは初出場の尾崎好美が2時間25分25秒で銀メダルを獲得した。
2011年大邱大会:鉄人・室伏広治がハンマー投げ金
メダル1個と日本が厳しい現実を突きつけられた大会で、輝きを放ったのは男子ハンマー投げで金メダルを獲得した室伏広治だった。
36歳の年齢を感じさせないパワーと飽くなき探求心で進化する技術の完成度で81m24をマーク。7度目の世界陸上出場で、金メダルを獲得した2004年アテネ五輪以来の世界の頂点に立った。
感覚を研ぎ澄ますため投網やうちわを投げる創意工夫と、赤ちゃんの動きにもヒントを得る独創的な練習が生み出す熟練の技が輝きを放った。
2017年ロンドン大会:400mリレーで初の表彰台
男子400mリレーの日本は多田修平、飯塚翔太、桐生祥秀、藤光謙司で挑み、38秒04で銅メダル。世界陸上で初の表彰台となった。5連覇を狙ったジャマイカは最終走者のウサイン・ボルトが現役最後のレースで脚を痛めて倒れ、衝撃的な結末を迎えた。
2019年ドーハ大会:競歩勢でダブル金
高温多湿で途中棄権者が続出した中、日本は競歩勢が躍進。男子50㎞の鈴木雄介と20㎞の山西利和が初の金メダルに輝いた。
鈴木は「世界一美しい」とされる歩型で度重なる故障から完全復活を印象付け、京大工学部出身で探究心旺盛な山西は高校時代に世界ユース選手権で優勝した才能を開花させた。
2022年ユージン大会:女子やり投げの北口榛花、涙の銅メダル
新型コロナウイルス感染が相次ぐ中、日本は最多タイのメダル4個を獲得。その中でも特筆に値するのは女子やり投げの北口榛花で、3位に入って五輪を含めて女子の投てき種目で日本勢初のメダルを獲得した。最終投てきで渾身の63m27。「夢を叶えられた」と号泣してチェコ人コーチと喜びを分かち合った。
競歩勢の強さも健在で、男子20㎞は山西利和が日本選手初の2連覇を達成した。
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