青森代表のアンカーとして全国女子駅伝で力走
第40回全国都道府県対抗女子駅伝(通称:全国女子駅伝)が1月16日に開催され、30日の大阪ハーフマラソンで現役を引退する福士加代子が出場した。
たけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園陸上競技場)をスタート・ゴール地点とするコース(42.195キロメートル)で、出場者は中学生から社会人までと幅広く、東京オリンピックに出場した田中希実や廣中璃梨佳も参戦。新型コロナウイルスの影響により昨年度は中止となったため、2年ぶりの開催となった。
福士は出身地の青森代表として、自身が30分52秒で区間記録をマークした9区(10キロメートル)で出場。2004年に記録更新したアンカー区間だ。
同チームの山﨑姫由から25位で襷を受け取った後、順位を3つ落とし28位でフィニッシュ。記録は34分3秒で、自身の区間記録を塗り替えることはできなかったが、福士のこれまでの活躍を讃えて沿道からは多くの声援が寄せられた。
コース最後のトラックでは観客に向けて大きく手を振り、笑顔のままゴール。襷を掛けた福士の姿を見られるのは最後となり、感動が広がった。
富士山女子駅伝(2021全日本大学女子選抜駅伝競走)で10人抜きを果たした不破聖衣来が4区、第48回全国中学選手権1500メートルでチャンピオンとなった川西みちが8区で、それぞれ区間新記録を樹立した。今回の結果を反映させた各区間の歴代記録は以下の通りだ。
今回9区で区間賞を獲得した廣中が31分27秒でゴールしたことを考えると、福士の30分52秒がいかに抜けた記録かよく分かる。
オリンピックに4大会連続出場
これまで陸上界を牽引してきた福士は、どのような活躍をしてきたのだろうか。
福士は2004年のアテネ大会から、2008年北京大会、2012年ロンドン大会、2016年リオオデジャネイロ大会まで、4大会連続でオリンピックに出場した。2006年にドーハで開催された第15回アジア競技大会の女子10000メートルで金メダル、2013年の世界陸上選手権モスクワ大会ではマラソンで銅メダルを獲得するなど、世界の舞台で活躍してきた。
ハーフマラソンや10キロメートル、15キロメートルの元アジア記録保持者、および3000メートルと5000メートルの元日本記録保持者でもある。5000メートルは、廣中が東京オリンピックの決勝で14分52秒84の新記録を樹立するまで、16年間記録を破られることはなかった。
2021年に開催延期となった東京オリンピックへの出場を目指すも、2019年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は7位。オリンピック代表最後の1枠を狙って2020年1月の大阪国際女子マラソン、3月の名古屋ウィメンズマラソンに出場したが、途中棄権した。さらに2021年5月の日本選手権女子10000メートルに出場したものの19位に終わり、5大会連続オリンピック出場は果たせなかった。
一方、同じワコールに所属する安藤友香や一山麻緒は東京オリンピックに出場。後輩の成長を間近で見守る中で、福士は自身の引退時期を探していたのだろう。
「22年間、走ることに夢中でした」
1月30日開催予定の2022大阪ハーフマラソンで福士は第一線から退く。全国女子駅伝で「ありがとう」と観客の温かい声援を受けた福士は、少しでも期待に応えられるように本番に向けて準備を進めている。
ワコールの公式ブログ(https://www.wacoal.jp/spark-angels/blog/2021/12/post-465.html)では、福士は直筆で以下のようにコメントを残している。
「ワコール陸上部員として22年間、私は走ることに夢中でした。社員の皆さんを始め、たくさんの人との出会いのおかげで毎日刺激をもらい、触れ合い、じゃれ合い、いっぱい泣いて、いっぱい笑って、いっぱい叫んで…。本当毎日いろいろありすぎておもしろい競技生活でした。これまでたくさんの応援、ご支援をしていただき本当に心から感謝しております」
引退後は引き続きワコール女子陸上競技部で活動を続けるが、現役ランナーとしての福士を見られるのは大阪ハーフマラソンが最後だ。ラストランでも福士はトレードマークの明るい笑顔を絶やさないだろう。女子陸上界を引っ張ってきた福士の走りを胸に刻みたい。
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