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ヴェロックスの好走率は100%?データが暴く秋華賞・菊花賞の激走馬は

菊花賞有力馬のヴェロックスⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

トライアルの各レースを回顧

秋競馬の幕開けを飾る秋華賞・菊花賞トライアル4競走が先週までに終了。優先出走権を勝ち取った馬たちを中心に、牡牝それぞれの三冠最終戦に臨むことになる。

前回分析したトライアルから本番への好走例が多い条件を探り、鉄板級の信頼度を誇る馬をピックアップ。本番の的中につなげたい。


《前回記事》
秋競馬開幕 菊花賞・秋華賞はトライアルレースの結果が大切

まずはトライアルレースを簡単に振り返ろう。

トライアルで優先出走権を獲得した馬ⒸSPAIA

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最初は秋華賞トライアル緒戦の紫苑S(GⅢ)から。2番人気に支持されたパッシングスルーが好位から抜け出し、うれしい重賞初制覇を飾った。2着には三浦皇成騎手との初コンビで好走したフェアリーポルカ。オークス2着馬だったカレンブーケドールは切れ味勝負に屈して3着止まりだった。

続くローズS(GⅡ)ではダノンファンタジーがチューリップ賞以来の勝利を挙げた。そのダノンファンタジーにクビ差まで迫った2着ビーチサンバ、3着ウィクトーリア(繋靱帯炎のため秋華賞回避)はいずれも春のクラシックを沸かせた実績馬。3番人気に支持されたスイープセレリタスなど、新興勢力の優先出走権獲得はならなかった。

混戦ムードの中行われたセントライト記念(GⅡ)を制したのは青葉賞馬リオンリオン。ベテラン横山典弘騎手の手綱さばきが光った。川田将雅騎手騎乗のサトノルークスが8番人気と人気薄ながら2着に食い込み、3着にはプリンシパルSを制したザダルが入った。

キングカメハメハが制した2004年以来の8頭立てという少頭数で施行された神戸新聞杯(GⅡ)では、ダービー4着からの巻き返しを狙う皐月賞馬サートゥルナーリアが圧勝した(レース後陣営が菊花賞回避を表明)。皐月賞2着・ダービー3着馬ヴェロックスが順当に2着。残る一枠の優先出走権はワールドエースの全弟ワールドプレミアが獲得した。

以上4レースの結果を踏まえ、本番での好走が望める馬を絞っていく。

ヴェロックスの好走率は100%?

まずは牡馬クラシック最終戦、菊花賞で狙える馬をチェックする。 予想記事で明らかにした通り、トライアルでの優先出走権獲得を得られなかった馬の菊花賞好走はかなり厳しい。優先出走権を獲得、かつ出走が予定されている5頭から本番で狙える馬をピックアップする。

神戸新聞杯3着以内から2頭以内出走時の最先着馬成績ⒸSPAIA

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連対率が5割と鉄板級の信頼度を誇る神戸新聞杯組で狙えるのはヴェロックス。上に挙げた表は神戸新聞杯で3着以内だった馬のうち菊花賞に出走した馬が2頭以内だったケースにおける、神戸新聞杯・最先着馬の菊花賞成績だ(データは神戸新聞杯が阪神芝2400mでの施行になった2007年以降)。

該当馬の成績は【2-2-1-0】。驚くべきことに全頭が馬券になっている。サートゥルナーリアにこそ先着を許したものの、他馬の追随を許さなかったヴェロックスの好走は間違いない。

データ上はやや好走率が劣るセントライト記念組からも、強力データが後押しする一頭がいる。それは勝ち馬リオンリオンだ。

今年はダービー馬がトライアル・菊花賞ともに出走しなかった。以前のコラムで紹介したデータ通り、過去10年で該当する5例のうち直近の4例でトライアルの勝ち馬が菊花賞を制覇した。神戸新聞杯を勝ったサートゥルナーリアが回避とあらば、このデータはリオンリオンへの追い風となる。

騎乗が予定される横山典弘騎手は1998年の菊花賞をセイウンスカイで制したほか、2003年から4年連続2着など淀の3000mを知り尽くした存在。鬼に金棒といった印象で、2015年キタサンブラック以来4年ぶりのセントライト記念組菊花賞制覇に向けて視界良好だ。

2歳女王の復権なるか

続いて秋華賞で狙える馬をチェックする。

主なローズS勝ち馬の秋華賞成績ⒸSPAIA

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トライアルで優先出走権を得た馬からは、好走率の高いローズS組から素直にダノンファンタジー。ローズSが阪神芝1800mでの施行になった2007年以降、勝ち馬の秋華賞成績は【2-3-2-4】で複勝率64%。ローズSで1番人気だった馬に限ると【2-0-1-1】で複勝率75%だ。春のクラシックこそよもやの凡走を見せたものの、今年リーディング首位を快走する絶好調の川田将雅騎手のエスコートで、秋華賞こそ本領発揮に期待だ。

優先出走権を得られなかった馬でも本番巻き返しが期待できるのが秋華賞。両トライアルで4着以下に敗れた馬からはシゲルピンクダイヤを推す。

前回のコラムでは、トライアルで凡走していても①前走と同騎手、②秋華賞で5番人気以内、③GⅠもしくはGⅡの連対経験あり、の3条件を満たす馬の巻き返しは十分にあることを指摘した。

同馬はデビュー以来全てのレースで和田竜二騎手が騎乗しており、GⅠ桜花賞・GⅡチューリップ賞で2着と連対経験にも該当。人気は当日になるまで不明瞭だが、桜花賞で見せた極上の切れ味は競馬ファンの脳裏に焼き付いている。今回の敗戦で評価を落とすことはないだろう。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。