桜花賞馬とオークス馬が揃って出走する秋華賞
1996年の秋GⅠシーズンは強烈に印象に残っている。第1回秋華賞をファビラスラフインが制覇。そこからダンスインザダーク、バブルガムフェロー、ダンスパートナー、ジェニュインらが1か月間の競馬を盛り上げ、ジャパンカップでは秋華賞馬ファビラスラフインが2着となり、秋華賞の価値を高めた。
その先のGⅠにも続く秋華賞が10月13日に京都競馬場で行われる。今年も桜花賞とオークスで結果を残した有力馬がしっかりと駒を進めてきた。
そこで今回は、上位人気が予想されるステレンボッシュ、チェルヴィニア、クイーンズウォークの3頭を比較し、どの馬が今回の舞台に向いているかを調べていく。
キズナ産駒とエピファネイア産駒が一歩リード
まずは2023年4月の京都競馬場リニュアールオープン後から今年の6月までに行われた芝358レースの種牡馬別成績をみていく。
<京都芝コース 有力馬の種牡馬成績>
エピファネイア産駒(ステレンボッシュ)
【19-21-15-163】勝率8.7%/連対率18.3%/複勝率25.2%
ハービンジャー産駒(チェルヴィニア)
【9-16-9-107】勝率6.4%/連対率17.7%/複勝率24.1%
キズナ産駒(クイーンズウォーク)
【39-21-18-185】勝率14.8%/連対率22.8%/複勝率29.7%
集計期間:2023年4月22日~2024年6月23日の358レース
勝ち星の全体トップはキズナ産駒。2400mまではどの距離でも好成績を残しており、京都芝コースでは見逃せない種牡馬だ。
エピファネイア産駒の勝ち星は全体3位。勝率8.7%で水準以上の成績を残している。ハービンジャー産駒は9勝で上記2頭には少し劣る成績となっている。また2着が16回と多く、勝ち切れない傾向にある。
京都芝2000mはキズナ産駒が強い
次に京都競馬場改修後に行われた芝2000m戦での各種牡馬成績をみていく。
<京都芝2000m(内) 有力馬の種牡馬成績>
エピファネイア産駒(ステレンボッシュ)
【1-4-3-38】勝率2.2%/連対率10.9%/複勝率17.4%
ハービンジャー産駒(チェルヴィニア)
【2-11-2-25】勝率5.0%/連対率32.5%/複勝率37.5%
キズナ産駒(クイーンズウォーク)
【10-2-1-37】勝率20.0%/連対率24.0%/複勝率26.0%
集計期間:2023年4月22日~2024年6月23日の65レース
特筆すべきはキズナ産駒の成績だ。期間内の65レースではトップの10勝をマーク。全体2位が4勝だから、群を抜いている。ちなみに牡馬【3-1-1-16】に対し、牝馬【7-1-0-21】と全ての率で牝馬の方が高いことは覚えておきたい。
意外だったのがエピファネイア産駒の低調ぶりで、46走してわずか1勝のみだった。上位人気に支持されることも多い中でこの成績。前述の芝コースの全体成績と比較すると、明らかに数字が悪く、不得意にしていると言える。桜花賞馬ステレンボッシュにとってはありがたくないデータだ。
ハービンジャー産駒は2勝のみだが2着は11回あり、連対率はこの3頭ではトップの32.5%。着別度数をもう少し詳しく、5着馬まで見てみると【2-11-2-5-3-17】で掲示板率は57.5%と大崩れしないことが分かる。
京都芝2000m成績だとキズナ産駒のクイーンズウォークが優勢。ハービンジャー産駒のチェルヴィニアも安定感があることが分かった。
京都芝2000mは川田将雅騎手の庭
次に、京都競馬場改修後に行われた芝2000m戦での騎手成績をみていこう。
<京都芝2000m(内) 有力馬の騎乗予定騎手成績>
戸崎圭太(ステレンボッシュ)
【1-0-0-0】勝率100%/連対率100%/複勝率100%
C.ルメール(チェルヴィニア)
【1-3-2-3】勝率11.1%/連対率44.4%/複勝率66.7%
川田将雅(クイーンズウォーク)
【11-7-4-3】勝率44.0%/連対率72.0%/複勝率88.0%
集計期間:2023年4月22日~2024年6月23日の65レース
まずは桜花賞馬ステレンボッシュに騎乗予定の戸崎圭太騎手。2000m戦への騎乗は1回しかなく、見事に1着となっている。ただこれだけではさすがにサンプルが少ない。そのため同期間の京都芝コースの全体成績もみていく。
成績は【2-1-4-14】勝率9.5%、連対率14.3%、複勝率33.3%。騎乗機会は少ないがリニュアール後もGⅠには3回騎乗しており、大きな心配はないだろう。
オークス馬チェルヴィニアに騎乗予定のC.ルメール騎手は、勝率11.1%、連対率44.4%、複勝率66.7%。1勝止まりではあるがさすがの安定感だ。
最後にローズSを制したクイーンズウォークに騎乗予定の川田将雅騎手。当該舞台では勝率44.0%、連対率72.0%、複勝率88.0%で驚異的な率を残している。平均人気が1.8と上位人気に騎乗することが多いが、回収率も単勝106%、複勝131%と100%超え。京都芝2000mは〝川田将雅騎手の庭〟といえる状況だ。
マイナスの少ないオークス馬チェルヴィニアに注目
最後に各馬の力関係を振り返ってみよう。
<桜花賞の成績>
1着 ステレンボッシュ(1:32.2)
8着 クイーンズウォーク(1:32.8)
13着 チェルヴィニア(1:33.4)
<オークスの成績>
1着 チェルヴィニア(2:24.0)
2着 ステレンボッシュ(2:24.1)
4着 クイーンズウォーク(2:24.4)
桜花賞では差がついたが、オークスでは上位で競い合った3頭。こう見るとクイーンズウォークはステレンボッシュに春GⅠの2戦で先着できていないのが気になる。
ただ桜花賞を使い、オークスで着順を上げていることから、ローズSを使ったことはプラスだろう。そこで近10年の秋華賞での前走オークス組とローズS組の成績を比較してみる。
前走オークス【5-1-2-16】勝率20.8%/連対率25.0%/複勝率33.3%
前走ローズS【1-4-6-48】勝率1.7%/連対率8.5%/複勝率18.6%
圧倒的に前走オークス組の方が好成績となっている。近10年では前走オークス3着以内だった馬がそのまま秋華賞も制するケースが多い。
近10年の前走ローズS組から秋華賞を制したのは、2015年2着から巻き返したミッキークイーン1頭のみ。ただ同馬はオークス馬でもあった。データ的には2、3着が多く、1着は難しいというデータになっている。
ここまで様々なデータで有力馬3頭を比較してきたが、データからはチェルヴィニアに注目する。2着が多いハービンジャー産駒ではあるが、C.ルメール騎手騎乗で前走オークス組と好データも多い。
次いでクイーンズウォーク。川田将雅騎手騎乗でキズナ産駒と好データを持っているが、春GⅠでは他2頭に先着を許した点、前走ローズS組の成績が劣ることを考慮し、2番手とする。
最後に桜花賞馬のステレンボッシュ。エピファネイア産駒は京都芝2000m成績が他2頭の父と比べて大きく劣っている。また騎乗予定の戸崎騎手も他2人の騎手に比べると少し信頼度が落ちる点から3番手とする。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
サクラローレルの馬体の美しさに魅せられて競馬の世界に惹きこまれる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。一口馬主を趣味とし、楽しさを伝える事にも注力している。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
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